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殺人同好会 〜橋口まどかの存在証明〜  作者: ゆこさん
1章
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1章-7.業務委託 2023.9.2

「それをレンヤ君に頼む理由は?」


俺!?俺が引き受けるの?それ。

 

 マドカから発せられたシラウメへの質疑内容に、レンヤは困惑する。明らかにシラウメはマドカに話しかけている。てっきりマドカへの依頼だと思い自分は全く関係ないと油断していた。マドカは当たり前のようにレンヤにやらせようとしているようだ。だが、少し考えれば分かる。マドカが自ら殺人を行うはずがない。それに、レンヤはマドカの下僕になったのだ。当然と言えば当然かとレンヤは妙に納得してしまった。


「実はこの死刑囚、ただの殺人犯じゃないんです。とっても強くて、私の一般の部下じゃ、手に負えなくて……。だから、とても8人を一度に対応しきれないんです。」


 シラウメはファイルの中から8枚の顔写真を取り出して、レンヤに見せる。おそらく、それが脱獄犯なのだろう。見るからに悪そうな顔をしている。


「あり?シラウメの部下に凄腕が数人いなかったっけ?」

「ふふっ。マドカの言う通りいるにはいるんですが、やはり猫の手もかりたいというか……。」

「なるほど。シラウメは忙しいもんね。どうせ他の仕事を同時進行とかしてるんでしょ?」

「そういう事です。」


どーゆー事ですか?


 レンヤは頭上にクエスチョンマークを大量に浮遊させていた。話に全くついていけてない。


「レンヤ君、要するにシラウメは忙しいから、これからの人生において後がないレンヤ君を、有効利用しようとしているんだよ!分かるかい?」

「はぁ、なるほど……。」


 レンヤは理解することを諦めた。細かい理由や経緯を聞いて理解したところであまり意味はないだろう。自分には選択権も拒否権もないのだ。理解しようとするだけエネルギーの無駄遣いだろう。


「もちろん報酬は出ます。一人あたり20万です。」

「20万……。レンヤ君、20万欲しいな!」


 20万と聞いた瞬間、マドカの目がキラキラと輝く。そんなマドカの様子を見てレンヤは深くため息をついた。これはもう未来が決まったようなものだ。自分はマドカに言われた通りに行動するしかないのだろうなと諦めたようにレンヤは笑った。


「代わりといってはなんですが、今までの犯罪歴とこれからの犯罪において、私達警察が隠蔽工作を行いましょう。」

「お!さっすがシラウメ!太っ腹!!」


 マドカは嬉しそうにシラウメの肩をぽんぽんと叩いている。


「依頼は強制ではありません。見つけたら殺してくれる程度でかまいませんので。それに、隠蔽工作は私の趣味なんで、気兼ねしないでくださいね。」


どんな趣味だ!?

いや、人の趣味に文句を言ってはいけない。


 レンヤは無理矢理思考を停止しシラウメの発言を流した。それにしても何故、シラウメという人物は、自分に依頼をするのだろうか。レンヤは不思議で仕方ない。


「あの、シラウメさん、何で俺に依頼を……?」


 レンヤは意を決して、そのまま疑問をシラウメにぶつける。何か意図があるのか。というより意図がなく依頼してくるわけがないだろう。流石に気持ち悪さを感じる。


「ふふっ。それは、レンヤ君の技術を見込んでですよ。それに、私は、あなたの技術の華麗さに惚れたんです。」


 シラウメはさわやかに笑って言った。


この子は本当に警察なのだろうか……?

だいぶ、思考回路が逸脱している気がしてならない。


「何故、私が8人の脱獄犯を捕らえようとするのか……。理由は簡単です。彼等が嫌いだからです。」

「好き嫌いで決まるんすか……。」

「ええ。世の中は、力のある者のわがままに従って動くものですよ?力の無い者は、ただ哀れにそのわがままに、振り回されるだけです。」


力の無い者って……、ジャスト俺か?


