43.5話【其々の一場面】④
12.【黒木の妹】
スーパーリコリス 休憩室
ジュリ
「この間黒木さんの妹が来た訳ですけど……なんだか、イメージが全然違いましたね」
黒木
「どういうこと?」
ジュリ
「いや、ほら…黒木さんってめっちゃドライじゃないですか?妹さん…めっちゃテンション高かったんですけど。言い方が悪くなりますが、妹さんの方が物凄く人間味ありましたよ」
高田
「恵ちゃんは昔からあんな感じだったんだよなぁ。なーんで兄のお前はこんなにも無気力なんだろうねぇ?お父様もお母様もしっかりしてる人なのに、不思議なモンだわ」
黒木
「…なんだか酷い事を言われてる気がする。…でも、確かに恵は昔から凄く明るい子だったな。反抗期の頃は荒れていたけれど…それでも俺よりしっかりしていたと思う」
ジュリ
「逆に黒木さんに反抗期なんてあったんですか?何でもかんでも無関心なら、そんな時期なんて想像付かないんですけど」
黒木
「うーん、どうなんだろう…言われてみれば、そんな時期はなかったような…」
高田
「いやぜってーにねえよ。黒木の反抗期が想像出来ないならそういうこった。…しっかし、妹かー。俺には兄弟がいないから分かんねえけど、やっぱり離れてる兄と会いたくなるもんなんかねー。…確かジュリちゃんは三兄弟の末っ子だったよな。そんな事ある?」
ジュリ
「いや、ないです」
黒木
「どうして?」
ジュリ
「どうしてって…別に要件もなく会う理由なんてないでしょ?」
高田
「ウワー…冷たいなぁジュリちゃん…全日本オニーサン代表の黒木ちゃんが泣いちゃうよ?なぁ?」
黒木
「えっ?……エーン(棒)」
ジュリ
「…最近はノリ良くなりましたね、黒木さん」
黒木
「は、ハハ…」
ジュリの冷たい視線に、黒木は苦く笑うのであった。
13.【関西ジョーク】
Sunna カフェスペース
流王兄妹は難波とバッタリ出会い、お互いに仕事仲間としてカフェスペースで会話をしていた。
二奈
「あっ」
二奈はアイスコーヒーを手に取ろうとすると滑らせてしまい、コップはそのまま倒れて難波の着ている白いシャツへとかかってしまう。
難波
「おわつめたっ!?」
二奈
「ギャー!?ごめんなさい!!マジスミマセン!!」
一馬
「何をしているのデスか二奈。…申し訳ありまセン、難波さん」
難波
「えーよえーよ。この後仕事もないから後は帰るだけやし。それにこの服そない高……」
難波
(…いや、普通に流すんもおもろないな。ちょっと、イジったるか)
難波
「…高くはないんやけど、ちょーっと思い出がある服やねん。コーヒーのシミってしつこいし、とれたらええんやけどね〜」
二奈
「お、思い出のある…!?そ、それは…どんな…」
難波
(おっ、かかりおった)
難波は腕を組み存在しないあの頃を思い出す様に語りだす。
難波
「せやなぁ…この服はウチがまだぜんっぜん売れてへん頃、初めての給料で買った記念すべき1枚目の服やねん」
難波
「あの頃は仕事がないせいでほぼニートやった境、貰える給料もほんの少し。でも、初めて自分の働いたお金で手に入れた服やったからゴッツ思い入れがあるんや。そんな無名の頃からずーっと着てきただけあって、今でもウチの…」
二奈
「ギャァァアアアア!!」
難波
「うわっ!!?」
二奈は悲鳴を上げると、床に頭を付けて全力で土下座をする。
二奈
「マジでごめんなさい!!!そんな思い出の一品をウチがブレイクしてしまうなんて…!!モデルを退職するんでどうかお許しください!!」
難波
「イヤイヤイヤ!?大袈裟すぎるで自分!?大体この服は…!」
一馬
「その服は【ユニティ】から、去年の秋に出たばかりの1,990円のシャツデスね。難波さん、その設定は流石に無理がありマスよ」
難波
「ゲッ…」
二奈
「あえ?そ、そうなの?」
床に頭をつけていた二奈は顔を上げる。
一馬
「服代はこちらで弁償しマス。そしてお詫びも兼ねて、ユニティだけでなく、Ryu-Oブランドのシャツもお譲りしまショウ」
難波
「…一馬はん。アンタゴッツつまらんわ。マジレスはほっんまキツイ」
一馬
「おや、僕はまたまた何かやってしまいまシタか?」
二奈
「…え?つまりナンバっちは去年の秋が初給料だったって…コト!?それも1,980円!?めっちゃブラックじゃん!!」
一馬
