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100枚がくれた道

作者: チミー

目に留めていただき有り難うございます。


短いのでどうぞ読んでみてくださいね♪

暗い路地をひっそり徒歩を進める少女がいた。

彼女の名前はここあ。

教会から聖歌が聞こえてきた。

「羽ばたこう。勇気を持って明日を信じて。」

「明日があるかも分からないのに、明日を信じることなんてできないよ。」

ここあは呟く。

教会の明かりが彼女を照らす。

片方だけ三つ編みをした黒色の髪に赤いピン留めをしている。

白いパーカーを着ている。

普通の少女だ。

と言われても気づかない。

耳に付けている金色の丸いピアスだけが彼女が不良だと言うことを表していた。

その姿は1年前の彼女からは考えられない姿だった。

ここあは元気で陽気な少女であった。

中学生になって、1っヶ月でクラス全員と友達になるほどである。

そんなここあを信頼して先生たちは色々なことを頼んだ。

それを快く思わない先生たちはここあを手を挙げても、必ず他の人を指した。

先生たちのいじめはやる人も内容も広がっていった。

ついにここあはひねくれてしまった。

耳にピアスの穴を開け、鋭いナイフのような言葉を使うようになった。

そして今も、実は不良として散歩しているのであった。


カシャカシャカシャカシャ。

自転車の音が近づいてくる。

(ここあ)はできるだけうつむいて、早く自転車が通り過ぎるのを待つ。

キキッキー。

と言う音がして思わず立ち止まる。

「家はどこ?」

いきなり話しかけられて思わず顔をあげる。

そこには若い男性がいた。

自転車にまたがっている彼は、緑色のジャージを着ている。

男性というよりはお兄さんや、若いお父さんのような雰囲気だ。

お兄ちゃん…。

ふいに鼻の奥がツーンと痛くなって、目の奥が熱くなる。

「お、おいどうした。」

いきなり泣きそうになった私を見て男性はあたふたとハンカチは探している。

そして。

彼は一枚のハンカチを差し出してくれた。

その一枚のハンカチには女の子の絵が書いてあった。

自分と同じぐらいの背の高さのひまわりに囲まれて、女の子が笑っている。

その女の子も一輪のひまわりのようだ。

壮大な畑の上にある水色の空にぽっかりと浮かんでいる真っ白な雲や、森の奥深くにあるすがすがしい空気を満喫できる気持ち良い森林や、エメラルドグリーンの海なのど世界にある美しい自然をまとめて、希望を生み出すような、そんな絵だった。

