表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

中学3年生 前半

2年からの持ち上がりで、クラス替えはない。

相変わらず、私達のグループへの嫌がらせはなくならないまま、他にも、男子で仲が良すぎて「ホモ」と言われる子もいたけど、その子たちは冗談で言ってると思っていたらしく、普通に言ってた子達ともふざけ合っていた。


でも、修学旅行の時に、私はまた最悪なきっかけを作ってしまった。


元々自律神経の乱れやすい私は、付き添いの保険医と一緒に行動していたけど、「友達と一緒にいたい」という思いから、いつものメンバーC晶とM穂と一緒にいた。

自由行動は普段の教室での席順でのグループ分けだったため、C晶と一緒のグループになり、いつも一緒にいる感じになっていた。

自由行動の日、本当は各個人前日に無料で乗れるバスカードを渡されていたが、C晶が当日に紛失してしまい、バス移動の際その都度料金を払ったりして時間がかかってしまい、同じグループの人に迷惑がかけてしまった。

私はC晶の側にいて待ってたけど、他の子は先に入り口の方へ行ったりして、グループ内はバラバラだった。

そんなコトもあって、自由行動が終わってホテルに戻ったとき、みんなの体調確認で、私だけ、「頭が痛い」と申し出て、また少し休むことになった。


夕食の時、各自自由に席を選べるが、遅くなった私達がみんな一緒に座れる場所は残っていなくて、空いてる席をさがしてたときだった。

私が最期まで残ってしまって、もう一つ空いてる席がないか探してたとき、例のN之が待ちくたびれたらしく「もういいからさっさと食おうぜ」と言い出した。

流石に先生が一喝してくれて、その後一緒に空いてる席を探してくれて、無事にみんなが席に着いた所で、食事が始まったけど。

みんなに迷惑をかけたこと、余計な時間を取らせてしまったことで、あまり食欲が出なかった。


そして修学旅行が終わって、夏休みに入る前。

例の言葉を言われた―――。


その日は普段と変わらず、みんなと一緒に放課後集まって話をしていたとき。

C晶がふと私に声を掛けてきて、こういった。


「用がないなら、もう付いてこないで」


一瞬、何を言われたのか分からなくて、黙り込んでしまった。

そんな私を見て、周りにいた子もみんなが黙り込んでしまって、気まずい雰囲気になった。

結局そのまま、何も言えずにいた私に、「それだけ言いたかったから、じゃあね。バイバイ」と言い、みんなが帰っていった。

突然のことに頭が真っ白のなってしまって、気付けば教室に私だけ残されていた。


そして、その意味がちゃんと理解できたのは翌日になってからだった。

「おはよう」といつもの様に挨拶をしても、返事はしてくれたけど、顔を背けられた。

そして休み時間、いつもなら3人で集まるが、C晶はM穂の方へ向いたきり、私のことを無視していた。

そんな感じが続いて、流石にクラスメイトも疑問に思ったらしく、こそこそと噂していた。

「ケンカでもしたのかな?」

なんて声が聞こえたから、でも、私自身、ケンカした覚えもないし、昨日言われたことしか心当たりがなかった。

いつも一緒にいたはずなのに、C晶にとっては迷惑だったのかもしれない。


後々考えて、丁度小学校の時、S佳が纏わり付いてくる様な感じだったのを思いだして、もしかして、私も同じ事をしていたのかもしれないと気付いた。

でもそれも、文化祭の時に、他のクラスの友達のA子に言われて知ったことだった。

「はっきり自分の意見言わないし、真似事ばかりしてるから、みんな嫌になったんじゃない?」って。

そう言われて、確かに、いつもC晶やM穂のやることや考えをまねることが多く自分の意見をはっきりと主張しなかったことがあった。

そう、これは自分が蒔いた種だったんだって、思い知らされた。


それ以来、休み時間はずっと、一人で過ごしていた。

時々、図書室から本を借りて来て読んでいたりしていた。

その時、ある本に出逢った。


それは、青木和雄さんの児童書「ハッピーバースデー命輝く瞬間とき」だった。

最初に読んだとき、その内容に苦しくて、一度直ぐに読むのを辞めたけど、どうしてこんな本があるのか、それに、ラストが凄く気になって、また借りて読んだ。

今度最後まで読めた。

そして、読み終わったとき、思わず感動して涙ぐんでしまった。

その後も、何度も何度もその本を借りては読んで、凄く好きになっていった。


この頃には、本の中の世界が、自分の居場所になっていた。

だから一番長い昼休みはずっと、図書室に籠もってばかりいた。

それしか、自分の居場所を見つけられなかった。


