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殺人同好会 〜橋口まどかの存在証明〜  作者: ゆこさん
1章
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1章-5.回収作業 2023.8.27

 レンヤはリアカーに母親の死体を積み込む。そして、流れ作業のようにマドカは背中の傷口に例の布を貼り付けた。


「マドカさん。父親の方はどうする?」

「……。そぅだねぇ……。生首は別に、腕と足は間接ごと切れてるからいいとしても、体部分は4つにスライスされてるからなぁ。全く、切りすぎだよ……。ま、とりあえず、体部分以外からかたそうか。」

「へーい。」


 レンヤはまず生首をリアカーに乗せた。マドカは断面に布を貼り付けると、生首を持ち上げ生首と目を合わせた。


「うわぁ~!綺麗な生首!」


 マドカは、感激したように言う。うっとりとした表情で見つめている。


「生首に、綺麗とかあんのかよ……。」


 そんな訳があるか。と、レンヤは苦笑しながら、突っ込む。しかし、


「あるに決まってんじゃん!」


 マドカは本気だった。


「ち、ちなみに、どんなのが綺麗なわけ?」

「んーとね、切り口が水平なのとか、返り血がついてないとか……。でも、やっぱり決め手は、表情かな?」


 レンヤは表情と聞いたため、マドカが持っている生首を覗き込んだ。


「う゛っ……。」


 生首の表情は、断末魔の苦しみによって酷く歪んでいた。それがあまりにもリアルで、レンヤは吐きそうになる。レンヤはすぐに手で口を覆い、目をそむける。未だに生首と見つめ合うマドカの気が知れない。レンヤは、吐きそうになりながらも、次々と腕や足を運ぶ。


 そして、ついに体部分。レンヤは上部から運ぶことにした。まずは、胸以上、首以下の部分。よく肋骨までスッパリ切れたと思いながらも、中身が出ないように運ぶ。次は、その下の部分。両方とも大きな切断面なため、レンヤは慎重に運んだ。


 あと少しだ。レンヤは逃げたい気持ちを押し殺して、残りの二つの塊を運ぶ。上から3コめの部分を、慎重に持ち上げる。


 するとその瞬間。びろ~ん……っと、腸が出てきた。


「……。」


 一気にレンヤは青ざめる。


「ギャーーーーー!!!」


 レンヤは持っていた肉塊を放り投げ、猛ダッシュで、廊下を走り抜け外に飛び出した。


「ちょっとぉ!レンヤ君!?」


 マドカはレンヤを引き止めようとしたが、レンヤは聞く耳を持たず逃げ去ってしまう。


「全く……。レンヤ君は本当に内臓に弱いんだから……。」


 廊下に独り残されたマドカは、あきれつつも笑っていた。レンヤが逃げ去った今、マドカは仕方ないので、自ら肉塊を運ぶ。


「レンヤ君、本当面白いなぁ~。ナイフの技術も、殺す度にどんどん鮮やかになっていくし……。これからが楽しみっ!」


 マドカはそう言って微笑んだ。


***

 

