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殺人同好会 〜橋口まどかの存在証明〜  作者: ゆこさん
8章
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8章-5.開幕の音 2023.11.19

 ただ微笑むだけのシラウメの様子を見て、知能犯はシラウメの意図を察したようだ。小さくため息を付きながらもニヤリと笑い、ゆっくりと口を開いた。


「分かりましたよ。言えばいいのですね? ワタクシもこんな所で死にたくはないので。仕組みは簡単です。ワタクシの体にはある装置がついています。ワタクシが気絶すると、その瞬間自動的に神経ガスが散布されるような装置です。当然任意のタイミングでも発動可能ですがね。ククク……。神経ガスが散布されれば、確実にたくさんの人間が死ぬでしょう」

「神経ガスですか。神経ガスを使って街の人間を的確に殺すのでであれば、仕掛けた場所は閉鎖空間で不特定多数の人間が自動的に集まる場所……。それも複数個所。屋内の公共施設が狙い目でしょうか」

「ククク。そうですよ。その通りです。この街の公共建築物内を中心に全9か所設置しました。もしワタクシをこの場で殺せば、それらの場所に一斉に毒ガスが撒かれることになります」


 この情報が正確である保証はどこにもないが、知能犯の前科である事件の情報を考慮すれば、おおむね事実なのだろうと考えられる。というのも、知能犯は街の人間を殺すことが目的ではない。ただ、こうやって警察と遊びたいだけなのだ。警察に相手をしてもらうために街の人間を人質にしているだけだ。だからこそ、ここで嘘を付く可能性は非常に低い。嘘を付けば、知能犯自身がやりたいGAMEとやらを、自身の手で非常につまらない物にしてしまうからだ。自分で定めたルールに対して、誠実に臨むからこそ、勝利したときに快感を得られるという事なのだと推測している。従って、知能犯が今述べた情報は、事実である可能性が非常に高いと言える。完全に信じるわけではないが、信憑性の高い情報としてシラウメは認識した。

 

「ふふっ。貴方は馬鹿ですか? 現在の時刻は夜中の3時を少し回った頃。貴方が神経ガスを仕掛けた場所に人は集まっていません。ですから貴方を今この場で殺します。別に神経ガスが撒かれたと思われる場所を、直ぐに閉鎖してしまえば良いんですから。そうしてしまえば街の人間に被害はでないでしょう?」


 シラウメの問いかけに対して、知能犯はしばし驚いたようだったが、再び静かにククククク……と笑い出した。


「まさか。まさかまさか。この時点でそこまで言わされるとは、さすがに予想外でしたよ。そうです、白梅君の予想通りですよ、9ヶ所の設置場所のうち、1ヶ所はまさにこの空間です。つまり、アナタはワタクシを今この場所で殺すことは不可能です」

「ふふっ。有益な情報をありがとうございます。お陰様で探さなければならないのは8ヶ所になりました」


 シラウメはそう言って、爽やかに笑った。今からこの街に存在する規模の大きい公共建築物を手あたり次第に調査すれば、朝になって利用される時刻までには、設置された場所は全て特定できるはずだ。


「さて。ではそろそろワタクシも攻撃させてもらいましょうか。いつまでもこうしていてはつまらないですからね」


 知能犯がそう言った直後、突然アイルがその場を飛び退き、シラウメの方に戻って来た。


「うわぁ。危なかった……」

 

 アイルは苦笑している。そこまで危なかったわけではないだろうが、飛び退いて戻ってくるのだから、それなりの攻撃を受けそうになったのだろうなと察する。


「ほぉ~お。よけやがったか。まぁ、あのシャドウなら当然と言えば当然か」


 そんな知能犯とは別の男の声が聞こえたかと思えば、日本刀を片手に持った長身の男が現れた。肩下程度まである長い黒髪を下の方で緩く1つまとめた髪型。この暗い場所でもサングラスを掛けており非常に怪しげな見た目だ。服装は黒のワイシャツに黒のタイトなパンツを履いている。年齢は20代後半と見える。その男から放たれる異様な雰囲気にシラウメは警戒する。恐らくこの男は殺し屋だ。初めて見る顔だが間違いないだろう。また、アイルの事をシャドウと呼んでいたのだから、アイルが昔殺し屋として生きていた時の事を知っているのだろうと推測できる。


 シラウメがその日本刀を持った男に釘付けになっていると、


「あー! ちょっと待ってくださいよ! サムライさん! 何で私を置いて行っちゃうんですか!?」


 と、別方向の闇の向こうから少女の可愛らしいソプラノの声が聞こえてきた。


 シラウメはハッとしてそちらの方へも視線を向ける。しかしながら闇が深く姿を捕らえる事はできない。どうやら知能犯側の武力は日本刀を持った男だけではないようだ。アイルを退かせるだけの実力のある男だけではないとなると、知能犯が用意した戦力は相当なものである可能性が高い。


 そんな思考を行っていると、闇の中から、ブォォォオオンとエンジン音が響いてきた。そして間もなくすると、暗闇から姿を現したのはショートヘアーの長身の少女だった。その手には、少女には明らかに不釣り合いなチェーンソーが握られていた。先に聞こえてきたエンジン音はそのチェーンソーのエンジン音だったのだと分かる。


 少女はまだあどけなさも残る可愛らしい見た目だった。身長は165センチメートル程度、細身で手足が長い。茶色味掛かった黒の短い髪で、真冬でも生足を出した服装だった。今時の女子高生そのもののようなスタイルである。そんな少女はニコニコと笑っている。戦場に来たとは到底思えない様な雰囲気だった。


「えへへ! ユミちゃんだよー!! 歳は17歳! 好きな食べ物は海鮮丼! そっちの日本刀持った人はサムライさん! よろしくね!」


 ユミと名乗った少女は元気に自己紹介を行う。だが、この少女もまた異様な雰囲気を纏っていた。普通の女子高生がチェーンソーを持っただけではないのだと本能的に分かる。

 

「そういう事なのですよ。白梅君。Sランクプレイヤーを2人程、用意させて頂きました。ワタクシが殺し屋を雇うぐらいは予想は出来ていたでしょう? ただ、普通の殺し屋を雇ってもつまらないので、アナタの部下達と因縁のある人を雇いました」


 知能犯はそう説明すると、再び楽しそうにククククク……と笑った。

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