小学生高学年
再びクラス替えで今まで一緒だった子達と完全に離れた。
何名かは同じクラスになったが、あまり仲良くはなく、最初私は一人でいた。
けど、気軽いに声を掛けてくれる子達がいて、気付けばその子達と一緒にいる様になった。
仲良くなったのはS佳、T子、M穂。
そして、その3人の友達で、他のクラスのS美とH美とも仲良くなっていった。
休み時間になるといつもこの5人と一緒に遊んだりおしゃべりしたり。
始めて出来た友達だった。
でもひとつだけ、受け入れられないことがあった。
それはS佳のこと。
小さい頃に左上腕をアイロンで大やけどして爛れてしまって、痕が残ってしまったS佳は、体育で着替える時にその痕を隠す様にしていた。
クラスの他の子は、気にしていたがそれほど騒ぐほどでもなかったが、どこか哀れんだ目をしたり、興味深そうにチラチラ見てくる子達もいた。
それがどうしても気に入らなくて、自然と私は着替えの時にS佳を庇う様な行動をしていた。
でもS佳は「そんなことしなくても大丈夫だよ」と言って、全然気にしてない感じでだった。
どうしてこんな風に笑って言えるのか、私にはS佳が凄いなと思う反面、少しだけ羨ましいとも思っていた。
そんな複雑な思いで、他の子達とも一緒にいるS佳を見ていて、次第に私の中でいろんな感情が芽生え始めていた。
そんなとき、クラスのレクリエーションでバスケをしていたときのこと。
チームわけをして対戦相手になったチームにS佳がいた。
私がボールをもらって、コート内を動いていたらS佳がディフェンスをしてきた。
この時はごく当たり前のことと思い、普通にそのまま続けていたけど…。
何度かボールが私の所へまわってくる度、S佳は私をマークしてばかりいた。
私がボールを持っていないときにも関わらずに。
最初はカットしようと必死なのかなとも思っていたけど、同じチームになった運動神経の良いT子をマークせずに、私の方に付きまとう様にマークしてきた。
流石にこの時には(え………?)って思ったけど、後半に入る前の休憩時にT子にそのことをさりげなく言ったら、「気にしすぎじゃ無い?」と言われて、そうなのかとも思った。
でも、後半に入ってからもS佳は相変わらず私ばかりマークしてきた。
同じチームの子から言われたのかもしれないけど。でも、T子には誰もマークしてない。
この時にやっぱりおかしいと思って、心の中で何かが燻り始めていた。
運悪く、この時同じクラスになったA美がいた。
A美とは嫌煙していたけど、5年になってまた同じクラスになったこともあって、気をつけてはいたけど。
やっぱり見抜かれていたみたいだった。
「S佳のこと、気に入らないんでしょ?」
A美にそう言われて、最初は否定してたけど、レクリエーションでのことを吹き替えされて、「あれってマジであんたのこと完全に付きまとってたよね。おかしいと思わなかったの?」と言われて、心が揺らいだ。
確かにあの時私は、自分が付きまとわれていると思った。
でも、気のせいかもしれないとも思って、気にしない様にはしていたのに。
「じゃあ、はっきりさせれば良いじゃん」
そう言ってA美はまた悪知恵を働かせて、結果的に最悪な事態に発展してしまった。
それは直接言わずに相手を突き放す、悪口を書いた手紙をS佳に渡すことだった。
昼休み、A美が皆を集会室に集めてプリント用紙の裏側の白紙を使って、S佳の気に入らないところを書きだしてと言った。
皆最初は疑問に思いながらも、少しだけ思うところがあるのか、少しずついろいろと書きだしていった。
それを集めたA美は、自分が用意した封筒にそれを入れて、私に差し出してきた。
「放課後、誰もいなくなってから、S佳の机に入れなよ」
私はその封筒を受け取れずにいると、「また付きまとわれても良いの?」と言われて、無理矢理押しつけられて、結局放課後になってしまった。