「こういう反応の方が良かったデスか?」
難波
「いや兄妹の温度差エグいて!」
14.【彼氏として】
聡の屋敷 リビング
ある日の夜。双葉は今夜は細田と寝ると言って先に二人は寝てしまった。黒木と聡はリビングにて其々の時間を過ごす。そんな時、聡から黒木へ声をかける。
聡
「…ねぇ、クロちゃん?」
黒木
「はい。何ですか?聡さん」
聡
「ここに来てそこそこ長いじゃない?で、双葉ちゃんと殆ど一緒に寝てるわよね」
黒木
「そうですね」
聡
「……こんな事聞くのは現代じゃモラハラになっちゃうのかもしれないけれど……一応、聞かせてくれない?」
黒木
「……?」
聡
「…双葉ちゃんの事を襲いたいなんて思わないの?」
黒木
「お、襲う……?」
キョトンとしている黒木に聡は体をくねらせる。
聡
「いやいやだって、だってよ?毎晩貴方の目の前には、最強にビューティフルな子猫ちゃんが寝ているわけよ?それも甘えて熱々ホットグラタンのように抱きしめてくるワ・ケ。…やっぱり、ボーイとして、獣としての本能が耐えられないんじゃなーい?」
黒木
「…すみません、聡さん。さっきから何言ってるのかよく分からないのですが」
聡
「まーまー。恥ずかしがらずに答えてちょーだいよ。今ここにはファンタスティック⭐︎ボーイしかいないわけだし?青春真っ盛りの男はね、こーゆーヤラシイお話が好きなのよん」
グイグイと聡は詰めてくるが、黒木は変わらずキョトンとしたままだった。
黒木
「あの、本当にどういうことか分からないんですが…獣になるって……言われても……」
聡
「…えっ?クロちゃん、まさか本当にそんな気が一切ないの?ボーイとして結構やばいわよ、それ」
黒木
「…聡さんにそう思われるって事は、多分ヤバいんでしょうね。質問の内容はよく分からないですけど、俺は双葉さんがやりたい事以外はやろうとは思ってません。それがおかしくっても、双葉さんが幸せなら俺はそれでいいんです」
そう言って黒木はニコッと笑う。彼の純白な心の輝きに、ほんの少しでも卑しい心を疑った聡は己を恨んだ。
聡
「…クロちゃん」
黒木
「なんですか?」
聡
「アティシを殴って…」
黒木
「えぇ…?」
何故彼はこんな事を言ったのか、黒木には最後まで分かる事はなかった。
15.【ファンサ】
今日は来たるスタコレに向けて、TOP4は宣伝として撮影スタジオにて仕事をしていた。時間のスケジュールの都合上、先にスタジオ入りしたRABiと姫川は先に撮影が始まり、今は写真のチェックに移り待機中である。
RABi
「姫川さんって、ファンサしたりする?」
姫川
「ファンサ?」
スマホでつぶグラを見ながらRABiは、静かに待機している姫川に話題を振る。
RABi
「うん。私は応援してくれるファンが大好きだからファンサをすっごく大事にしてるんだよね。なんていうかさ、それをやって喜んでくれるのなら、お返しとしても最高じゃん?」
姫川
「成る程…RABiさんらしい理由ですね」
RABi
「それでそれで?姫川さんはどんなファンサしてるの?やっぱり有名人な訳だし、街中でファンと出会うでしょ?何か求められるんじゃない?」
RABiの質問に、姫川は少し俯いて答える。
姫川
「私は…いえ、グッド・スターはそういうのをやりません。そういったサービスを求める人間の中には、裏社会に関わる人も混ざっていたりします。もしもその人達と一緒に撮ってしまった時、後々脅しに使われかねませんので全部断っています」
RABi
「えっ、そうなの!?うーん、そう聞くと私もファンサを抑えた方がいいのかな?」
姫川
「そういったケースは稀な事が多いので、RABiさんは RABiさんの思う様にしていいと思いますよ?」
姫川は顔を上げてRABiを安心させる様に微笑む。
姫川
「ファンサと呼べるものか分かりませんが、モデルとして生きている限り、常に期待に応える姿を見せる事が、ファンの方々へのお返しだと私は考えています。人々の理想の姿になれる為にも、今日の撮影も一緒に頑張りましょう。RABiさん」
RABi
「…姫川さんって、私より一つ下だよね?対応が私よりずっと大人で、マジ尊敬するわー…」
姫川
「そんな大した事言ったつもりは…」
姫川の仕事へのプロ意識に、RABiはとにかく感心するのであった。




