44話【真実の追求】後編
走り疲れた足で、フラフラと裏通りへと向かう。そこには森山が跨る事で、地面に押さえつけられている半田の姿があった。
彼もかなり疲れていたのだろう。息は上がり、森山に抑えられようと暴れたりしなかった。その一方で、森山は汗一つ流さず涼しい顔をしている。あまりの有能ぶりに、斎藤は思わず笑ってしまう。
斎藤
「森山…お前…すげぇよ」
彼女はメガネをクイッと上げて、こう答えのであった。
森山
「小中高、陸上部でしたから」
小嶋
「はひぃ〜…やっと追いついた…」
後から息を切らしながらフラフラと小嶋もやってくる。
斎藤はズカズカと押し倒されている半田の元まで歩いて向かう。跨っていた森山が避けると半田の胸ぐらを掴んで無理矢理体を起こし上げ、勢いよく壁に押し付けた。彼は半田に顔を近付けて圧をかける。
斎藤
「そこの馬鹿にどう聞かれたかはわからんが、知ってる事全部吐いてもらうからな…!」
半田
「ッ!ま、待て!待ってくれ!!落ち着けよ!!」
半田は必死に両手をアワアワと動かして弁明する。
半田
「お、俺はそこのガキから身に覚えもない事を聞かれてパニックになっただけなんだ!スタコレの事故の事も!500万円の口止め料も!何のことかわからねぇ!」
小嶋
「惚けても無駄ですよ!逃げるって事は認めてるって訳でしょ!?」
怒りを露わにして半田に詰め寄り、小嶋も斎藤の隣に立つ。
半田
「だからパニックになったんだって言ってるだろ!?そもそも、俺がやった証拠なんてあるのかよ!?」
小嶋
「丸印建設の作業員から聴いたって言ったじゃないですか!」
半田
「そんなもん口で言うなら誰にだって出来るだろうが!証言した奴の声!そいつの名前と年齢!それぐらいは用意しなきゃ話にならねえよ!」
小嶋
「ッ…そ、それは…」
あの時、二人は男から【愚痴話】として聞いてきただけに証拠を残す行為を怠っていた。確かに半田が言うように【⚪︎⚪︎から聞いた】だけでは、問い詰めるのに不十分すぎて欠けてしまう。オドオドとする小嶋の様子に、半田はシメたと思ってニヤつく。
半田
「な?な?そうだろ?テメーらが今やってるのは善良な一般人に脅しをしているんだぞ?それにその女に押し倒されたせいで、服も汚れたし、さっきから擦り傷も痛くて堪らねえんだ!暴行罪で警察に言ってもいいんだぞ!?早くこの手を…!!」
斎藤
「……」
吠える半田に、斎藤は彼を睨め付けたまま無言のまま、片手でポケットからスマホを取り出して再生ボタンを押す。
••••••
『本部は俺達を見捨てた。だが、現場の奴らは誰も本部に訴えなかったんだ』
『…それは何故です?』
『現場監督から【口止め料】を渡されたからな』
『口止め料…?』
『一人100万相当の口止め料だ。現場を担当していたのは5人、つまり500万円が用意されたんだ。『どうかこれを受け取って、今回の件を流してほしい』なんて言ってよ。…やべえ奴だろ?』
『口止め料を払った現場監督は今何処に?』
『責任は自分にあるとか何とか言って4月に退職したよ。今何処で何してるかもわからんが…あいつの事は思い出したくも無いカス野郎だ』
『現場監督の名前を聞かせていただいてもいいですか?後…出来れば年齢や特徴も教えていただければ…』
『【半田 正広】年齢は確か…48歳だったかな?常につまんねえ顔して休みの日はパチ屋に足を運ぶ馬鹿だったよ。飲みに誘っても断るノリの悪い奴さ。その癖、パチスロで無くなった金を、前借りしてるのもよく見かけたよ』
••••••
半田
「…!」