A美以外のクラスメイトが全員帰ると、監視してるとでも言う様に、A美は教室のドアの外を確認して、「入れろ」と合図してきた。
結局断り切れずに、S佳の机に、悪口を書いた手紙を入れてしまったのだった。
翌朝、登校してくると既にS佳が登校していたが、泣きながら教室を出て行った。
その手にはあの手紙が握られていて、私は酷く、後悔した。
だけど、心のどこかで、安心した気持ちもあった。
その後、学活の時間に担任の先生が手紙を書いた子達を一人ずつ連れ出していって、何かを話していた。
私は最後に呼び出されて、別の空き教室へ連れて行かれると。先生の手元に例の手紙があった。
それを見て、私は流石にまずいと思った。
「皆から話を聞くと、君がこの手紙をS佳ちゃんの机に入れたと言っていたけど、それは本当?」
「………」
私は怖くなって何も言えないでいると、先生は溜息をつきながら手紙を見て、「こんなこと書いて、S佳ちゃんがどれだけ傷付いたか、分らなくも無いでしょう?どうしてこんなことをしたの?」と質問攻めをしてきた。
確かに手紙を入れたのは私。
でも、それをしようと最初に言ってきたのはきたのはA美で、そう言おうとしても、言い訳としか受け入れられないと思って、何も言えなかった。
「皆はあなたがこう書けって言うから、仕方なく書いたって言ってるけど、そんなにS佳ちゃんのことが嫌いなの?」
そう言われたとき、え?って思った。
違う、それは全てA美が言ったこと。
でも、それを上手く説明できずにいた。
私はそんなこと、一言も言っていない。
そう思っていても、先生にはどう言えば良いのか分らずに、同時に、A美からまた、S佳への嫌悪感を、皆の気持ちを利用して私に全ての責任を押しつけられた、皆に裏切られたと思って泣いてしまった。
その後、先生は私が泣き止むのを待ってから、「解る範囲で良いから、誰がどの言葉を書いたか教えてくれる?」「理由があって、こんなことをしたのかもしれないけど、S佳ちゃんはすごく傷付いたのだから、それは忘れないでね」「もう二度と、こんなことしちゃダメだよ」と約束して、私は教室へ戻された。
その次の授業はプールの時間だったが、私は一人教室に残ってメモ用紙を書いていた。
泣いて上手く話が出来なかった私に、先生が「理由はこの用紙に書きなさい」と言って渡されたものだった。
その中で、「家庭に連絡しても良いか?」という問いに「家に入れて貰えなくなるから、絶対に言わないでほしいと書いた。
A美と一緒のクラスになっていたことで、祖父がまた機嫌を悪くしていて、何か問題があるとまた怒ることが多々あり、私はまた暴力を振るわれるのがこわくて、絶対に知られたくないと思っていた。
その後、S佳に謝り、S佳もそれを受け入れてくれて、私達は仲直りし、また一緒に遊ぶ様になっていた。
そしてこの頃、NHKの自動画廊が私の学校の生徒が描いた絵を紹介していたことがあった。
当時、各学年から男女一人ずつ選考されて、自分の作品を発表することになっていた。
5年生でコンクールに受賞したのが男子1名女子2名いて、男子はその子に決まった。
女子は私と、同じクラスのH美が受賞したけど、どちらが発表するかは、先生が決めるとのことで、私は密かに期待していた。
でも、結局選ばれたのはH美の方だった。
私は残念に思いながらも仕方がないと思っていたけど放送日当日、H美が発表する場面を見て、家族も「もしかしたら、おまえがここに出ていたかもしれないね」と言って残念がっていた。
翌日、登校したら、皆がその話題になっていて、H美の周りで皆が「良かったよ」と褒めていた。
私もH美に「良かったね」と言いに行こうとしたら、H美の方から私に声を掛けてきた。
「残念だったね、でも、あなたは口下手だから、あんな風にはっきりと発表できないもんね」
