21.5話【大好きな人へ】
…二年前。とあるモデル雑誌による取材中の様子
記者
「…成る程。それでは双葉さんが最も大切にしているのはファンということですね?」
双葉
「はい。ファンがいつも応援してくれるから私はもっと頑張ろうと思えるんです」
記者
「その心、とても大事だと思います。…ここだけの話、有名なモデルになっていくと、自身のスタイルを強く出しすぎてどうしてもプライドが高くなってしまい、いつの間にか周りを見下してしまいがちになるみたいなんです」
記者
「…僕が言ったなんて言わないでくださいね?グッド・スターの華城さんとか正にその例なんですよ。あの人、ベテランってところもあるんですが有名モデルになれたからって、周りを物凄く見下すんですよ」
双葉
「へー、そうなんですね。…んー、その考え方は私には理解できないかな」
記者
「双葉さんはとても優しい子だって周りの人も言ってましたよ。双葉さんには是非ともそのままでいてほしいですね」
記者
「…と、そろそろ時間か。すみません、次が最後の質問になりますが宜しいでしょうか?」
双葉
「はい。お願いします」
記者
「今、双葉さんの人気はこの業界の歴史を変える程急上昇しています。世間からは次回のスタコレで一位になるのではと注目されるぐらいです」
記者
「そこで聞きたいのですが、双葉さんのご両親はどんな方だったのですか?ここまで来た事に感謝の言葉はあったりしますか?」
細田
「家族関係の質問はNGでお願いします」
ずっと黙って双葉の隣に立っていた細田の口が開く。
記者
「すみません。注目されてる方のご両親の紹介というのは、割と読者に人気でして…そこをどうか少しだけでも聞かせていただけませんか?」
細田
「今私が言った言葉、理解出来なかったのならもう一度言いましょうか?」
記者
「…ほんの少しだけでもダメですかね?」
細田
「いい加減に…」
双葉
「ごめんなさい。私とSunnaの契約上、家族の話は出来ないんです」
双葉
「……でも、家族と思える人の事については話せますよ」
記者
「…ほほう。ではその方が親の代わりとして聞かせていただけますか?」
双葉
「はい。その人はとても真面目で、あまり笑わなくて、凄く賢くて、私の事を第一考えて動いてくれるんです。…そして、私が暗闇に閉じこもっていた時にも、手を差し出してくれたんです」
双葉
「どれだけ感謝しても感謝しきれない、掛け替えのない存在…本当の家族だと思える大切な人…その人への感謝の言葉はもう決まってます」
双葉
「ここまで私を支えてくれてありがとう。本当に大好きだよ……かな?」
彼女は太陽のように眩しい笑顔で答える。
記者
「…素晴らしいメッセージですね。もしかしてですが、それは彼氏さんだったり…」
細田
「ゴホン」
記者
「失礼しました。…無茶を聞いていただきありがとうございました。これで取材は終わりとなります」
双葉
「ありがとうございました!」
記者
「出口は彼方になります。雑誌は完成次第、Sunnaの方へ送らせていただきます。お疲れ様でした、双葉さんならもっと上にいけると僕は信じてます。一ファンとして、これからのご活躍も応援しております」
双葉
「あはは、嬉しいです!これからも頑張っていきますね!お疲れ様でした!」
取材が終わり双葉と細田は部屋を出ていく。
誰もいない廊下では、双葉は細田に寄り付いて囁く。
双葉
「…そういう事だからね、細田さん?」
細田
「…何言ってるのよ」
甘える彼女に呆れながらも引き離さず、本当の親子のように廊下を歩いていくのだった。