第1章-3
部屋に常備されていたハーブティーを淹れて、ヘイレンは一息ついていた。
たくさん泣いたシェラは、その後また熱が出たこともあってぐっすり眠っている。時折鼻を啜っているが、起きる気配がない。
小半刻(約30分)程経った頃、扉が静かに開いた。巡回してきたウィージャだった。
医師はシェラの様子を一瞥して、ほぼ空になっていた点滴袋を取り替えた。額に乗った汗をそっと拭き取り、掛け布団に手を突っ込んで少しじっとした。
「……ちょっと脈が速いな」
ウィージャは簡易キッチンへと移動し、氷嚢の準備を始める。ヘイレンも手伝った。
額の少し上、前髪の生え際あたりに氷嚢を置いた時、シェラは小さく声を出したが、それだけだった。眠る表情が、少しだけ和らいだように見えた。
「んー……これでも下がらない感じだったら解熱剤飲ませるか」
ウィージャはポーチから薬のシートを1枚取り出して、テーブルの上に置きながら、カルテを手に取って記録し始める。
ヘイレンは手伝いつつずっと医師の手元を観察していた。白衣を着ていて手首から先……つまりは手しか見えないのだが、とても義手には見えない。自然な動きだし、ペンも器用に使ってるし。脈も熱も測れるから、すごい。
「何か気になる?」
凝視し過ぎていたのか、医師が不思議そうに聞いてきた。ハッとして「いえ……」と咄嗟に返したものの、気にはなっていた。
「その……義手って言われないとわからないくらいに自然だなぁって」
「神経が繋がっていて脳にしっかり伝達できているから、普通の腕となんら変わりなく使えている。リハビリを経て動かせるようになるまでは、ずっと痺れてるし刺すような抉られるような痛みもあって、生き地獄だったけどね」
そんな風にシェラにも話しちゃったから、余計に怯えたかな……とウィージャはシェラを見つめる。嘘は言えないからねぇ、と苦笑した。
「シェラもこの義手を付けるなら、そういう地獄を味わうことになるけど……」
ウィージャは記録を書き終え、カルテをテーブルに戻した。点滴袋に視線をやって、ふう、とため息をついた。
「……片腕でも相当だろうな。でも私は、シェラには頑張って乗り越えて欲しいと思ってるんだけどね」
「それはボクも同じです。出来る気がしないって弱音吐いてたけど……」
そうなんだ、とウィージャは微笑む。
「弱音吐いても結局はやり通してるのがシェラなんだよな。なんだかんだで忍耐力がある」
私も一服しようかな、と言いながら再び簡易キッチンに向かう。ヘイレンが作っておいたハーブティーがまだ残っていたのを見て、「これもらっていい?」と聞いてきた。もちろん頷いた。
カップに注いで、ゆっくり戻ってきて、ソファに腰を下ろした。一口飲んで、ほっと表情が緩む。
「ヘイレン、お茶淹れるの上手だね。凄く美味しいよ」
「あ、ありがとうございます……」
「……なんか、まだ気になってそうだね」
「あっ……えっと……」
「どうして義手なのか、かな?」
それくらいしかないよね、とウィージャは笑う。何かを失う事はいい思い出ではない。それを言わせようとする自分に嫌悪感を抱いた。
「あの……ごめんなさい。嫌な過去を思い出させますよね……」
「まあ……ね。でも、ヘイレンをもやもやさせたままのほうが嫌だし、きちんと話させてもらうよ。覚悟してね」
なんというか……このヒト精神面も強いな。微笑する顔が……失礼ながら怖かった。ヘイレンはわざと声を出してふう、とため息をついた。ウィージャも小さくため息をつく。
「……医師になる前は、ダーラムの騎士だったんだ。みんなをまとめる隊長を務めていた。ある事件を機に、今の状態になってしまったんだ。……その事件は残虐なもので、私のほかにたくさんの命が奪われた。はんにんはたったひとりの、気の狂った男だった」
