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殺人同好会 〜橋口まどかの存在証明〜  作者: ゆこさん
2章
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2章-1.ニュース 2023.10.1

「レンヤ君!テレビみてみてー!ニュース!ニュース!はやくー!」

「あぁ?」


 レンヤは只今廊下の掃除中であり、リビングから聞こえてくるマドカの声に、若干不機嫌そうに返事をする。『居候してるでしょ?雑用やって当然じゃん!!』という至極真っ当な理由から、渋々家の掃除を行っている。マドカが『はやく!はやく!』と呼ぶので、レンヤは掃除を中断しリビングへとやってきた。


「ほらーっ!レンヤ君が起こした事件だよっ!!焼死体が山奥から発見だってー!!」


 レンヤはマドカが指さすテレビの画面を見て驚いた。テレビ画面には、被害者としてレンヤが殺害した人々の情報が次々に現れる。その中には、もちろんサクマの名前もあった。シラウメが訪問して来た日から、約1か月経っている。レンヤはすっかり隠蔽工作の事を忘れていた。


「シラウメ凄いね~。完璧じゃん!あ!通り魔さんの顔写真がでてきたよ!容疑者だって!あははっ!もうこの世にいないのにね~!笑っちゃうよ!」


 被害者の後には、容疑者としてレンヤが殺害した通り魔の写真が表示された。マドカは、それが笑いの壺だったらしく、ケタケタと笑い転げている。


笑い事……?笑い事か……。


 レンヤは苦笑した。二人がそのままテレビを見ていると、画面は切り替わり次の事件を報道し始めた。そこに映ったのは、メラメラと燃える建物。消化活動を懸命にやる人々の姿もあれば、その風景をただポカンと見つめる野次馬の姿もあった。


「最近多いね~。火事。」


 マドカは、他人事の様に言う。実際他人事ではあるのだが。


「マドカさん、この火災現場、この近くじゃない?」

「ん?あ、確かに……。」


 テレビに映し出された現場は、マドカの家から徒歩5分程の距離に位置する。とは言っても他人事に変わりはない。二人はぼーっとテレビ画面を見続ける。暫くするとテレビ画面は再び切り替わり、今度は地図が表示された。


『最近放火が多発しています。地図を見てもわかるように、今回で5件目です。』


 ニュースキャスターがそう解説した。表示された地図には炎のマークが5つ。そこが放火された場所なのだろう。なにやら、その5か所は、割と密集している。


「あり?よく見たら、この5ヶ所全部、ここから徒歩5分以内に行けちゃうよ!」


 レンヤはマドカの発言に驚いた。なんと5ヶ所とも全てが、マドカたちの住む場所からとても近かったのだ。


「ねぇ、レン兄とマドカ姉ちゃん。それ、この人の可能性ない?」


 サクマはそう言って二人の元へやってきた。手には数枚の紙が握られている。マドカはその紙を受けとる。その紙は以前シラウメが持ってきた資料だった。


「あ!そうだ。マドカ姉ちゃん!お風呂掃除終わったよ!」

「ご苦労様~。ありがと。」


 サクマもレンヤ同様雑用を行っていた。風呂掃除が終わった報告ついでに、リビングへやって来たようだ。


「で、この人っていうのは……。脱獄犯の一人だね!サクマっちは、なんで、こいつが犯人だと思ったの?」

「だってさ、犯行の仕方がそっくりだよ!」


 サクマはマドカに脱獄犯のひとりの前科の詳細資料を追加で渡した。マドカは渡された資料に目を通す。最初は何となく読んでいったマドカだったが、見ていく程にマドカの顔が険しくなり、そして1枚目を読み終わる頃には真剣な眼差しになっていった。


「どうしたんすか?マドカさん。」


 レンヤが心配して問い掛けるが、マドカは反応しない。そして、全ての資料に目を通し終わると、マドカは、ようやく静かに口を開いた。


「やばいよ……。これ……。このままいったら……。」


 マドカの言葉にただならぬ気配を感じて、二人はゴクリと唾を飲み込んだ。


「ど、どういう事なんすか?」


 レンヤは恐る恐るマドカに問う。何か資料から重要な事が分かったに違いない。マドカの回答を静かに待つ。しかし、マドカはふーっと息を大きく吐いてレンヤをキリッと見つめた。そして、びしっとレンヤを指さしたかと思えば、


