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【完結】Re:LIGHT  作者: アレテマス
【あれから】
54/150

3話


6月上旬 


PM20:09 焼肉店【最強炭火焼肉ちゃん】



 多くの人々で賑わう店内。そんな一つのテーブル席にて食事も終えてすっかり出来上がっている中年男性の上司と、全く酔っていない若手サラリーマンの二人が座っていた。


 中年はベロベロになりながらも悔やむように話を続ける。


中年

「俺はさぁ、双葉がこんな形で終わって欲しくなかったんだよ!」


若者

「はいはい、小野さんが双葉のファンだったのはもうわかりましたから。さっきから何度も聞いてますよ」


中年

「いいや!わかってねえよお前は!」


中年はジョッキに余っている残りのビールも飲み干し、虚な目で語る。


中年

「…俺はよぉ。奥さんにも恵まれて子供も授かってそれなりに良い生活を過ごしてきたんだ。悪い生活じゃない、なんなら幸せな家庭の一つだよ」


中年

「だけど毎日毎日何の面白みもない日常に退屈を感じていてさ。ワカモンの趣味にも付いていけねえし、だからと言って新しい趣味を見つける気力もなかった。そして俺の日常からは色彩が消えて、周りがモノクロのようにしか見えなくなってたんだ」


中年

「だけどある時、娘が買ってきたファッション雑誌を軽く覗いた時だ。居たんだよ、そこに双葉という【光】が。あの子を見た瞬間、失っていた色彩を一瞬で取り戻したんだ。なんて美しい子なんだろうって」


中年

「なんていうかさ…テレビでも雑誌でも広告でも、何処かであの子を見かけると力が漲ってくるんだよ。あの子の笑顔を見ていると【よし、今日も頑張ろう】って思えたんだ!【パーフェクトモデル】は間違いなく俺の救世主だったんだ!」


中年

「……なのに!なのにどうしてあんな終わり方にしたんだよぉ〜!!せめて本人の言葉を最後くらい聞かせてくれたっていいじゃねぇか〜!!」


中年はワンワンと泣き喚き机に伏せる。大の大人が酔って子供のように泣く姿に若者は溜息を吐いた。


若者

「まぁ…言いたいことはわかりますよ?【パーフェクトモデル】となれば多くの人々から親しまれてきた訳ですし…それをノーコメントで止めるのはやっぱり裏切られた感が…」


中年

「違う!!」


中年は若者の言葉に顔を上げて反論する。突然怒鳴るものだから若者は驚いた顔を見せた。


中年

「世間は裏切ったとか言ってるがそんなのはどうでもいいんだ!!大事なのは……!!あの子はもっと輝いて俺達の【希望】になってほしかったってことなんだ!!もっと俺達に輝く姿を見せてほしかったんだよぉ〜!!」


言い終えると再びワンワンと泣きながら机に伏せる。さっきからずっとこの調子に、流石に若者も対応に疲れ果てていた。


若者

(あぁもう…めんどくさいなぁ…)




 食事も終えて店を出ると、酔い潰れてしまった中年を無理矢理タクシーへ乗せて帰らせる。見送り終えると若者も自分の帰る場所へと歩き出す。


若者

「あーあ…疲れた…」


若者は上司の相手に疲れてぼやく。すっかり遅くなった都会の街は人気(ひとけ)も無く、公道を走る車も少ない。


若者

「…あっ」


そんな帰り道の途中、若者の目にある場所が映り、歩く足を止めた。


 その視線の先は、かつて多くの双葉の広告看板が見受けられた通り。ファンからは【聖地】として知られていた場所だったが、作業員が集まって次々と看板を張り替え作業を行なっている。


 張り替えられていく広告は今流行りの姫川や春香、RABiが採用されている。彼女達は今を輝く新星のモデルであり、其々美しく個性が出ているが……若者には何か物足りなく感じた。


若者

(…あぁ…そうか…)


若者は気付く。自分よりも歳を取ったあの人が泣く程悲しんでいた理由を。


 双葉はこの町で何処でも見れたからこそ見慣れた景色に何とも思わなかったが、いざ見れなくなると彼女の存在感はとても強かったのだと。自分は双葉については関心を持っていなかったつもりだったが、この光景に何処か寂しく感じていた。心の何処かで双葉の存在が自分にもあったのだ。


 つぶグラでは双葉が消えた事に対して様々な考察をしている人や、ML契約を捨てた事へ傲慢だと批判する人もいて、彼女への哀しみの声は埋もれてしまっている。今我々がすべきなのは、日本を代表するモデルを失い、悲しむ人達に向き合う事ではないのだろうか。


若者

(…今度はしっかりと聞くとするか)


若者は歳を取っても純粋なファンである上司の思いを受け入れようと思い、再び足を動かす。


 すると、前から黒いフードを深く被った女性が歩いてきて、パーカーのポケットに手を突っ込んだまま彼の横を通り過ぎる。


 通り過ぎる一瞬に見えた女性の瞳は、唯一無二の青い瞳。


若者

「えっ?」


若者は思わず足を止めて振り返るも、既に女性の姿は見当たらなかった。


若者

「…考えすぎか?」


若者は気のせいだと思い込み、再び前を向いて歩いていくのだった。



 裏通り。誰もいない細い道をフードの女性は黙々と歩く。彼女が向かう先は病院だった。


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