小学生中学年
小学3年、クラス替えがあり、その時にC香と一緒のクラスになった。
私には幼馴染というか、近所で唯一同世代の女子がC香とK美の二人しかいなくて、Kちゃんとは仲良く遊んだりしてましたが、正直C香とはあまり気が合わなくて一緒に遊ぶことは少なかった。
でも、同じクラスになったので、その時はC香と一緒にいるようにしてましたが、冬休み明けのある時に、また事は起きた。
私達の地区では、三学期の授業で、自分でオリジナルの凧を作って、上げるということをした。
その日はくもりでしたが、少し風があり、凧を上げるにはちょうどいい日。
みんなが思い思いに自分で作った凧を上げて遊んでいた。
私も他の人の邪魔にならない所で凧を上げて、遊んでいた。
しかし、一瞬だけ強い風が吹いて、数名の凧糸が絡み合い、地面に落ちてしまうことがあった。
私もちゃんと周りをよく見ていなかったのか、すぐ横にC香が凧を上げていたことに気付かず、強い風が吹いた時に二人の凧糸が絡み合い、地面に落ちた。
最初は自分達でなんとか絡まった糸を解こうとしたがかなり複雑に絡んでいて、自分達では解けないと判断し、担任の先生に頼んだ。
その時に、私はC香に、糸絡んでごめんね、と謝った。
C香は何も言わず、解いてもらった凧を持って、そのまま立ち去って行った。
それからまた少し凧を上げて遊び、授業が終わると同時に皆が教室へと帰って行った。
そして私が教室へ入ると何故か数人の女子が集まっていて、そのうちの数人が私に気付くとこう言った。
「糸絡めておいて、謝らないなんて最低!」
私は一瞬、何の事か分からずに、呆然としましたが、集まった女子の中にC香の姿があった。
でも、C香は何故か涙ぐんでいて、私を睨んでいた。
「C香ちゃん、あれから凧が上がらなくて、泣いてるんだよ?なんで謝らないの?!」
そう言われてやっと状況が分かり、でも何かがおかしいと思った。
あの時、先生に糸を解いてもらった時に、私はC香にちゃんと謝った。
C香は何も返事をしなかったけど、ちゃんと聞いていたはず。
だから私はそれを伝えましたが、数人の女子はまだ怒っていた。
嘘を付いている。
そう思われたのだ。
私は何度も「ちゃんと謝った、先生にも確認してよ」と言っても相手にしてくれず、C香はその間ずっと泣いていて、周りの子たちが慰めながら私のことを睨み暴言を吐いていた。
結局先生に確認しても、糸を解くのに集中していて、謝っていたかは覚えていないと言われて、私はまた孤立した。
しかし4年の時に、転校生が来て、再びクラス替えがあったので、C香とはまた別のクラスになり、少しだけホッとした。
後日、K美からC香が気に入らないことは全部相手のせいにする事がよくあると聞き、やっぱりあの時はC香が嘘を吐き、クラスの女子を騙したのだと知り、すごく悲しかった。
いつから好きになったのかなんて、覚えてない。
ただ、気付くといつも目で追っていた。
同じクラスのH明。
やんちゃで明るくてスポーツ好き。
ちょうど通学路になっていた通りに、彼の家があり、いつも前を通る時はなんとなく、いろんな感情があった。
ある日の帰り道、同じ地区のクラスメイトと一緒に帰ってると、H明が家の前で何かをしていたのに気付いた。
よく見ると子猫が1匹いて、H明は小皿に入れた牛乳をその子猫に飲ませていた。
皆がそれを見て話しかけると、H明の親は動物を書くことを赦してくれないとのことで、仕方なく外飼いにして、ご飯をあげてるだけだという。
その話を聞き、私は少し考えてから、ちょうど私の家で猫を狩っていたけど、数日前に事故で死んでしまったので、代わりに飼おうか?と提案し、子猫を引き取った。
でもそれから暫くして、子猫が私達の家族になれ始めた頃だった。
給食の時間。
学校の食堂で全校生徒が自分たちの席に座って食事している時のこと。
ちょうど私の斜め前にH明が座っていて、その隣に座っていたH明の友達と二人が会話していた。
「そう言えばあの猫、最近どう?」
するとH明が突然私に話しかけてきて、猫の様子を聞いてきた。
「…元気だよ、家族皆にも懐いてきてる」
そう答えると、「そっか」とだけ返し、また友達との会話に戻っていった。
最初はビックリして恥ずかしかったけど、話が出来たことが嬉しくて、ちょっとだけそわそわしてしまっていた。
それを見ていた隣の子が小声で、「良かったね、話が出来て」と声を掛けてきた。
でも次の日、登校した私は教室に入った瞬間凍り付いた。
いつもだったらすれ違うクラスメイトが挨拶してくれていたが、その日は誰も挨拶をしてくれずなぜか薄ら笑いを浮かべていた。
そしてH明が登校してくると待機していたかの様にクラスの男子達がH明に押し寄せて、何かを話していた。
そして複雑な顔を浮かべながら、私の方へやってきて、こんなことを聞いてくる。
「お前さ、俺が好きで猫引き取ったってホント?」
一瞬、え?!って思い、すぐに返事できなかったけど、しどろもどろになりながら「半分違うけど、半分はあってる…」と答えた。
H明を好きなことは本当。
でもそれが理由で子猫を引き取ったわけではない。
だけど、H明はそれが気に入らなかったらしく、急に態度を変えて叫んだ。
「うわっ腐る!!」
H明がそう叫ぶと、周りで聞いていた男子達が一斉に大笑いして、口を揃えていった。
「メガネブスのくせに、男なんか好きになんなよ!」
「笑える」
それを聞いていたクラスメイト達も、小さく笑いながら私を見ていた。
ちょうどこの頃から視力が落ちてメガネをかけ始めたのだが、度がかなりあって分厚いレンズだった為、男子達からは格好の標的にされていたのだった。
それ以来、H明は私が傍を通っただけで「近寄んな」「腐れ」「ブス、死ね」と暴言を吐いていた。
元々友達も少なく、信用できる人もいなかったので、本音を言うことはあまりなかったけど、自分がH明を好きなことを知っていた女子の誰かが、男子達に隠れて言っていたらしい。
このことがきっかけで、私は教室に居辛くなり、学校を休みがちになっていった。
親からは昔から体が弱かったもあって、「体調が悪い」と言えば、何も言わずに普通に返事をして「じゃあ学校に休みの連絡をする」とあっけなく対応されて、大人なんか信用できないとも思っていた。
そして私は少しずつ不登校になっていった。