居場所が、なかった。


夏休みが終わって、体育祭も終わった。

秋になり、文化祭への作品作りをしているときに、私は全ての物を完成できずにいた。

いろいろなことがあって、創作意欲がなくなっていたのもあったけど、それ以外にも理由はあった。

相変わらず、クラス内のイジメは続いていた。


技術の時間、パソコンで時計の文字盤の絵を作ることになった。

パソコンは台数が少なくて、二人で1台使うことになっていた。

丁度私の相方はC晶。

でも、この時C晶はM穂の所に行っていて、私が一人で使っていた。

そんなとき、男子の一部がふざけて、パソコンのコンセットを抜いて強制的に終了させるという遊びをしていた。

もちろん、保存していない物はダメになり、一から作り直さなきゃいけなかったから、やられて人は怒ってたけど。

そして、ある程度予想はしていた。

私が、パソコンに向かっていると、いきなり画面が真っ暗になり、強制終了させられた。

直前に、「って事は、これだろ?」という声が聞こえたから、もしかしてと思ったけど、予感的中。

私の使っているパソコンのコンセントを遊びの中心になっていたN之が抜いたのだった。


一瞬むかついたけど、反論して何か言えば余計に面白がられると分かっていたら、何も反応を返さなかった。

丁度その頃先生が席を外していたので、注意する物が他にいなかったのもあった。

だから、先生が戻ってくるまで、そのまま肘をついて待っていた。

でも、先生は直ぐに戻ってこなくて、女子が「可哀想だよ」と言っている声が聞こえて。

その後、その声の女子が私の所に来て、「ごめんね」と言い、電源を入れてくれた。

こんな事があって、結局私はその時計の文字盤を完成させることは出来なかった、、、否しなかったといった方が正しいのかもしれない。


でも、他の作品はちゃんと作っていた。

特に、風景画は。


美術に時間に、自分の好きな風景の写真を持ってきて、それを描写することになっていたが、私は地元の森林公園の一部を写した写真を描いていた。

そして色塗りをしているときに、美術の先生が私の絵を見て、「ちょっと貸してほしい」と言ってきた。

そして同じように別の子にもその絵を借りて、生徒全員にこう言った。


「これから美術にとって重要な話をします。

それは色を塗る際の描法についてです。

まずこちらを見てください」


そう言って掲げられたのは、別の子が描いていた絵だった。


「この絵は色がはっきりと付いています。

皆さんが以前に使っていた、アクリラガッシュでの塗り方ですね。

一般的に、これは不透明描写といって、色をはっきりと塗って、日膣一つの色が強調されています。

とても綺麗に塗れています。

そして、もう一枚の絵ですが、、、」


持ち替えられて、私の絵が掲げられた。


「こちらは、全体的に色が薄く塗られています。

先ほどの絵に比べて、色の付き方が薄いですが、透明感のある色ですね。

これは透明描法といって、全体的に色が淡く塗られていて、透明感のある色使いが特徴の描き方です。

これは水彩絵の具特有の塗り方です。

これもとても綺麗に塗れています」


そして2枚の絵を両手で持ち、こう付け加えた。


「どちらも、特徴のある色の塗り方をしています。

皆さんの絵を見ると、大体が不透明描法の絵が多いですが、こういう透明描法の描き方もあることを、覚えておいてください」


そう言うと、先生は手に持った絵をそれぞれに返し、「では作業を続けてください」と言い、みんなが自分麻植を再び塗り始めていく。


暫くして、女子の数人が私の方へ来て、私の絵を見て言った。

「凄く綺麗なだね。どうやったら、こんな風に塗れるの?」

と、聞いてきた。

「水を少し多めにして、色を薄く塗っていくの、透き通る感じは、ティッシュで水分を拭き取ると透明感が出るよ」

と、実際にそうしながら説明すると、「すごい」「上手」と言ってくれて、ちょっとだけ嬉しかった。

美術部に入っていたので、こういう使い方は知っていた。

基本的に、風景画専門で描いていたこともあって、そのほとんどが透明描法で描いていた。


結局、時間が足りなくて、一部だけ塗り残しがあるまま展示されたけど、唯一、中学3年の文化祭で完成に近い作品はこれだけだった。

他にも、本棚やオルゴール、粘土で作った顔の彫刻、アルバムの表紙などもあったけど、ほとんどが中途半端なままだった。

もちろん、それらは展示されることはなかったけど。


そして冬休み直前、いよいよ受験に向けての体制が濃くなっていったのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