耳元で流された録音の声に半田は青褪める。この反応、声の主が誰なのかをこの男は知っている。斎藤の反撃はまだ続く。
斎藤
「森山。あの情報を」
森山
「はい」
斎藤の指示に応え、森山は内ポケットから取り出したメモ帳を開いて読み上げる。
森山
「今証言されたお方は遠野 鉄雄さん。貴方と20年以上一緒に仕事をしてきた仲間だったそうですね?今回の事故の口止め料の提案をするまでは、貴方を先輩として慕っていた…この声も、この名前も、貴方がご存知のお方で間違いありませんね?」
半田
「……ッ」
半田は目を逸らすも、森山は引き続きメモ帳を読み上げていく。
森山
「遠野さんはギャンブル中毒の貴方に呆れながらも、仕事に対する熱意は尊敬していました。今回のスタコレの事故…始めに落下した照明器具を支えていたネジの部分を、半田さんが落下する直前まで触っていたのを遠野さんは当時見ていたそうです」
森山
「仕事に手を抜かないアンタが、もしも【態と】あのような事故を起こしたというのなら…口止め料を受け取った他の奴等はどう思おうと、丸印建設を巻き込んだ事を俺は絶対に許さない」
森山
「……と、伝えるように頼まれました。…半田さん、これだけの情報が集まった今、もう後には引けないのだと、理解していただけましたか?」
そう言うとメモ帳を閉じて、キリッとした目で半田を真っ直ぐに見つめる。斎藤は口を動かす。
斎藤
「アンタが警察に泣きついても構わねえが、それをして立場がヤバいのは自分の方だって分かってんだろ?」
ずっと目を逸らさず見てくる森山と斎藤のペアに、半田は到頭観念したようで、半ば自棄糞気味に荒れて話しだす。
半田
「…あぁ!そうだよ!!遠野の言ってる通りだ!!俺は部下に500万の口止め料を出した!!あの事故は偶然起きてしまった不慮の事故にしたかったからな!!」
荒れる半田に斎藤は睨み続け、冷静に問い掛ける。
斎藤
「あの事故は偶然ではなかったのなら……やっぱりアンタが……」
半田
「……ッ!そ、そうさ……俺がやったんだ。監視カメラの映像でも気付かれないよう慎重に、ほんの少しだけ、照明支えるネジを弄ったさ…!!あの事故を起こしたのは俺だよ!!」
小嶋
「…!!」
自白した瞬間、斎藤の胸ぐらを掴む手は、ぎゅうう!と、より強さを増し半田の首が締まりそうになりそうだった。冷静を装っているが、彼は怒りに満ちているのだ。
斎藤
「誰に雇われた…?アンタ一人で勝手に起こした事故じゃないだろ?500万円を用意出来たのも、報酬金じゃないのか?ギャンブル依存症のアンタが貯金している訳ねえだろ…!」
半田
「か、カハッ…!い、息…が…!」
森山
「先輩、落ち着いてください。一度大きく、深呼吸を」
斎藤の肩に手を乗せる森山に気付き、斎藤は黙って頷き胸ぐらを掴む手を離す。
半田は壁に凭れながら崩れ落ちるようにその場で地面に座り込んでしまう。気力を失ってしまった半田は終始俯いたままで、斎藤は深呼吸を終えると彼を見下ろして再び問い掛ける。
斎藤
「一体誰に頼まれたんだ」
半田
「……」
斎藤
「言うも言わないも、アンタの末路はもう決まってるんだ。この際全部吐き出してくれねえか?」
半田
「……【パーフェクトモデルの父親】だよ」
小嶋・森山
「……!!」
半田の口から出てきた言葉に、小嶋と森山はゾワっと鳥肌が立つ。
まさか、この場において、世間から善人として親しまれた【桜井 秀樹】を耳にするとは思ってもなかったのだ。小嶋は過去にアリケンから秀樹の実態を聞いてはいたが、ここまでクズだとは予想外であり絶句してしまう。
