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【完結】Re:LIGHT  作者: アレテマス
【あれから】
56/150

Extra


•••••••••


Sunna事務所


ジュリ

「……」


春香

「じゅ、ジュリちゃ〜ん…」


不貞腐れて椅子に座るジュリに春香はアワアワと困っている。そんな二人の元に彼女が現れる。


双葉

「やっほー♫どうしたの怖い顔して?」


春香

「!双葉さん!」


ジュリ

「…別に」


双葉

「別にって事はないでしょー。可愛い顔が台無しだよ?」


双葉は機嫌が悪いジュリの事なぞ気にする事なく、隣に座って頭を撫でる。


ジュリ

「チッ!」


しかし今のジュリにはそれすらも腹が立つようで、撫でている手を払い除ける。双葉の優しさを拒絶する態度に、流石に春香の表情もムッとなる。


春香

「ジュリちゃん!」


双葉

「まあまあ春香ちゃん。…何があったか、教えてくれる?」


春香の怒鳴りにも双葉は冷静に宥める。ジュリは双葉を横目で睨むとそっぽ向いた。


 せっかく【パーフェクトモデル】が話を聞いてくれるというのに、ずっとこの態度となると春香は溜息を吐き、代わりに事情を話しだす。


春香

「実は…漸く仕事が入ってきて色々とスケジュールを調整して行ったのですが……ただの出会い目的だったみたいで…」


ジュリ

「…どうせ私は売れないモデルですからね。撮影なんか適当にやって本命は体目的なんですよ。…私のファッションスタイルなんて、あいつらはどうでもいいと思ってるんだ」


双葉

「あー、そっか。それはムカつくね」


双葉が再び頭を撫でようと差し出す手を、ジュリはパンっと弾く。


ジュリ

「触るな!そんな気分じゃないって何でわかんないの!?アンタ、本当に浮かれバカだよね!?」


ジュリ

「…あっ…!」


言葉の勢いで双葉を馬鹿にしてしまった。彼女が背負ってる重圧の姿を大江戸タワーで見たというのに、またこの人を拒否しようとしてしまった。ジュリは自分の口から出た汚い言葉に後悔して泣きそうになる。


 しかし、彼女は酷い事を言われようと拒絶されようと優しい微笑みを崩さず話し掛けてくれる。


双葉

「そう、私はバカだからさ?こうする事しか知らないんだよね」


春香

「双葉さん…」


ジュリ

「ッ…ち、違うんです双葉先輩……貴方は何も悪くないのに…その…」


双葉

「ねぇ、嫌な気分がずっと続く時はどうすればいいか知ってる?」


春香・ジュリ

「……?」


双葉

「簡単な事だよ。最高に美味しい料理を満腹になるまで食べる!というわけで今から焼肉でも行こうか」


双葉はニコッと笑い立ち上がると、ジュリへ手を差し出す。彼女の背中から照らされる天井の照明が、上目遣いで見つめるジュリにとってまるで【光】に思い、双葉の神々しい姿に見惚れていた。


ジュリ

「…奢ってくれるんですよね?」


恐る恐る差し出された手を握って立ち上がるジュリに笑顔のまま答える。


双葉

「勿論。お金は幾らでもあるからねっ♫」


ジュリ

「…ハハっ」


余裕と冗談を言う双葉にさっきまで怖い顔をしていたジュリも、思わず表情が緩んでいた。


 そして怒りに身を任せるジュリを、これ程安心させる事が出来る双葉のカリスマ性に春香も見入っていた。何よりもどれだけ拒絶されようと真っ直ぐに寄り添ってくれる双葉は【救世主】の様だった。春香は双葉に声を掛ける。


春香

「双葉さん。やっぱり貴方は凄い人です…私にはジュリちゃんをどうする事も出来ないのに…」


弱気に話す春香に双葉は振り返り答える。


双葉

「でも何とかしようと動いたんでしょ?春香ちゃんも凄く立派だよ。ほら、ジュリちゃんもせっかく優しくしてくれる先輩に謝らないとね?」


ジュリ

「あ……その……すみません春香先輩。また前みたいに荒んでしまって…」


ジュリは春香に申し訳なさそうに頭を下げる。


春香

「う、ううん!いいの!私も双葉さんみたいに上手く励ませなくてごめん…もっと勇気を持っ…」


双葉

「はーいはい!辛気臭いのもこれで終わり!いっぱい美味しいお肉でも食べて明日からまた頑張ろう!」


ジュリ

「わっ」


春香

「!」


双葉は二人を引き寄せて間に入り、両者の肩に手を回す。さっきまで最悪だった空気も、彼女がいればなかった事になる。


ジュリ

「…ふ、ふふっ」


春香

「…ふふっ、あははっ!」


彼女の太陽の様な輝きが、二人の暗闇の心を照らし元気を取り戻す。誰もが認める無敵のモデルは正に彼女の事なのだろう。


•••••••••


Sunna 休憩スペース


「……」


休憩スペースにて、顔を手で覆い猫背でソファに座り込む聡がいた。いつもはファンタスティックなオーラを曝け出す彼も、今は静かにただのメイクが濃い中年のオッサンになってしまっている。