* * *
最初にこの事件が起きたのはダーラムではなく、地の国で2番目に大きな街エルーデだった。
あるヒトが四肢の無い状態で発見された。被害者は既に事切れていた。残虐な行為に民は戦慄し、怯え、街を逃げ出すヒトもいた。
3日置きに同様の遺体が街の物陰……民家や公共施設の裏などで発見された。こども、おとな、男女関係なく、その殺ジン事件は続いた。はんにんに繋がる手がかりが全く掴めず、民は街の騎士に不信感を募らせ、あれよあれよと街からヒトがいなくなっていった。
そして、ついに被害は騎士にも及んだ。犠牲になった騎士は、当時夜の見回りをしていた。怪しい気配を感じて槍を振るったのだが、背後を取られて鈍器で頭を殴られ、どこかに連れて行かれてしまった。
……不気味な歌声と刃物を研ぐ音が騎士を目覚めさせた。真っ暗闇で何も見えず、大の字に拘束されて身動きが取れない。それでももがいていると、歌声がすぐ近くまで迫って来た。
『うごいちゃだーめ』
そう言われた直後、腹部を殴られた。強烈な一発で口から血を吐いた。脱力している間に腹も固定された。
『さーてと。ど、こ、に、し、よ、う、か、な……』
とても楽しそうに呟く声に、苛立ちと恐怖、そして少しの悔しさと大きな覚悟が騎士を支配した。そして。
『こ、こ、か、ら、か、なぁ!』
刃物が振り落とされ、だん!と耳元で音がした。激痛で悲鳴を上げた。鮮血が噴き出した。
『あっはは!すごいねぇ!もう一度!』
また大きな音がして、今度は反対の腕を断たれた。己の血が髪を、身体を濡らす。悲鳴ではなく喀血する。
そうやって、騎士はあと2回、嫌な音を聞いた。
腹の拘束を解かれても、騎士はもちろん動けなかった。横を向いて、口と鼻から血を流し、浅い呼吸を繰り返す。それをはんにんは、しばらく息荒げに見つめていたようだった。
『……死なない。なんで?』
普通は全て斬られる前に事切れているはずなのに。どうして?とはんにんは少し焦っていた。
『……まあ、首も斬っちゃえばいいか!』
ギャハハ!と笑うと、刃物を首元にピタッと当てた。
フッ、と離れた。一瞬の静寂。
『ぎゃあああああ!』
首が吹っ飛ぶ前に、爆音と共にはんにんが吹っ飛んでいった。天井が崩れて光が差し込んでくる。眩しくて目をギュッと閉じたまでは覚えているが……。
* * *
「次に目覚めた時には、私の身体は包帯でぐるぐる巻きになっていた。傷は縫合され、大量に失った血は、ヒトビトの輸血で取り戻し、私は奇跡的に一命を取り留めたんだ」
ウィージャはカップを口に持っていって、ハーブティーをこくりと飲んだ。ヘイレンは手が震え、声が出せなくなっていた。
「ね、すごい話でしょ?……息してる?」
カップをソファの前のローテーブルに置いて、シェラのそばにいたヘイレンに近づき、両肩をぽんと軽く叩いた。反動で身体が跳ね上がり、ひっ、と息を吸い込んだ。
「せ、せ、せんせー!」
ヘイレンは悲鳴を上げて勢いよく立ち上がった。そして、徐に医師を抱きしめた。
「おおおお」
驚くウィージャだったが、ヘイレンは強く抱きしめ続けた。背丈はヘイレンの方が低かったのに、今はほぼ同じくらいだ。医師の顎がヘイレンの肩にちょこんと乗った。
「……ヘイレン、ちょっと、力が……キツイ」
「なんで……こんな目に……先生が遭わなきゃいけなかったんだ……」
「へい……れーん……いたたたたた」
背中をやや強めにバシバシ叩かれて、ようやく我に返った。慌てて抱擁を解くと、ウィージャは自分の胸を撫でていた。
「ご、ごめんなさい……」
「いやいや……私こそごめんね。思った以上にエグい話だったでしょ?」
「……はい。……あの、それで、はんにんは捕まえられたんですか?」