半田は壊れたように頭を両手で抱えて震え出し、泣き叫んでどんどんと溜まっていたものを吐き出していく。
半田
「アイツに頼まれたんだよ…!『ほんの少しだけ、照明を弄って欲しい』って…!あのイベントを延期にして【パーフェクトモデル】の最後を妨害出来れば構わないって…!!」
半田
「俺は…!言われた通りネジを少し緩めただけだ…!!昼の12時を迎えて会場の奴らが休憩で出て行く…そのタイミングで照明は落ちれば、誰も巻き添えを喰らわずに済むはずだった…!!」
半田
「なのに!なのに!!あの女はずっとランウェイの上で!!誰よりも夢中で!!リハーサルに励んでいるんだよ!!今から頭上から大量の照明器具が落ちてくる事なんかも微塵も知らずに!!休憩時間を削ってまで集中してよぉ!!」
半田
「あの女が大人しく休憩をしてくれたら!!あんな悲劇なんて起きなかったんだ!!俺は悪くねぇ!!俺は指示通りに動いただけだ!!悪いのは全部!!あの女なんだよ!!!」
斎藤
「……」
救いようのない叫びを、三人は黙ったまま聴いていた。溜まっていた物を全て吐き出した半田を、誰も哀れに思う事などなかった。心が壊れた半田は、未だ俯いたままだが吐き出した事で落ち着きを取り戻し、冷静に話す。
半田
「…毎月貰う給料を片手に握り締めて、当たれ当たれという思いでパチンコ台に座る日々。これ以上突っ込んだら、生活が出来ないと頭が分かってても手は止められなくて貯金が底に尽きる。クソみてえな人生は、大金さえ手に入れば終わるんだって思ってた」
半田
「…けど、違った。この手を汚してまで手に入れた大金は、ギャンブルなんかやらなくても良い人生を過ごせるっていうのに…虚しさしかなかった。そりゃそうだよな…俺の身勝手な行動で丸印建設…いや、スタコレに関わる全ての人間を滅茶苦茶にしてしまったんだからさ」
半田
「毎日豪遊して忘れようとしたって、脳の隅っこには必ず残っているんだ。照明器具が落下する寸前までランウェイの上に立っていた双葉の顔を。誰よりも真面目に練習に取り掛かりながらも、楽しそうにしていたあの笑顔を…」
半田
「…俺は…俺は…!日本中から崇められていたあの子の人生を潰してしまったんだ…!!俺は……何てことを…!!」
彼は再び頭を抱え、振り絞る涙声は震えている。半田は己の侵した罪の重さに耐えられないのだ。
そんな彼の様子を見ながら斎藤はタバコを取り出し火を付ける。一服終えたところで、半田に言葉を掛けた。
斎藤
「俺達は警察じゃない。真実を書き上げるそこら辺にいる記者だ。スタコレの事故の証言を聞けたなら、アンタにはもう用はない。今からでも自首しようが、しまいが好きにすれば良い」
小嶋
「は…?」
斎藤の警察に突き出す気がない発言に、小嶋は彼の方を見て固まる。
斎藤
「だけど、もしもアンタが、あの子に罪悪感を今も感じているのなら、自首をするのはもう少し先にしてくれないか?アンタが牢屋に行けば報道陣も黙っちゃいない。…そうなりゃあ、奴の耳にも入り姿を完全に消してしまうだろう。俺の真の目的は、奴にある」
斎藤
「俺達も今日聞いたアンタの情報は、アンタが自首しない限り警察には言わないし記事として書き上げる事もしない。自分の犯した罪を世間に広めるかは、アンタが決めろ」
小嶋
「ちょっと待ってくださいよ、先輩」
半田の前に小嶋が立ち塞がり、斎藤と向かい合う。いつも気楽にやってる表情が、今は楯突くように不満な顔をしている。
小嶋
