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Re:LIGHT  作者: アレテマス
第一幕
51/143

第一幕【Last Episode】


•••••••••


5年前 都内のとあるファミレス


双葉

「…私がモデル?」


双葉と細田はファミレスの席で対面に座っている。細田は頷き、テキパキと机の上に契約書を広げていく。


細田

「えぇ。貴方の祖父母からも、自立出来るように頼まれているから。今は私が貴方を支えていられるけど、それもずっと続く事はない。今からでも少しずつ社会に慣れていくべきね」


細田

「そこで16歳の貴方が直ぐに出来るのは、モデルなのよ。……貴方が言っていた、【愛】に答えるのならアイドルの方が向いているのでしょうけど…生憎私もSunnaもアイドル業にはまだ手を付けてないの。貴方を支えるのには経験不足だわ」


細田

「だけどモデルになってくれたら、私としても長年マネージャーを務めて多くの人を支えてきたから、貴方の力になれるはずよ。…どうかしら?」


双葉

「私が…モデル……」


細田の提案に双葉は少し俯いて考える。細田は考え込む双葉の返事を、頼んでおいたコーヒーのマグカップに口を付けて飲みながらじっくりと答えを待つ。


双葉

「……ふ、ふふっ、あははっ」


細田

「…?どうしたの?」


突然笑い出す双葉に細田はカップから口を離し、不思議そうな目で彼女を見つめる。


 双葉は自身が注文したオレンジジュースのストローを摘み、机に片腕を肘をつきながらクルクルと無意味にオレンジジュースをかきまぜる。


双葉

「細田さんって、おかしな事を言うんだね。モデルって容姿が大事だってお母さんが昔に言ってた。……私の背中、見たでしょ?」


細田

「……」


双葉

「こんな酷い背中なんかでモデルなんてやれないよ。もし、なれたとしても誰もこんな姿の私なんか選んで…」


細田

「それなら背中を隠せばいい」


双葉

「…?」


細田は否定せずに一つの提案を出し、双葉のストローで混ぜている手を止めさせた。


細田

「貴方の契約条件として背中を晒す服は着ないようにすればいいの。様々な衣装を着る事となる職だろうと、条件さえ事前に提示しておけば、貴方の本当の姿を晒す必要もない」


細田

「ただ…背中を晒すのはNGとピンポイントの条件だと、(いず)れ人気になった頃には怪しまれるでしょうし…ここは無難に【肌の露出の多い衣装は着ない】にしておきましょうか。それに貴方は、自分の家族の話もしたくなかったのよね?それなら【家族の情報は禁止】も加えましょう。後は…」


双葉

「…ねぇ」


細田

「…?何かしら」


双葉

「どうしてそこまで私のことを考えてくれるの?貴方はお母さんの友人だって言ってたけど……私と貴方は他人でしょ?」


細田

「……」


細田

「…そうね。私と貴方は他人ね。…でも、【助けたい】って思う気持ちに、理由なんていらないでしょ?」


双葉

「えっ…?」


細田は両手を差し出して、双葉の手を握る。その手は少しひんやりとしていたが、彼女の優しさの温もりはしっかりと感じる。


細田

「貴方の母親はトップモデルにはなれなかったけど、モデルとしての才能は宿していた。娘である貴方も、きっとそれを引き継いでいるはずよ」


細田

「貴方なら必ずこの業界のスターになれる。貴方自身が、人々から親しまれる存在なれば…きっと貴方が言う【本当の愛】の答えも分かる日が来るはずよ。だから…私と一緒に頑張りましょう、双葉」


細田の手はぎゅっと双葉の手を強く握った。双葉は握られた手をじっと見つめる。


双葉

「…手、久々に握ったなぁ。こんなに温かいんだね…」


双葉も細田の手を握り返し、嬉しそうに微笑む。後に【パーフェクトモデル】と呼ばれる完璧の最強モデルが今ここに誕生するのであった。



 しかし、光は何時迄(いつまで)も照らす事はない。いつかは輝きを失い、暗闇に消えていく。


 彼女が再び光を取り戻す為に今、心に感情が芽生えだした一人の男へと託されるのである…


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