 レンヤはとてもよく理解した。現状マドカのわがままに振り回され続けている自分は、まさにシラウメが言う力のない哀れな者に当てはまると感じた。


「8人を嫌いな理由は、殺し方にセンスがないからです。いたぶったり、ぐちゃぐちゃにしたりと、知性の欠片もありません。だから嫌いなんです。」

「さいですか……。」


 やはり人の趣味に突っ込むべきではないと、レンヤは再確信した。


***


「では、そろそろ隠蔽工作しましょうか。」


 シラウメはそう言って、かばんの中から、見慣れない道具を取り出す。


「まぁ、証拠が何ひとつないので、無能集団がレンヤ君の元までたどりつくとは思えませんが。一応やっておきましょう。それにサクマ君は死んだ事にしたほうが良さそうですね。」

「え?」


 サクマは突然自分の名前が出てきたのと、死んだ事にするというシラウメの発言にびっくりした。


「サクマ君、どうします?死んだ事にしたほうが良いと思いますけど……。」


 サクマはどうしていいかわからず、レンヤを見た。すると、レンヤはサクマから意図的に視線を逸らし、そっぽを向いてしまった。サクマ今度はマドカに助けを求めるように視線を送る。マドカはサクマの視線に気が付くと、ニコッと笑った。マドカの笑顔は一体どちらの選択を推奨しているの全くかわからない。笑顔からはなにもアドバイスがもらえなかった。サクマは仕方なくシラウメをチラリと見る。


「隠蔽工作は完璧です!絶対にばれません!」


 論点はそこではないのだが……。とサクマは俯き諦めたように深くため息をついた。結局頼れる者は自分のみだ。そもそも、自分の人生なのだから、自分で決めるのが普通だろう。サクマはそう決心し、まっすぐにシラウメを見た。


「僕を死んだことにしてください。」

「わかりました。」


 シラウメはニコッとさわやかに笑った。


「それでは、歯型を取らせてください。」


 そういってシラウメは取り出した道具をサクマの口の中に突っ込む。


「サクマ君、噛んで下さい。」


 サクマは言われた通り噛むと、固めのガムを噛んだような感触がした。


「はい!もぅ大丈夫です。口を開けてください。」


 シラウメは道具をサクマの口から取り出した。


「適当に頭蓋骨拾って来て、歯型をこれと同じように削るんです。こうすれば無能集団ぐらい簡単に騙せます。後はシナリオですね。レンヤ君が3人目に殺した通り魔に全責任を押し付けましょうか。」


 そういって考えるシラウメは何だか楽しそうだ。趣味と言うだけはある。非常に悪趣味な気もするが。


「初めに殺した親子も、サクマ君も、サクマ君の両親も通り魔の犠牲者。通り魔の毛髪でも、殺害現場に落として置けば十分ですね。死体は通り魔が回収し、山で焼き払った。焼き払った現場に頭蓋骨を置けばいいですね。サクマ君の偽頭蓋骨も置けば文句ないでしょう。そして通り魔は、逃げたという事にし、後ほど死体で発見で構わないですね。白骨化した頃が無難でしょうか。まぁ、こちらから無能集団に圧力をかけますし、まず問題はないですね。」


 どうやらシナリオが出来たらしい。シラウメ以外誰も理解していなかったが。


「その辺はシラウメに任せるよ!」


 マドカはシラウメをとても信頼しているようで、笑顔で言った。


***


「あの、マドカ、隠蔽工作に使いたいので、頭蓋骨をもらっていってもいいですか?」

「んー。今生首状態になってるけど、それで平気だよね?」

「えぇ。大丈夫です。」


 マドカはリビングを出て半地下の部屋へと向かう。その部屋とは、暗い路地裏へでる裏口が存在し、コンクリート打ちっぱなしの、灰色の部屋である。マドカは、そこから5つの容器を次々とリビングへと運んで来た。


「ホルマリン漬けにされてるけど平気だよね?」


 マドカは生首の入った容器をテーブルに並べていく。もちろんレンヤは、サクマを連れて避難済みである。遠くからマドカとシラウメの様子を見守る。


「わぁ!凄いです!この表情なんか特に……。」


 そういってシラウメは、サクマ父の生首の入った容器を持ち上げ、生首と見つめ合った。


「レン兄。あのシラウメって人……。何やってるの?」

「馬鹿!見ちゃダメだ!」


 レンヤは慌ててサクマの目を覆った。


どいつもこいつも、ずいぶんと頭がいかれているようだ……。


 レンヤは苦笑した。シラウメは興味深そうに、生首をなめ回すように見ている。物凄く楽しそうだ。


警察だよな……。シラウメさん……。


 こんな異常行動をする人間が警察なんて、今までの常識では考えられない。殺人に対して怒るわけでもない。また、死体を見ても心を痛めるどころか現状のように興奮さえしている。レンヤは再び常識をひっくり返されてしまったようだ。


