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プロローグ

国名・地名・名前全て花から付けてます。

 シャスタデイジー国。王都名マーガレットの片隅にある女神フロラを祀るフロラ教会にて歳若い女性と彼女の父親くらいの年齢の男性が、人一人分の間を開けてミサを行う時に座る木製のベンチに座っている。

 歳若い女性は十代後半くらいか。

 マリーゴールドの名前そのもののように鮮やかなオレンジ色の髪をしている。

 教会のステンドグラスから射し込む日の光を浴びて余計にそう見えるから、なのか。


「マリーゴールド嬢」


 男に呼びかけられ、彼女はそちらへ視線を遣る。髪よりはやや薄いオレンジ色の目は、生気を感じられないまま。

 但し男を見遣った目には「失望」なのか、その名前の由来である花の花言葉そのものみたいな、そんな感情が浮かんでいる。


「侯爵閣下。発言をお許し願います」


 呼びかけられたマリーゴールドの伺いに、侯爵と呼ばれた男が頷く。軽く頭を下げたマリーゴールドは、先ずは、と口にして。


「お忙しい侯爵閣下をお呼び立てしまして、失礼いたしました」


 謝罪を続ける。それに「許そう」と簡単に口にした侯爵は、マリーゴールドが何を言い出すのか、先を促した。


「侯爵閣下にお頼みしたいことがございます。……我が伯爵家の爵位返上並びに、伯爵領返還の手続きに協力頂きたいのです。それが難しいことでしたら、爵位と領地を侯爵閣下に譲渡する手続きをして頂きたい。いかがでしょう」


 侯爵と呼ばれた男は、予想を上回る話に、目を見開き暫し考える。


「降爵される、と知っていたのか」


「いえ。降爵の罰ではなく褫爵の罰ではないか、と」


 侯爵の問いにマリーゴールドは、即答する。

 そちらに気づいていたのか、と侯爵は嘆息し、僅か十八歳で先を見据えた提案をしてくる聡明さを惜しんだ。

 ーーマリーゴールドを義娘として、いや、伯爵家当主としてその地位に就けてやり、後ろ盾になれなかった事実を。


「陛下に伺いを立ててみる」


 頼みごとを引き受けた、とは言わずに侯爵は回りくどい返答をした。


 爵位返上や領地返還など、一介の侯爵の胸一つで返答出来るものではない。

 仮令(たとえ)シャスタデイジー国の王陛下の懐刀と言われている侯爵だとしても。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

フロラはフローラともいう、花の女神の名前です。

マリーゴールドの花言葉の一つに「失望」があるのでそこから名付けてます。

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