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殺人同好会 〜橋口まどかの存在証明〜  作者: ゆこさん
6章

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6章-1.検査結果 2023.11.5

 学校爆破事件から数日経ったある日。シラウメはある場所に車で向かっていた。シラウメは後部座席でノートパソコンを膝の上に広げ、カタカタと音を立てながら操作を行っている。ゆったりとした車内には、運転手とシラウメだけだ。運転を行うのは黒のスーツを着た男性で会話を行う事もなく静かに運転をしている。


 しばらく走り続けると、シラウメを乗せた車は目的の施設の敷地内へと入っていく。セキュリティのある門扉を通り、敷地内の車路を進むと大きな箱型の白い建物が見えてきた。そして、車が建物の正面、車寄せの庇の下に入るとゆっくりと停車した。


 シラウメはパタリとノートパソコンを閉じ、持っていた大きなカバンにパソコンを仕舞った。ゆっくりと扉を開け、車から降りる。そして扉を閉めると今まで乗っていた黒の高級車はロータリーを進み、建物のある敷地内、奥の駐車場へと消えていった。


 シラウメは建物の正面入り口へ視線を向ける。外壁は白を基調としており、壁面緑化のラインが縦にいくつか入ったシンプルな外観だ。シラウメはオートドアを通り、建物内すぐにある受付へと向かった。


「警察の神辺白梅です。」

「ご予約はされていますか?」

「はい。10時から間宮菜月マミヤナツキさんとアポイントを取っています。」

「はい。少々お待ちください……。確認が取れました。こちらの入館証を付けていただき、正面のソファーでお待ちください。」


 シラウメは受付の女性から入館証を受け取り、入り口付近に設置されたソファーに腰を下ろした。マット調の黒い正方形の石目調タイルの床に、ライトグレーのソファーが複数配置されており、観葉植物を囲んでいた。この空間にはシラウメの他には誰もいない。

 

 しばらくシラウメがソファーで待っていると、建物の奥から一人の女性が歩いてきた。


「シラウメちゃーん!お待たせさー!」


 赤み掛かった茶髪のショートヘヤー、赤い淵の眼鏡をかけ、白衣を来た女性がシラウメに手招きしていた。シラウメは立ち上がり、その女性の方へと歩いて行く。


「おはようございます。菜月ナツキさん。」

「おはよう。いきなり呼び出しちゃってごめんさね。でも、早い方がいいと思ったさー。」


 白衣を着た女性、ナツキはそう言うと、シラウメを案内するように施設内を歩きだした。シラウメはナツキに遅れないよう後ろをついて行った。


***


 エレベーターで階を移動ししばらく廊下歩いて行くと、ナツキは廊下突き当りにある扉を開けた。そこはナツキに割り当てられた研究室だった。室内には簡易な4人掛けのテーブルとイスがあり、周囲には研究資料と思われる書類棚が並んでいた。床から天井まで頑丈な書類棚が壁全面に配置されており、そこに書類が隙間なく並んでいる。非常に圧迫感のある空間だった。


「そこに座って待っていて欲しいさね。今資料持って来るさー。」


 シラウメは言われた通り、近くの椅子に腰を下ろした。ここへ来るのは初めてではない。何度か訪れているが、来る度に資料が増えていくような気がしている。相変わらずナツキは研究熱心で好奇心旺盛なのだろうなと感じる。


 ナツキは警察と協力関係にある研究者だ。ナツキが所属するこの研究施設は基本的に警察の管轄に入る。特にナツキはシラウメの担当でもある。科学的な調査が必要な場合には、必ずナツキへ依頼を行っている。


 ナツキとはシラウメが警察の仕事を始めた頃からの知り合いで、長い付き合いになる。出会った頃のナツキは新米の研究者であったがその頃から実力があり、現在では数々の成果が評価されて、周囲から期待される有能な研究者となっている。シラウメにとって、頼もしい仕事仲間である。


「ビッグニュースは最後にとっておいて、まずは、先日の学校爆破事件の犯人達の身体検査の結果からさねー。」


 部屋の奥から大量の資料を持って戻ってきたナツキはそう言ってテーブルに資料をドサッと置いた。


「シラウメちゃんの言う通り、出て来ちゃったんさー。遺伝子操作の跡。二人からも。」


 ナツキはシラウメに見やすいように検査結果の資料をテーブルに広げた。そして遺伝子操作の痕跡がある事を証明する部分を指さす。シラウメは指さされた部分を確認しつつ、じっと他の資料も読み進めていく。


「主犯の男の方は……。血液の異常減少……?」


 シラウメはそう呟いて眉をひそめた。顔を上げてナツキを見る。


「血液の異常減少……。やっぱり引っかかるさねー。簡単に言えば、体内の血液の量が異常に少ないって事さー。根本的に血液の生成量が少ない。血圧も低い。だから、少量の失血でも死の危険があるし、貧血にもなりやすいさー。激しい運動なんてしたら死ぬさね。なんて言うか、気の毒さー。明らかに劣化方向の操作だから意図が分からないさね……。気持ち悪いさー。」

「成る程……。分かりました。解説ありがとうございます。」


 シラウメは再び資料を読み進めていく。ぶつぶつと小さく独り言を呟きながら真剣な眼差しで資料を見ている。


「前回検査依頼を受けた、街で刃物を振り回して多くの人間を切りつけた男の方……。あっちの男の場合、単純にパワーアップする方向性だから遺伝子を操作した意図は理解できるさね。だけど、本当に今回のは意味不明さね。他に遺伝子操作によってもたらされた恩恵があるかどうかも細かく調べたけど、何も見つからなかったさー。」

「私の考えでは、何かを実験して試していた……。という可能性が濃厚かと思います。その実験の過程の副産物が今回の主犯の男。要するに失敗作のような位置づけかと。」

「確かにそう考えれば有りさね……。より一層気の毒さー……。」


 ナツキは苦笑いを浮かべた。シラウメは持っていた資料の束を読み切ったらしく、次の資料の束を手に取った。そちらは爆弾を操作していた男の検査結果を記した資料だ。


「こちらは血液の異常増加ですか……。先ほどの異常減少とは真逆と考えていいですか?」

「うん。その通りさね。血液の異常増加は、体内で血液が物凄いスピードで作られる状態が維持される。例え半分以上の血を抜いてもすぐに元通りになるさー。」

「まさか……。」

「そうさね。シラウメちゃんが今思った事は合ってるさー。」

「……。」


 ナツキはテーブルに置かれたブルーのファイルを開いた。そして、シラウメが手に持っている資料と比較できるように広げた。


「こっちが約8年前に検査したときの資料。橋口まどかの身体検査結果さね。」

「全く同じですね……。」

「うん。そうさね。」


 シラウメは資料を置いて、ふーっと息を吐いた。8年前の資料、マドカの身体検査結果の資料に目をやる。何度もこの資料には目を通した。完全に暗記していると言っても過言ではない。それでも、見比べるように再度細かく確認を行っていった。


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