35.5話【双葉】
ずっと、嘘をついて生きてきた。
誰にも【本当の姿】を見せずに。
みんなが求めてるのは【パーフェクトモデル】だから。
それは、誰よりも完璧で、誰よりも美しく、誰よりも輝く、正に頂点の称号。
【嘘】しかない私には、とても勿体無い言葉。
その期待が、応援が、私が欲する【愛】の渇きを潤してくれる。
【パーフェクトモデル】の私を愛してくれるファンのみんなが、すっごく好きだった。
でも、私から【パーフェクトモデル】が無くなったら…きっとみんなは私の事を忘れて愛してもくれなくなるのも、分かっていた。
だって、頂点にいるから注目されるだけで、頂点でない私なんて不要だから。
だから私は常に笑顔で嫌われないように演じたし、弱い人には手を差し出した。
善人を振る舞えば、この地位を守れると思ったから。
どんなにセクハラされても
アンチコメントに粘着されても
所属先で陰口を言われようと
みんなが愛してくれるから演じる事が出来た。
だけど、私の大切な人が死にかけたあの時に、私の事しか言わない人達を見て思った。
【パーフェクトモデル】は呪いなんだって。
私が欲する愛への執着心と、ファンが求める完璧への期待によって生み出された呪い。
きっと、あの時も【パーフェクトモデル】を演じておけば、いつも通りに愛の渇きは満たされていたんだろう。
でも、私には出来なかった。私の恩人を誰一人心配しないファンの姿が、ハッキリと【偽りの愛】だと心に植え付けられたから。
全てが嫌になって、誰も信じれなくなって、心が曇っていくのが伝わって……私は【パーフェクトモデル】を辞めた。
今まで縋り付いていた偶像の呪いが消えて、私に残されたのは孤独。
でも、それで良かった。私みたいな【嘘】まみれの人間が、【本当の愛】を知ろうとした罰なんだって思ったから。
そう言い聞かせていたけれど……やっぱり【偽りの愛】であろうと、愛されなくなったのはとても虚しくて悲しかった。自業自得なのにね。
もう、私は誰にも必要とされる事はない。心から光が消えた様に、私も何処かへ消えよう。そう思っていた。
…だけど、そんな時に、あの人はまた私の前に現れた。
あの寒い雪の降る夜の日を思い出させるかのように…貴方はいつも救世主のように私の前に現れてくれる。
大事にしてくれる貴方にさえも【嘘】をついていたのに、私から勝手に引き離したのに、その黒い目から絶対に諦めない【信念】を感じた。
私の【嘘】を、貴方の【誠実】が打ち消す。
私の我儘を全て受け入れる貴方は言う。
貴方の愛を、俺にください
そして、俺の愛を受け取ってください
私が【パーフェクトモデル】じゃなくても
貴方は私を真っ直ぐと愛してくれた。
私のような【嘘】で生きてきた人間が
愛されてもいいの?
貴方の【本当の愛】を
私が受け取ってもいいの?
まだ、貴方の想いに返せないかもしれないけど
いつか絶対にこの想いを貴方に伝えるから
その時が来るまで
貴方の隣に
ずっといてもいいかな
…ありがとう
私を愛してくれて