と、笑いながら言って去って行った。
そう言われて、私この時初めて「悔しい」と思った。
確かに私は口下手で、声も小さくて、あんな風にはきはきと発表なんて出来なかったと思う。
でも。
そんな風にはっきりと言ってこなくたって、わかってるのに。
悔しく悔しくて、私は思わず、自分の作品を見て、「こんなモノじゃ足りない!」とその作品を破ってしまった。
それ以来、作品を作っては気に入らないモノはそのまま放棄させたり、壊したりする様になっていったのだった。
だから、今残ってるモノは全て、未完成の絵ばかりで、そのほとんどが破れていたり、ぐしゃぐしゃに塗りつぶしたりしていたモノだった。
完成させたモノはひとつも無く、この頃から、何かに対して諦めることばかりしていた様な気がした。
そして今思えば、S佳へ嫌がらせの復讐だったのかもしれない。
最初は何も気づけなかった。
ただふざけてるだけなのかとも思ってた。
元々大人しくて無口、嫌とはっきり言えない性格な私を、皆が知っていた。
それが私の一番の弱点でもあって。
気づいたときには、もう手遅れだった。
最初はいつもの様にふざけてるのかと思っていた。
ただ、物がなくなったりすることが多くなっただけで。
気付いたのは、T子が私のシャープペンの芯のケースを持っていたことだった。
T子は「自分で買った物」だと言っていたが、明らかに私が貼ったシールがあり、それが以前なくしたものだったこともあって、この時にやっと盗まれたんだと知った。
他にも、交換日記をしていたのに、私の番をわざと飛ばされたり、全部終わった頃になってやっとまわってきたりしていた。
その中には、遠回しに私への悪口が書かれたものもあった。
流石におかしいと思い始めて、皆のことが疑心暗鬼になっていた。
ちょうど、この頃、体調不良も続いていて、しょっちゅう学校を早退したり欠席したりもしていた。
そんなときに、事件は起きた。
ちょうど2時間続けての図工の時間、工作室で作業をしていたとき、先生が用事で教室から出て行き、男子達がふざけてベランダで遊んでいた。
そのまま休憩時間になり、男子達の遊びがエスカレートしていって、一人をベランダに残して鍵を掛けるという遊びになっていった。
この時、私達もベランダで別の遊びをしていたが巻き込まれて、一緒に閉め出されていたけど、そのことに気付いた他のクラスメイトが男子達を注意して、私達は中に入ることが出来た。
でも、、、。
なぜか私だけ、そのままベランダに残されて、閉め出されてしまった。
気付くのが遅れて、一番最後に入ろうとした直前に、ドアを閉められて、そのまま鍵も掛けられてしまったのだ。
先生は来客があったこともあって、暫く戻って来ない。
一人閉め出された私を見て、クラスの誰もが笑いながら見ていた。
「どうして…?」
そう思い、一緒にいた皆の方を見ると、他のこと一緒になって笑っていた。
でも、T子だけは笑わずに、複雑な顔で見ていた。
私は必死で、「入れて!」と叫ぶが聞いて貰えず、そのまま次ぎに授業の始まるチャイムが鳴っても、誰も助けてはくれなかった。
結局、先生が戻ってくるまで、私は中には入れず、また泣いていた。
先生が戻ってきて、ベランダに閉め出されて泣いてる私を見て、何があったのかを皆に聞いて、やっと中に入れてもらったけれど、先生は私の泣き顔を見て、「保健室で休むか?」とか聞かれたけど、私は大丈夫と言って、そのまま授業に戻っていった。
でもこれがきっかけで、皆に対しての疑心暗鬼がさらに募っていって、誰も信じられなくなり、次第に不登校になっていった。
この頃から、自分の居場所を求める様になって、空想の世界に浸る様になり、そこで自分の今所を探していた。
そして小学校を卒業し、中学生になったのだった。