ま、こんな説明じゃ伝わりませんと。

それぐらい素敵な絵だった。

何故か男性を睨んでみる。

私が睨んでいるのに気づいて、何故か男性はハハッと笑う。

「家に連れてってやるよ。」

「ない。」

満点の星空の下で、彼は再度ほがらかに笑った。

「なら、うちに来い。」

そう言って自転車に乗せてくれたのだった。

いきなりの展開に、私は混乱した。

だが、満月は大きく、キラキラと輝いていた。

その周りで星たちも一つずつが綺麗な光を放ってキラキラと輝いている。

「綺麗だなあ、月。なあ、人っていうのはな、一つずつがあの星たちみたいにキラキラと輝いているんだぜ。」

男性が星を指差して言う。

川が流れている。

私達は橋を渡った。

川もキラキラと輝いている。

魚が飛び跳ねて、鱗もキラキラと輝いている。

振り向くと、夜景。

そこには人々の営みを支えている色とりどりの光たちがキラキラと輝いていた。

「星って、数え切れないほどあるんだ。」

私はそのことを初めて知った。

月、星、川、魚、そして夜景。

全部、無数の星だった。


やがてたどり着いたのはこじんまりとした小さな家だった。

白い壁に、屋根は茶色いレンガで出来ていた可愛らしい家だ。

家の中に入って私は驚いた。

絵がいっぱい飾ってあったのだ。

どれも、楽しそうな絵だった。

「ここの家で暮らすんだったら、奥の部屋を使うといいぜ。」

男性が奥にあるドアを指さす。

本当に私はここで暮らしていもいいのだろうか。

私の秘密。

守り切れるだろうか。

ううん。守らなくちゃいけない。

もう二度とこのことで誰かに迷惑をかけてはいけない。

「あんたがそうしろっていうなら、そうするけど。」

自分で思ったよりも低い声が出た。

「いい度胸してんなあお前。」

不思議な男性はそう言ってははと笑った。

「おっと忘れてた。これを渡しておかないとな。」

男性が渡した白い紙受け取る。

そこには、

「美術大学教授 渡辺るい」

と書かれていた。


その日から私はるいさんのお家で暮らさせてもらうことになった。

次の日。

「よし。魚釣りに行くか。」

「は?」

あなたは何を言っているんだろうという思いでるいさんの顔を見る。

「美術大学の教授はいいのかよ。」

やはり、思ったよりも鋭い言葉が出てしまう。

「今、夏休みだぜ。」

やはり、学校に行っていないと分からないことばかりである。

だけど魚釣りは楽しかった。

うろこが綺麗に光る大きな魚も私が釣ることができた。

るいさんと協力して大きな魚を釣ったのはとても楽しいことだった。

そして、その夜。

るいさんの家に帰ってきてまたるいさんの絵を眺める。

「私、今日楽しかった。」

私がるいさんの絵を見て思ったこと。それは、


「私、るいさんの絵みたいな絵を描きたい。」


るいさんは頷いた。

るいさんは絵を描くのと同じぐらい絵の書き方を教えるのが上手だった。

出来上がった絵の中で、私とるいさんが大きな魚を釣り上げて笑っていた。

とても楽しそうに。


それから毎日のようにるいさんは自転車でいろいろなところへ連れて行ってくれた。

流しそうめんができる店、スイカ割りができる店、遊園地。どこも楽しい所だった。

そして夏休み最後の日。

私は花火を見に行った。

るいさんの家の近くの公園でやっている毎年恒例の有名な花火大会「如月花火大会」だ。

シューッパーン。

最後に大きな花火が上がった。

花火の端っこまでキラキラとしていてとても綺麗だった。


1年後のある日。

るいさんが私に聞いてきた。

「家がないってどういうことか?」

その質問は私の胸にグサリと突き刺さる。

忘れようと蓋を閉じていた思い出が溢れ出る。

思い出に沿って私は話しはじめた。


私の父親は私が小さかった頃に行方不明になってしまった。

だからその分、母親が頑張って働いてくれて、お兄ちゃんと一緒に私を可愛がってくれた。

だけど私が中学生になった時に元々体が弱かった母親は頑張りすぎて病気で亡くなってしまった。

泣きじゃくっている私をお兄ちゃんだけが慰めてくれた。

私が中学2年生の時に、お兄ちゃんは大学生で寮暮らしになっちゃって。

それまで私たちを助けてくれていた親戚のおじさんとおばさんの家で私は暮らすことになったんだけど、そこにいるのがなんだか辛くて。

家を飛び出した時に。

出会ったのがるいさんだった。


ごくん。

私の話を聞き終えてからるいさんは唾を飲んだ。

「いいか、落ち着いて聞けよ。」

ルイさんが真剣な顔をして私に言う


「お前の父親は、犯罪者だ。」


どきん。

と、私の胸が飛び跳ねた。

いつか見た記事が脳裏に映し出される。


「野村容疑者(24)が、殺人未遂で逮捕されました。」


あの記事は私がまだ6歳の時に母親とお兄ちゃんが読んでいたものだ。

母親とお兄ちゃんがあまりにも真剣な顔で読んでいたから、つい気になって読んじゃったんだ。

それが父だったんだ。

その日は衝撃が私の体をつらい抜いた1日だった。


それから5年後。

私はるいさんの家の壁にかけられた絵を見ていた。

すでに私の絵は100枚以上ある。

全て楽しそうな絵だ。

これらは私の宝物だ。

私は手で持っている白い紙に目を落とした。

「美術大学推奨 ここあ様」

これは、私の宝物。

私の宝物はいっぱいある。

私はるいさんから色々な宝物をもらった。

紅葉の栞。

そう、あれもそうだー。


私に会う前の秋。

一人で散歩していたるいさんは一枚の紅葉の葉っぱを拾った。

その紅葉は赤、オレンジ、黄色の鮮やかなグラデーションになっていたんだって。


その紅葉はるいさんが栞にして気に入っていたんだけどくれたんだ。

大学推薦の手紙が来た時はっびくりした。

でもね、るいさんがせっかく推薦してくれたんだから。

私は、前へ進みたい。


大学に入学する日。

髪をボブカットにして、前髪をハート型のピンで止めて。

イメチェンをした。

「ここあ、すごく似合ってるぞ。」

るいさんはそうやって褒めてくれた。

「行ってきます!」

私はガチャンとドアを開ける。

外に出た瞬間桜が舞った。


大人っぽい可愛らしい女性が桜の舞う道を歩いてる。

女性のほおには笑顔。

6年前の彼女からは考えられないような姿だった。

彼女は歩いて行く。

大人になるための道を。

彼女は前をまっすぐ見て歩いて行く。

明るい、桜が舞う道を。

読んでいただき有り難うございました。

チミーは何作か作っていますので読んでみてください。

コメントと評価待っています♪


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