「それでは用件は済んだので帰りますね。」


 シラウメは生首を2つ持ち、マドカは3つ持って玄関へ向かっていく。レンヤは二人がリビングを出て行ったのを見て、物陰から出て来た。そして、ソファーに座る。サクマもレンヤの隣に座った。ふと机を見ると、上には8枚の顔写真の他に、資料も広がっている。レンヤは何気なくその資料を手に取り、パラパラと目を通していく。どうやらその資料は、8人の脱獄犯のプロフィールと、投獄前に起こした事件の詳細だった。


 ほどなくして、ガチャリとリビングのドアが開いて、マドカがリビングへ戻って来た。


「マドカさん。シラウメさんは生首をあのまま持って帰ったんすか?」


 レンヤは、マドカに疑問を投げかける。シラウメはどうやって生首を持って帰ったのだろうか。まさか、あのまま持って帰るとは思えない。


「お迎えの車が来てたから、それに乗って帰ったよ!シラウメは、良いところのお嬢様だからねっ!」


 マドカはレンヤの向かいのソファーに座った。


「へぇ~。お嬢様ねぇ。」


 良いところのお嬢様が何故、あの様にぶっ飛んだ思考の持ち主なのか、不思議で仕方ない。


「ちなみに、シラウメの父親は警察のトップだよ!」

「シラウメさんって一体何者……?」

「やっぱ、びっくりした?」


 レンヤは大きく頷く。


「シラウメは警察の中でも裏社会を専門とする部署トップだよ。あくまで1つの部署って扱いではあるんだけど、殆ど別の組織って言ってたかな。一般的には、裏警察って呼ばれてるんだって!んで、その裏警察っていうのは、確かなセンスと技術があれば誰でもなれる反面、無能な人はどんどん切り捨てられるような世界でね、シラウメは、確かな実力で大人を差し置いてトップになってるの!凄いんだよ~!」


 マドカは自慢するように言う。自慢の友達なのだろう。


「にしても、レンヤ君は、シラウメに気に入ってもらえてよかったね~!シラウメを敵にまわしたら、地球上じゃ生きていけないもん。」

「そ、そんなに……?」


地球上とは少し大袈裟じゃないだろうか……。


「シラウメは天才だよ? 証拠をでっちあげる才能もあるし。レンヤ君がどんなに華麗に殺人しても、捕まっちゃうよ~!」


 マドカはそう言って、あははっ!と笑った。


笑えねぇよ。

証拠をでっちあげちゃダメだろ。


 レンヤは内心突っ込む。


「シラウメは、センス良いからね~。レンヤ君の犯行全部ばれてたでしょ?」

「あぁ、確かに……。」

「もし気に入ってもらえてなかったら、今頃確実に豚箱行きだったと思うよ。」


 そう思うとぞっとする。自分の運命は、たったひとりの少女の気分次第なのだから……。そんな社会に自分は生きていたのか……。と、レンヤは今更のように気がついた。


「レンヤ君、今までの常識なんて、捨てちゃったほうがいいよ?」

「な、何で?」

「だってさ、今までは一般市民だったんでしょ?でも今は殺人鬼。視点がほぼ180度変わったんだから、見えてくる世界だって180度変わるのは当然。今までの常識なんて、捨てちゃいなさい!いちいち驚いてたら疲れちゃうよ?」


 マドカはニコッと微笑む。まるで、『裏側の世界へようこそ!』とでも言っているかのようだ。


「努力はしてみるよ。」


 レンヤはとりあえず、適当に返事をした。常識を捨てる……か……と、ほんの数日前までは、考えられない世界に自分は今いるんだなぁ……と、しみじみ思ってしまう。同時に、もう平穏な日常には戻れないことを悟った。しかし、自分はまるで後悔等していない。むしろ、この世界に興味が湧いている。それもまた、不思議な事この上なかった。

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