「このクズが行った事は、人々が今すぐにでも知るべき情報ですよ!コイツが金に目眩まなきゃスタコレの人々は不幸にならなくて済んだんだ!それに…双葉さんだって…!」
怒りを抑える小嶋に、斎藤は冷静に話す。
斎藤
「小嶋。お前の言ってる事は正しい。コイツがやった事は許されない。…だが、コイツに言ったように、今この情報が世間に知れ渡れば、桜井が黙っちゃいない。今、奴を捕らえる絶好のチャンスなんだ。だからもう少し先に…」
小嶋
「じゃあ何です?コイツは秀樹が捕まるまでは悠々と過ごしても良いよって事ですか!?何処にいるかも分からないし、捕まえられるかも分からない男の行方を探す為だけに放っておくんですか!?そんなのジャーナリストとしておかしいですよ!!」
森山
「小嶋先輩…」
小嶋
「僕はこの真実を直ぐにでも伝えるべきだと思ってます!真実を少しでも早く日本中に伝える事で、救われる人だっているんだ!!そもそも僕は、丸印建設の不正を、先輩が黙ってるって発言したのもおかしいと思ってた!!」
小嶋
「悪い事をする人間を、自分達の都合の為に黙っておくのなんて記者として恥ですよ!!僕は反対です!!この世の中、悪い事をしたのならキッチリと罰せられるべきだ!!」
小嶋は初めて斎藤に刃向かう。だが、正義感が強い彼が、今回の自分の言葉に納得しないのは予想は出来ていたのだ。
斎藤は咥えていたタバコをポケット灰皿に戻し、小嶋の目を見て話す。
斎藤
「…お前、4月辺りに双葉が元気を取り戻す記事を書くって言ってたの、覚えているか?」
小嶋
「それが今の話に何の関係が…」
斎藤
「お前が言うキッチリを書いたらどうなるかを想像したか?丸印建設の信用は落ちる事は逃れられないとして、善良だと思われていた桜井が【悪人】として認定される」
斎藤
「世間の注目の矛先は奴にいくだろうな。善人を装っていた男が、まさか日本人を全員騙していたなんてって…それはどうでもいい。その連鎖の先に、双葉が再び目を向けられる事になるのが問題なんだ」
斎藤
「【パーフェクトモデル】として偽ってきた姿を、人々は真実を求め、彼女を再びバッシングするだろう。それを本人が知った時…元気を取り戻すと思うか?」
小嶋
「……そ、それは……」
斎藤はゆっくりと手を差し伸べ、少し俯いた小嶋の肩に優しく乗せる。
斎藤
「何度も言うがお前の言ってる事は正しい。お前は本当に良い奴だ。…俺は今、自分の都合の為に真実を隠し次の段階へ進もうとしている。本来あるべき記者としてあるまじき行動だと自覚している」
斎藤
「…だが、信じてくれ。俺も双葉の幸せを今は願っている。多くの芸能人を地獄に落とした俺の言葉じゃ信用出来ないかもしれないが……この件は、俺の記者としてのケジメなんだ」
斎藤
「あの怪物を、自身の有益の為に、表に引きずり出してしまったケジメだ。この問題は、これ以上広がらない為にも、俺に任せて欲しい」
小嶋
「…ッ…そ、それでも僕は…」
半田
「…は、ハハ…何だよそれ…偉そうにカッコつけやがって……」
先程までずっと俯いて黙っていた半田は乾いた声で笑う。
半田
「俺は元から自首する気なんかねえよ……だからこの真相を公開するもしないも、アンタらが好きにすればいいさ……」
小嶋
「こ、コイツ…!!」
半田
「…アンタが言うように、俺が捕まった事を知れば、あの男が黙ってるわけがないんだ。でも、それは自分の姿を消す前に……俺自身も消される事になる」
森山
「…?どういう事です?」
半田は姿勢を体育座りへと変えてフルフルと体を震わせて話す。
半田