「……その場で死んじゃったらしい。爆音で吹っ飛ばされたことで壁に激突して、その拍子で刃物を投げ出して、自分の身体に刺さっちゃって。笑いながら死んでいったって。ホント狂ってるよね」
「うぇ……」
「だから、はんにんの動機……なぜこんな残虐な事をしたのかは誰にもわからないんだ」
ちょっと落ち着こうか、とヘイレンはウィージャに連れられてソファへと移動した。震えが止まらない。ハーブティーを飲んで落ち着きたかったが、カップを落とす自信があって無理だった。
「あ、あとね、この事件、ほんっとに手がかりが無かったから、もうみんな疲弊しててさ。こっちも狂ってたかもしれないな、と今思ったわ」
「ど、どういうことです?」
「……囮だよ」
「は?」
「わざとはんにんに捕まって、それで居場所とジンブツを掴んで、突入してもらった」
「な……」
とんでもない作戦に、ヘイレンは突然沸点が低くなった。顔が熱くなり、隣に座ったウィージャの両肩をガシッと掴んだ。……ちょっと軋んだ。
「わざと腕を失ったってこと!?命懸けにも程がある!死んでたかもしれないでしょ!?かもしれない、じゃなくて、狂ってる!」
思わず丁寧な言葉を使い忘れるくらいに、ヘイレンは憤っていた。変貌ぶりに、さすがに医師の表情も陰った。視界が一気にぼやける。しょっぱいものが頬を伝った時、今度はウィージャから抱擁してきた。
「……そうだよね。そうやって、同じようにたくさんのヒトから怒られたよ。四肢を失ってこれからどうやって生きていくのか?って何回も問われたよ。死ぬ覚悟でいたから、なーんにも考えてなかったけど……」
「せんせ……」
「四肢の無い騎士は使えないから、通告される前にこっちから辞めますって言ったし、無職になってベッドに横たわりながら、これからどうしようかなぁ、このまま飲まず食わずで放っておいてもらってもいいか……なんて思ったこともまああったかな。さすがに当時言葉にはしなかったけど。必死になって命を繋いでくれたんだもの……」
ウィージャはゆっくり抱擁を解いて俯いた。
「散々怒られたけど、最後にはみんな『それでも生きててくれてよかった』って言ってくれた。……そう、そうだったな……」
医師はソファに身体を預けて、天井を仰いだ。ヘイレンはその間に涙を袖で拭き取った。
「先生も、みんなから慕われていたんですね。だからこそ、みんな、必死に……先生を……助けようと……」
ダメだ、涙が溢れて話ができない。すごく悲しくて、なぜか悔しくて、ぐちゃぐちゃだ。もう、大泣きしていいかな?さっきのシェラみたいに。
「ごめんね……ツラい気持ちを与えちゃって。……ごめん、ホントに」
ウィージャの声が、震えた。ヘイレンは大泣きを堪えて、また医師を抱きしめた。今度は優しく。
「……抱擁って、ヒトの心を落ち着かせる効果があるよね。……ああ、すごい……とても……落ち着く。ヘイレン……ありがとう」
感謝されて、もう耐えられなかった。
散々涙し、怒り狂ってひと段落した時、ヘイレンはすごく気まずい気持ちになった。今更聞くのも恥ずかしいので、シェラが回復したらこっそり聞こうと思っていた。
「随分と長居しちゃった。まあ今は患者さんも少ないからいいんだけど。……シェラは変わらなそうだし、一旦医務室に戻るね。何かあったら呼んでね」
ウィージャは立ち上がってそう述べて、ゆっくり扉へ向かっていく。と、ピタッと立ち止まった。ヘイレンはソファから立ちながら黙ってその様子を見つめる。ややあって、医師は己の足の付け根を少し摩った。
「いてて」
「大丈夫ですか?」
「ん、ちょっと……ピリッとね。天気が悪くなってくるかも」
「えっ」
どういうことかわからない。困惑していると、ウィージャは戻ってベッドのそばにあった椅子に座った。歩様が少しおかしかった。
