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幕間-2

 翡翠の王に記憶と身を捧げ、アルは翼を持った獣へと変わった。それはのちにグリフォリルという幻獣であると教わった。


 姿を変えたアルに無我夢中で騎乗して、もふもふの白い毛をしっかり握った。アルはひとはばたきしただけで、あっという間にすごい高さを飛んだ。


 アルから落ちたらどうしよう、という恐怖ではなく、後ろから翡翠の王が追いかけてくるのではないかという恐怖でいっぱいだったが、そういうことは無かった。


 少し経って、アルが見つけた島の外の町……ポルテニエに滑り込んだ。着地が上手くいかず、浜辺に突っ込んだ。衝撃で吹っ飛ばされて、身体を打って、そこからどうなったんだっけ。


 ……私は、どうしてそこまでして島を出なければいけないのか、双子が厄災の種ならば、いっそのこと私も贄になっていればよかったのではないか、と、アルと話し合った後もずっとずっと思っていた。


 どうしてアルだけが贄になるのか、どうして私を助けようとするのか。そんな話をアルとしたような。


「ううーん……」


 無意識に声を漏らしていた。それを聞いていた医師が、カルテから目を離した。


「大丈夫?」


 ウィージャの声に、驚いて身体が少し跳ねた。


「え、私、何か言ってた?」

「いや、何か唸ってたからどうしたのかなって」

「ああ……ごめん、ちょっと考え事してた」

「……アルティアのことかい?」


 心の臓が止まりかけた。どうしてウィージャがアルのことを?私、何か話したっけ?あ、そうか、壁に激突した時に走って向かったけど、その時ウィージャもそばにいたんだっけ?


「厩舎を壊して脱走してから見てないよね。無事なんだろうか」


 ウィージャはカルテを片付けながら不安を口にする。


「少しテラスに行ってもいい?外の空気が吸いたくて」

「もちろん。行ってらっしゃいな」


 ウィージャは微笑んだ。ありがとう、とお礼を述べて、部屋を後にした。


 ヒールガーデンの屋上のテラスに隣接するカフェで珈琲を買い、ベンチに腰掛けた。暖期のやわらかな日差しが心地よい。


 ふう、と大きくため息をついた直後、激しい頭痛に襲われた。珈琲の入った紙コップを握る手に力が入る。


『……を捕らえよ』


 翡翠の王の『声』がした。


 どこよ?どこにいるのよ!?私はあんたの奴隷じゃないわよ!


 そう強く念じた。少しだけ頭痛が和らいだので、こめかみを押さえながら立ち上がった。


『次なる翡翠の王に我が記憶の継承を……』


 だから、そんなのはもういらないって!翡翠の王が統べる時代は終わったの!あんたで最後!


 王の姿を探した。ふと見上げると、ガーデンの屋根の頂点に、翡翠色の光がぼんやり現れていた。


『記憶を得れば、全てがわかる。次なる翡翠の王に、今後を委ねる』


 アルの記憶をあんたの記憶で上書きして、グリフォリルの姿で王として生きようとするなんて!乗っ取りなんて絶対にさせない!


 手元の珈琲がじゅわっと音を立てて蒸発した。それは霧の魔法と融合し、焦げ茶色の霧を生み出した。霧は、翡翠色の光を囲い込み、そして包もうとした。


 ふと思い立った。……思い立ってしまった。


 ……あんたの記憶、私が受け取るのはダメなの?


 焦げ茶色の霧が薄まり、翡翠色が蘇った。


 私は……身を捧げたアルティアの双子の姉。弟は厄災を無くすためにヒトの姿を捨てた。ヒトとして生きることを捨てた。私はヒトの姿で今まで生き残ってきてしまった。


 どちらが犠牲になるか、じゃない。どちらも犠牲になるべきだったのよ。あんたに……王に身を捧げなければならなかったのよ、私も。


 アルにはグリフォリルとして、これからも生きていて欲しい。王になんかならないで欲しい。弟の自由を奪わないで欲しい。


 私が……継承するわ。女王として。




 無意識に、翡翠色の光に手を伸ばしていた……。

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