 そんな彼の姿を部屋の端から田中とMIHOが見ている。


田中

「…あれ、何かあったんですかね?」


MIHO

「KENGO社長に物凄く怒られたんですって〜。メイクルームをファンタスティックに変えるって言って、相談無しに自分好みの部屋を改造したとか」


田中

「えぇ…どんな改造ですか?」


MIHO

「絵心も無いのに壁に犬を描いたんですって〜」


田中

「えぇ…」


MIHO

「細田さんが気付いたみたいだけど、『ハムスター?』って聞いたそうよ〜」


田中

「えぇ……」


「どうせアティシは絵心ないのよ……」


田中

「あっ、そっちで落ち込んでるんだ…」


酷く落ち込む聡に、心配したことを後悔して田中は大きく溜息を吐く。


双葉

「聡ちゃ〜ん♫」


そんな彼の元にニコニコと双葉はやってくる。その後ろには細田もついている。


 双葉は聡の隣に座り聡に寄り添う。細田は休憩スペースに置かれている自販機で、三人分のコーヒーを購入する為に一旦離れた。


双葉

「元気ないんだね」


「えぇ…元気ないのよん。そこにいるマミーがケンちゃんにチクったから」


細田

「誰がマミーですか」


細田は3人分の缶コーヒーを持って戻ってきた。聡は落ち込んでいても直ぐにコーヒーを受け取り、顔を上げて豪快に一口で飲み干した。


双葉

「おー、凄い」


「…明美ちゃん」


細田

「何?」


彼は口を拭いてキリッとした表情で答える。


「…アティシ、カフェオレ派なの。今お口の中すっっっごく苦い」


細田

「それは自業自得じゃない…」


双葉

「アハハ、やっぱり面白いな〜聡ちゃんは」


「…そう?アティシ面白い?」


双葉の言葉に反応して聡は問い掛ける。


双葉

「うん、面白い。どうして社長は聡ちゃんのユーモラスに気付かないんだろうね〜」


「!!…でしょう〜!?やっぱり双葉ちゃんはわかってくれるわねぇ〜!!」


双葉

「あっ、でも私もあの絵は猫に見えたけどね」


「あぁん!ひどぉい!」


励ましながらも冗談を言う双葉に、聡もすっかり調子を取り戻していた。珍しく落ち込んでいた事に、少し心配していた細田も腕を組んで安心して呆れながらも見ていられるのだった。


•••••••••

••••••


秘書

「…長、社長。聞いてますか?社長」


KENGO

「…!」


Sunnaの社長室。クーラーが効いた涼しい部屋でKENGOはボーッと椅子に座っていた。何度も呼び掛ける秘書の声に漸く意識を取り戻すのであった。


 ずっと、此方の声に反応がなかったKENGOに秘書は心配そうに話す。


秘書

「大丈夫ですか?メディアの対応にも追われてやはり疲れが溜まってるのでは?」


KENGO

「い、いや。大丈夫だよ」


秘書

「…何か考え事を?」


KENGO

「まぁ…ね…あの子が居なくなった今のSunnaは…なんていうか……活気が無くなった気がするんだ」


秘書

「…そうですね。私もそう思います」


KENGO

「だけどそれをいつまでも引きずる訳にもいかない。俺達は先の未来を、前を見て進み続けないといけないんだ。ボーッとしてしまって悪かったね。…それで、どうしたんだい?」


秘書

「はい。その事ですが…社長の友人だと名乗る方がロビーに来ておりまして…どうしましょうか?一応多忙なので断らせて頂いたのですが、一度伝えてくれと言われたので…」


KENGO

「わかった。丁度体を動かしたかったし、俺直々に会いに行くよ」


KENGOはゆっくりと立ち上がりグググと背伸びをする。固まった体を解して社長室から出て、ロビーに向かうエレベーターへと乗り込む。


 エレベーターの扉が開きロビーに到着すると、遠くでソファに座っているスーツ姿の男性がKENGOに気付き立ち上がり、体を向けて深々と頭を下げる。


 KENGOが男に歩み寄ると、彼はゆっくりと顔を上げてKENGOの顔を見つめ、営業向けの作り笑いを見せた。


KENGO

「君は…」




「どうも、KENGO社長。私、MARUKADOで記者をしている、斎藤と申します」


長らくお待たせしました。

6月1日昼12時より、いよいよ第二幕の始まりとなります。

【パーフェクトモデル】が居なくなった今、取り残された人達の夏が始まります。お楽しみください。

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