幕間-1
失っていた記憶が蘇った。
それは即ち、『翡翠の王』の寿命が尽きる時でもあった。
地界を飛びまわり、魔物の群れから逃れてきたが、ついには取り囲まれてしまった。
一か八か。アルティアは力強く大地を蹴って上空へ飛んだ。目指すは天空界。一番低い位置にある闇の国にひとまず駆け込みたかった。
アルティアが動くと同時に、魔物の群れが一斉に何かを放った。それはアルティアの尾、後脚、胴に絡みついた。
必死に翼をばたつかせたが、相手の数は100ときかないくらいに多く、力の差があり過ぎた。その翼にも絡みつき、アルティアは墜落した。
咆哮すれば首に絡みつき、絞められた。前脚で引っ掻こうとして、拘束される。魔物が頭を押さえつけた。噛みつこうとしたら、口輪で閉ざされた。
アルティアは、足掻くことができなくなった。
絡みついてきたものは、魔力で生み出された鎖のように見えたヒト型の魔物だった。強く締め付けられる。痛みが走る。むぐぅ、と声が漏れる。
……継承しよう。
あの島で聞いた『声』が、アルティアの脳内に響く。
……蘇りし記憶を喰らおう。
(やめろ!オレはお前の後継者になんかならねぇぞ!)
必死に思念で訴えるも、『声』は聞く耳を持たない。
……我が命を、この者の命へ。王が喰らいし全ての記憶を、この者に託そう。
(そんなもんいらねぇー!)
アルティアは渾身の力を口元に溜め込むと、無理やり口を開けようとした。僅かに開けられた隙間から、細い光が放たれた。それは、目の前の、王らしき姿の大蛇の首を斬った。
刹那、身体を縛っていた鎖が粉砕した。ヒトの悲鳴のような音が耳を痛めつけたが、怯むことはなかった。
解放されたアルティアは、翼を羽ばたかせると、素早く四肢でしっかり身体を支え、咆哮した。
幻獣の咆哮は、地界を震わせた。遠く離れた天空界にもその波は届いた。