 その頃、逃げ去ったレンヤは、涙目になりながら道路の真ん中で立っていた。


「ねぇ、兄ちゃん何してんの?」


 少年はレンヤに近づきたずねる。レンヤは少年に気付くと、


「ちょ、ちょ、ちょ、腸がよぉ……。び、びろ~んって……。」


 と、どもりながら言う。再び先程の光景が脳裏に蘇り気持ち悪さか戻ってくる。


「腸が出てきたって事?そんくらいで泣かないでよ。」

「そんくらいって……。びろ~んだぜ?ビロ~ン。and BIRO~N……。ってか、泣いてねぇよ。」

「うる目じゃん。」

「うるせぇ!あくびしまくってたんだよ!」


 レンヤはゴシゴシと目をこする。少年は、あっそぅ。と言って流した。


「じゃあ、兄ちゃんは、ちゃんと二人とも殺してきたんだ……。」

「あぁ。華麗に殺した。血が出過ぎたのが、玉に傷だけど。」

「なんで?血が出すぎると困るの?」

「俺は困んねぇけど、マドカさんが血大好きだから、出すぎると怒るんだよ。」

「ふぅ~ん。なるほど。」


 少年は、両親が殺されたというのに、えらく落ち着いている。まるで他人事。自分は関係ない。そんな感じだ。


「おまえ、両親死んだってのに、よく平然としてられるな。」

「あんな奴ら、死んだって別に平気。むしろ、すかっとした。兄ちゃんありがと。感謝してる。」

「いや、どういたしまして……?」



 レンヤは複雑な気持ちになる。人殺しをしたのに感謝されるなんて想定外だ。憎まれて当然のことをしたにもかかわらず、感謝されるとは一体何が起きているのか。


「おまえ、そんなに両親嫌いだったのか?」

「……。嫌いっていうか……。僕は両親を許さない。あいつらは、僕の兄を死に追いやったんだ。殺したも同然だった。だから許さないし、死んでもかまわない……。」


 少年は、ぐっと唇を噛みしめる。その表情からは強い恨みや憎しみの感情が伝わってきた。もちろんこの言葉だけでは、詳細な事情はわからない。しかし、相当な事情があるのだろうと思われる。ここまで少年を歪ませて狂わせたのだから、他人が簡単に想像できないものだろうと言える。


「ちょっと~!レンヤ君~!いい加減戻ってこないと、安楽死させた後、解剖するよ~!」


 マドカの声が家の中から聞こえてきた。


「やべっ!早く戻らないと……。マジで解剖される……。俺、ちょっと行ってくる……。」


 今までの経験から、マドカの発言が全く冗談に聞こえないレンヤは、本気で焦ってまどかの元へと戻っていった。


***


「レンヤ君、もう内臓ないから、血を回収して。」


 マドカはそういって、レンヤに布を渡した。レンヤは布を渡されたものの、どうしていいかわからず棒立ちする。


「この布は血液をめちゃめちゃ吸い取るから、血溜まりに浸して。」


 レンヤは言われた通りに、血溜まりに浸してみた。すると、布はぐんぐんと血を吸い上げ、床は、血の跡すら見えないくらい綺麗になってしまった。レンヤは目を疑った。


何だ!?この布は……。


「終わったら、リアカーに乗っけて~。」


 レンヤは言われた通りに、真っ赤に染まった布を持ち上げる。すると、布からは、一滴も血が垂れないばかりか、湿ってすらいなかった。ますます不思議な布である。レンヤはその布をリアカーにのせた。


「よし、おしまいだね~。帰ろう!」


 二人は家から出ていった。


「う~ん!大漁!大漁!」


 マドカは満足そうだ。


「殺人が漁と同じかよ……。」

「同じじゃないの?根本的に。」


根本的に違うからね。


 と、レンヤは内心突っ込む。そんな会話をしながら、二人は、外にいる少年のもとまで、死体とともにやって来た。


「あ!少年、名前は?」


 マドカは、少年に尋ねる。


朔磨サクマ……。」

「じゃぁ、あだ名は『サクマっち』ね!私の名前はマドカ。こっちのお兄さんはレンヤ君。よろしくね!」


 マドカは少年にニコッと笑いかけ、握手を求めるように、手を差し出した。


「よ、よろしく……。」


 少年は、マドカの血まみれの手にドキッとしながらも握手した。


「ところで、サクマっちとレンヤ君はこれからどうする?」


 マドカは二人にたずねる。


「あー。俺は、どーしよ……。何も考えてなかった。血まみれだし、これじゃあ、確実にブタバコ行きだ。」


 レンヤは自分の服装を見ていった。


「じゃあ、私の家に来るって事ね?」

「え?」

「つまり、私の家に来て、下僕になってくれるんでしょ?」


 マドカはニコニコ笑いながら言う。


「え?いや、何で?」

「ふふふっ。警察に通報してもいいんだよ?」

「スイマセンデシタ……。」


 レンヤは見事にマドカの下僕になってしまった。


「サクマっちは?」


 マドカは、次はサクマに話をふる。


「えっと僕は……。」

「じゃぁ、私の家に来るのね?」

「僕まだ何も……。」

「そうと決まれば、お家に帰ろう!!」


 こうして、サクマも強制的にマドカの支配下となった。レンヤは慰めるようにサクマの肩をポンと叩いた。


 マドカは独占欲の強い女の子。興味をもった人間を手放すなんて事は、まずありえない事である。


 3人は静まり帰った住宅街を歩き、マドカ宅へと帰って行った。

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