「しょうがない!無能なレンヤ君にも分かるように解説してあげよう!」


 元気にそう宣言し、ニヤリと笑った。


無能……。否定できないのが、せつねぇ……。


 レンヤはそんな気持ちをぐっと堪えて、飲み込んだ。ここで文句でも言ってへそを曲げられても困る。多少のディスくらいは大目に見るのがセオリーだろうと、そう自分に言い聞かせ黙ることを選んだ。


「この脱獄犯の前科は多数の放火。しかも遊ぶ様に放火するんだよ。前回の放火場所見れば一目瞭然!」


 マドカは資料に載っていた地図の部分を指さしレンヤに見せた。レンヤはマドカが指示している地図を見て、やっとマドカが言いたいことを理解し納得した。


「なるほど……。」


 地図には7ヶ所に番号がふってある。番号順に放火があったのだろう。1番から6番までは、円を描くような配置である。そして、7番の場所は、その円の中心という構成である。


「ちなみに、7番目の火災は、他の6件とはケタ違いのスケールだったみたいだね。」


 マドカは苦笑しながら付け足した。


「今回の放火が、この脱獄犯と同一人物だと推測する理由は、この位置関係の他に、犯行の素早さだねー。だって、今回なんて、最初の放火からまだ2日だよ?それで5件も。しかも、証拠・手掛かりを残さないときた。これは素人の放火じゃないよ!!」


 マドカは自信満々で力説する。頭の弱いレンヤでも流石に理解ができた。


「だから、犯人はこの脱獄犯で間違いないと思う。で、この脱獄犯が犯人だとすれば、どーゆー事かわかるかな?レンヤ君。」


 マドカはレンヤが理解しているか確認するように問う。


「え?つまり、犯人がこの脱獄犯だとしたら、あと1回の放火で円を作って、最後に中心を盛大に放火すると……?実際現在の5ヶ所で円ができそうだし。」

「正解。よく出来ました~!ところで、レンヤ君、その中心ってどこだかわかる?」


 中心……?レンヤは先程のニュースで表示された地図を思い浮かべる。そして気が付いた。


「あ……。まさか……。」

「そうだよ。そのまさかのまさか。7番目に狙われるであろう円の中心は……。信じたくないけど、ジャスト私の家。まず間違いないね。」


 マドカは不愉快そうな顔をしている。先程まで他人事だった火災は、すっかり他人事ではなくなってしまった。


「で、レンヤ君。私が言いたい事わかるー?」


 マドカは、資料をテーブルに置くと、ニヤリと笑いながらレンヤに問い掛けた。


「やられる前に殺れと?」

「そーゆー事。放火される前に、放火魔をぶっ殺しちゃおう!あははははっ!私の家なんか狙うから悪いんだよ!!死んで詫びろぉ!」


 マドカは上機嫌だ。


「ついでに20万は私の物だね!!」


そーいえば、そんな話もあったっけ……。

脱獄犯を殺したら20万。前向きな理由はこれか……。


 レンヤは状況をよく理解した。


「サクマっち~!偉いぞ~!よく気付いたね~!」


 マドカはサクマの頭をなでる。サクマはちょっと恥ずかしいらしく、顔を赤くしながら嫌がる。けれど、どこか嬉しそうだ。


「ふふふ~。サクマっちかわいいな~。へへへへ!」


 気付けば、マドカはニコニコしながら、嫌がるサクマをぎゅーっと抱きしめていた。サクマはどうしていいかわからず、助けを求めるようにレンヤを見る。


悪い。サクマっち。それは俺にもどーすることもできねぇ。許せ。


 レンヤはサクマの視線を意図的に外し、そっぽを向いた。


「ま、マドカ姉ちゃん!苦しいよっ!」


 サクマは必死で抵抗し、そしてなんとかマドカの腕からスルリと逃れる事が出来たようだ。


「あれま?逃げられちゃった~。」


 マドカはそれでもご機嫌なようだ。ニコニコ笑っている。


「レン兄酷いよ!!」


 マドカから逃れたサクマは、そう言って、レンヤを軽くポカスカ叩いた。


「悪かった。ごめんごめん。」


 レンヤは苦笑しながらサクマの頭を軽くなでてあげた。かわいい弟が出来たような気分である。


「さてと、そうとわかれば、野次馬ろう!!外出するよー!二人とも!」

「野次馬るって……。火災現場見に行くわけ?」

「そうだよ!とりあえず現場を見てみなきゃ!わかんない事は、たくさんあるんだからさ!」


 そう言って、マドカは上着を羽織った。外出する気満々だ。二人も軽く上着を羽織ると、3人は秋が近付き少し肌寒くなった外の街へとくり出した。

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