「傷口がこう、たまに痛むんだよね。そういう時って大抵大雨が降るんだよ。季節の変わり目の大嵐の時期は過ぎたけど、まだ降る時は降るんだな……」
「……あの、先生、ボク……」
「ん?」
見上げるウィージャと目を合わせた途端、顔が熱くなり、鼓動が速くなった。どうしよう。
「……ヘイレンこそ大丈夫?急に耳が赤くなったんだけど」
「へ?」
思わず両耳を掴んでしまう。……熱い。
「いや、あの……えっと……その……」
もごもごとしながら、言葉を探そうにも頭が真っ白になってしまって出てこない。いや、出てきているのだが……もういいや、観念しよう。
「い、今更なんですけど……あの……し、シシって、どういう意味……だったんです?」
そう、ずっとわかっていなかったのだった。両腕を失い、その後2回嫌な音を聞いた、と言っていたが、ヘイレンにはピンとこなかった。ウィージャはきょとんとしたが、次第にふふっと笑いだした。……デスヨネ。
「両手両足のことだよ。つまり私は、義手と義足なんだよ」
「はっ……」
「さすがに足は見せる行為はよろしくないからやめておくけど」
徐に脱がれても目のやり場に困る。……それにしても、わからない単語は無限にあるなぁ。この時代に来て随分と経つのに。コトバってムズカシイ。
「そ、その……先生のリハビリ……って、想像つかないけど、とんでもなく大変だったのでは……」
「そうね……。まず自分では全く動かせないし、さっきも言ったけど痺れるし、痛いし、先生に動かされたらめちゃくちゃ痛いし、気絶も何回やったことか。あ、両手足一気には装着しなかったよ。作ったほんにんが拒否したから。あ、この義肢はルーシェが作ったんだよ。凄いよね、彼女」
ウィージャは当初、一気に付けてくれとルーシェに頼んだらしいが、彼女は断固拒否した。そんなことしたら最初のリハビリで死ぬ、と断言したそうだ。
「結果的に、両手を先に付けて、動かせるようになってから両足を付けたね。そうそう、動く時って突然なんだよ。今までの苦労はなんだったの?ってくらいにあっさりとね。そうだな……やっと自分でベッドを脱するまでに何年かかったかな……」
指折り数えてから、5年くらいかなぁと呟いた。もう戦慄しかない。
「でもまあシェラなら……ヘイレンがついてるし、1年くらいで自分の腕にできるんじゃないかな。たぶんね」
「いちねん……次の暖期ぐらい、ってことですか?」
「そうそう。リハビリを欠かさず続けられていたら、だけど」
「シェラの心を壊さないようにしないとですね……」
「そうね。そこは私も懸念してる。だって今からもう病んでるじゃん?」
と、噂をしていたら、当のほんにんが「んん」と声を漏らした。
「……半分壊れてるかもしれない。心も一緒に修復しないとね」
ウィージャはうっすら目を開けたシェラを診ながらそう言った。
「……解熱剤入れようか。ちょっと起こすよ」
医師に支えられて、シェラは身体を起こした。というか、ベッドの上半身部分が動いて座った状態になった。……療養所のベッドって動くんだ……。
テーブルに置いた解熱剤のシートから2粒出して、シェラの手のひらに置いた。ウィージャがコップに水を注いでいる間にそれをゆっくり口に持っていく。それから、コップを受け取って、水を口に含んだ。
「これでもうひと眠りしてもらって。また様子を見に来るね」
ウィージャは今度こそ扉へ向かい、そして出て行った。ヘイレンのため息と、シェラのそれが重なった。
「……強いヒトだね、先生」
ヘイレンの呟きに、シェラはゆっくり頷きながら微睡んでいった。シェラのそばにそっと座って、ぼんやりと寝顔を眺めていた。
