プロローグ 2023.8.27
季節は夏の終わり。時刻は午後6時50分頃。真っ赤な夕日が沈みかけ、オレンジ一色に街を輝かせるそんな時。夕焼けの光が届かない薄暗い路地裏に、上半身はド派手なアロハシャツ、下半身はひざ丈のズボン。足元はビーサンで、頭は金に近い茶色に染まった髪。さらに耳には何か所もピアスをぶら下げた、まるでチンピラのような少年がいた。
彼の名前は連夜。歳は15歳。
「ヤバイだろ。マジで……。」
誰に言うでもなく、レンヤは呟いた。右手には真っ赤な血液が滴る、刃渡り25センチ程度の刃物。
「これって、夢じゃなくて、現実だよな?」
苦笑いしながら少年は自分に問う。もちろん答えは『現実』。そう返ってくる。
「逃げるか?っても逃げ切れねぇよ。絶対……。」
彼の目の前には2つの死体が転がっていた。30代女性とその子供の死体。どちらも死因は、心臓を一突きされた事によるショック死。
「まさか、殺しちゃうなんて……。ねぇ……。全く何やってるんだ、オレは……。」
そう、彼は無抵抗、無関係の人間を、『ただむしゃくしゃしていたから』という理由だけで殺してしまったのだった。そして、レンヤはふとあることに気付く。見下ろした自分の姿を見て絶望する。
「うわっ・・・お気に入りのシャツが、かえり血まみれだし。最悪。」
彼は死体を目の前にしてそんな事を呟いた。レンヤは、これからの人生以上に、お気に入りのアロハシャツが汚れてしまった事を気にしていた。