「アイツと初めて出会った時、こう言ってきたんだよ。『自分は借金をしていた身で、それなりに裏社会にはお世話になった。だが、金を手にした今の自分は、その人間も動かせるように変わった。その意味をよく理解しておけ』って…」
半田
「あ、アイツ…自分の事を知られたら俺を消すつもりなんだ…俺の時のように誰かを金で雇って、自分の手を汚さずに……今こうしてアンタらに話してしまったのも、もしかしたらアイツが雇った人間に見られてるかも知れねぇ……そうなりゃ結局俺もアンタ達も、もうおしまいなんだよ…!」
三人は周囲を見渡す。裏通りにはこの四人しかおらず、他の人間がこちらを隠れて見るような姿も確認が出来なかった。
この男が抱える罪によって生み出された恐怖の形なのかもしれない。だが、仮に本当であるならば、この情報を知ってしまった自分達の身にも危険が及ぶ。斎藤は小嶋と森山に指示をする。
斎藤
「小嶋、森山、お前らは先に車に戻れ。俺も後から合流するが、車に向かう際に何度か周囲を警戒するんだぞ」
小嶋
「…先輩は来ないのですか?」
斎藤
「纏まって向かうより、別れて行動した方が警戒しやすい。…今は話してる場合じゃない。一刻も早くここから離れろ」
森山
「わかりました。小嶋先輩、行きましょう」
森山はしっかりと頷き、小嶋にも呼び掛けて二人は先に表通りへと行ってしまった。二人っきりになった斎藤は、この場を離れる前に半田の前で屈む。
斎藤
「アンタも本気で死にたくないなら残りの金を使って海外にでも逃げるんだな。俺は、桜井を捕まえるまではこの事件を引き下がるつもりはねぇ。奴の逮捕の記事が掲載されるのを、楽しみに待ってな」
半田
「…意味がわかんねえよ。アイツはイカれてるんだぞ?ただの記者なら、自分の身を守るべきだろ?何をそこまでしてヤバい領域に突っ込もうとするんだ?」
斎藤
「さっき言ったろ。これは俺の記者としてのケジメだ。……そして、【美花】を救えなかった【星谷家】の為の敵討ちだよ」
斎藤は立ち上がり半田を置いて、その場を立ち去る。
半田が言うように、この真実を知った今、危険な領域にいるのかもしれない。だが、斎藤の心に宿る信念は真っ直ぐと【真実】へと歩み続けるのであった。
…とある高層タワーの中にある高級フランス料理店。高層タワーの上層部による内装は、ガラス張りの窓からは東京の美しい夜景が広がっている。来店する人達は皆上品な格好で、如何にもセレブだけが集う場所なのだ。
そんな窓際のテーブルに黒いサングラスを掛けた男が一人で料理を楽しんでいる。プレートの上に乗った赤みが残った肉をフォークで抑え、上品にナイフで切ると口の中へ。肉汁が広がり風味を味わい、それを赤ワインで流し込む。男は静かに頷き、この優雅な時間を満喫していた。
だが、そんな雰囲気を楽しむ男の前に青いドレスを着こなした女性が座る。そして、男が飲んでいた赤ワインのグラスを手を伸ばして自分の元まで持ってくると、残りの分を一気に飲み干した。品のないその行動に、男は呆れるように苦く笑う。
男
「君ねぇ…喉が渇いているのなら注文すれば良いじゃないか?様になってないよ?」
女性は飲み干したグラスをテーブルに叩きつける様に置く。この先程から乱暴な動きを見せるのは……華城だったのだ。呆れている男性に向けて華城は腕を組んで話す。
華城
「…半田が誰かにチクったのよ。こんな所で時間を潰してないで、もっと焦ったらどう?」
華城
「桜井さん」
彼女の言葉を耳にすると、秀樹は不気味な笑みを見せる。
その表情は、この上品な場に似合わない【下品】な顔であった。