それから1刻(約2時間)経ってシェラが目覚めるまでの間、ヘイレンは部屋を出てヒールガーデン内を散策していた。
このガーデンは5階建てで、療養施設のフロアは2階にある。1階は大きなロビーと、カフェや飲食店が並び、奥地には広い図書館がある。3階と4階は宿泊フロア、5階は1階とは別のカフェと屋上テラスがある。
宿泊フロアは利用者のみ入れる場所なので、1階をうろついていた。とにかくワンフロアが広い。端から端までどれくらいだろう?結構歩いた感覚だ。
飲食店も様々だった。サンドイッチなどの軽食から、肉の塊を焼いたもの(後でそれをステーキやハンバーグだとシェラが教えてくれた)まで。お酒を飲みながら食事を楽しんでいるヒトたちが集まるお店もあって、それはもう賑やかだった。夜だったのもあったのかな。
そういえば、もうお酒を飲んでもいい歳なのかな……。ヘイレンは喧騒から離れた、レントと行った落ち着きあるカフェでまったりしながらふと思い立った。いつだったか、シェラと彼の友ジン、水の召喚士レムレスが麦酒なるものを飲んでたな。あれ、どんな味なんだろう?シェラが回復したら、お祝いに一緒に飲みたいなぁ。
「あら、ヘイレン、そこにいたの」
物思いに耽っていたところへ、サンドイッチと珈琲をトレイに置いてミスティアがやってきた。よかったらどうぞと向かいの席へと促した。
「ありがとう。なんかニヤけてたけど、良いことあったの?」
どうやらシェラと飲み交わしている妄想が表情に出ていたらしい。思わずほっぺを手で覆った。
「いや……シェラとお酒飲んだら楽しいだろうなぁって……思ってた」
「おとなになったわね、あなたも」
うふふ、とミスティアは小さく笑う。サンドイッチを頬張って、更に幸せそうにその味を噛み締めていく。
「でもね、あのヒトかなり強かった気がする。全然酔わないというか、飲んでも顔色変わらないもの。確かレムレスもそうだったかしら」
シュゴウってやつだったっけ、とヘイレンは思い出す。
「シェラのペースに合わせちゃうと、すぐに潰れちゃうかもしれないから、飲むならゆっくり味わった方がいいわよ。あなた弱そうだし」
「弱そう……」
「アルコールに強い体質、弱い体質とあるの。弱いヒトは少し飲んだだけで顔が赤くなったり、眠気が来たり、すぐふわふわしてしまったり。強いヒトはそうなるまでの時間が長いの。見た目もあまり変わらないし」
「そうなんだ……。ミスティアは?」
なんとなくだが、彼女も強そうに見えていた。いや、やっぱり弱いのかな……。気になって聞いてしまった。
「私は……そこそこに。飲むお酒で違うかしら。麦酒はすぐに酔っ払っちゃうけど、カクテルは平気。飲むスピードや量が違うから、っていうのもあるかも」
「お酒にもいろいろあるんだね」
ええ、とミスティアは手に持っていたサンドイッチのかけらを口に放り込んだ。こくんと飲み込んでから、珈琲を一口飲んだ。
「……あれからシェラはどう?ウィージャが担当医だから、私は直接様子を見に行っていないんだけど。まだ会えてなくて」
「んー……ずっと寝てる。熱が高いままだったから、解熱剤飲んでた」
そっか、と珈琲をまた一口含む。ヘイレンも同じように一口飲んだ。
「片腕のままってことはないでしょうけど、ウィージャのリハビリは壮絶だったみたいだし。私も彼からの話でしかしらないけど。聞いた?」
「うん、めちゃくちゃキツかったみたいだね。シェラは今の自分にそんなリハビリ乗り越えられる自信がないって言ってた」
「……あらそう。とか言いながらもやりきりそうだけど」
「ボクもそんな気がしてる。上位召喚士の試験だって、弱音吐いてたけどフィリアを宿したし」
「ふふ、そうなのね」
じゃあなんとかするわね今回も、とふたりは笑い合った。




