対称性
「静と動だけじゃない!! おにいとこの人は、明暗の対称!?」
観測部四人が揃い、美朱がそれをスケッチブックに書き始めた。
そんな美朱を横目に、俺たちは話す。
「お前ら何してたの?」
別に、全然いいんだけど、同コミュニティで俺以外の全員が揃っているのはあまりいい気はしない。
いや、まあ。全然どうでもいいんだけど。
「虫よけスプレーとか買いに来てたのよ」
「本当はさくやんも誘おうとしてたんだよ? そしたらあの人は虫に無視されるからいいってどりんちゃんが……ああこれダジャレじゃないよ!?」
「いや思ってねえよ」
別に天乃が思ってもない注釈を挟み、俺を省いた理由が明らかになる。
俺が極端に虫に刺されない理由ってそういうこと?
そんな俺の長年の疑問の答えを求めて星見を見ると、こっくりと頷いた。
……まじか。
「というかあの子先輩の妹なんですね。やっぱり、異常者の周りの人ってやばい人しかいない」
なぜか深雪は被害者面。
まあ被害者ではある気もするが、お前も異常者だろってツッコミはしたい。ただ――。
「うちの妹がなんか迷惑かけたなら悪かったよ」
「本当ですよ。私がどれほど怖い思いしたか……」
嘘付け。
めちゃくちゃ楽しんでただろ。
そんなツッコミをしようとしたとき、スケッチ中の美朱に深雪は駆け寄った。
「ダメでしょ? そんなに大事なもの盾にしちゃ」
「だって……楽しくなっちゃったんだもん。あなたが一番動いている瞬間を見れるのはあの時しかないと思ったから」
なんか、深雪がお姉ちゃんしてる……そんな深雪の正論に目を逸らすと、ぶつくさと美朱は言い訳を始めた。
そんな美朱に仕方ないなあと目を細めた深雪は、頭を撫でる。
「……ごめんなさい。いきなり喧嘩しちゃって」
「私もごめんね。でも謝るのは私じゃないでしょ?」
深雪が目を向けた方向には星見が。
確かに、この喧嘩は美朱が星見に襲い掛かるところから始まった。
「ごめんなさい」
「いいのよ。おかげでいいものが見れたから」
確かに……お前もノリノリで実況してたからな。
「じゃあ、私はそろそろバイトだから行きますね!!」
「ああ。私も友達との集合時間だ!! また今度」
「待ってください……写真だけ取らせて」
そうやって時間を過ごしていると、天乃と深雪の予定の時間が迫る。
そういえばこの二人、今日は空いてないって言ってたな。
「あ、待って……写真だけ取らせて」
そうやって解散の流れを引き留めたのは、美朱だ。
彼女は写真を一人一枚ずつとり、集合写真を一枚とると、満足そうにスマートフォンをしまった。
そうして解散、それぞれの道に進んでいった。
「ねえおにい」
「ん?」
「完璧な四人組なんだね!! さすがおにい」
帰り道、写真をじっくり見ながら美朱は満足そうに俺に言う。
なんだか、買い物に来ただけなのに疲れたな。
まあ、美朱が満足な結果を得られたのなら何よりだ。
服も買えたし。
「でも、ああいうことはもうなしにしような」
「はーい」