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【完結】Re:LIGHT  作者: アレテマス
第一幕
35/150

18.5話【たまには三人で】


PM18:01 スーパー・リコリス 休憩室



ジュリ

「そうですか…わかりました。お大事に」


ジュリはリコリスでのバイトも終わり、帰る支度をしながら電話をしている。


 この後21時から掛け持ち先のEDGEにバイトに行く予定だったが、EDGEの店長が体調を崩したようで臨時休業となった。電話を切ってジュリは溜息をつく。


ジュリ

「…困った。バイトがなくなったのなら今日はもうやる事がない」


彼女はスマホを触りながら一旦椅子に座り、色々と確認をする。


 新しい仕事もなく、行きつけのクラブハウスも今日はやっていない。ゲーセンで暇潰しするにもやりたいものがない。


ジュリ

(…たまにはこっちから春香先輩を誘ってみるか)


そう思い春香に電話をしようとするも、彼女はスタコレに選ばれて忙しい事を思い出してその手は止まる。


 そんなこんなでどうしようかと考えていると、早番で仕事が終わった黒木と高田が休憩室に入ってきた。


高田

「お疲れちゃーん!…あれ?ジュリちゃん、次はEDGEに行くんじゃなかった?」


ジュリ

「あー…そうだったんですけど急遽店が休みになったんで…どうしようかと今考えてます」


高田

「ふーん?…じゃあ今から俺の家に来る?」


ジュリ

「は?」


高田の大胆な発言にジュリはキレ気味に返す。


高田

「いやいや違う違う!!最後まで聞いて!?俺と黒木は明日休みだったからさ、今夜俺の家で映画鑑賞をするって決めてたんだよ!!な?黒木!?」


黒木は頷きながらエプロンを脱いでテキパキと帰る支度を進めている。


ジュリ

「映画鑑賞…ですか。まぁ、悪くはないですね」


高田

「でしょー?」


ジュリ

「でも高田さんのところでかぁ…」


高田

「…え?酷ない?俺なんかやっちゃいました?」


黒木

「俺はみんなで見ると楽しいと思うよ」


帰る支度を済ませた黒木は二人の元へ戻ってくる。


黒木

「もしもこの後やる事がないのなら、神田さんも一緒にどうかな?」


そう言って優しく微笑んで見てくる彼に、断るのもジュリには良心が痛み無理だった。


ジュリ

「…まあ黒木さんがそう言うなら…」


黒木

「ありがとう、嬉しいよ」


ジュリ

「……」


高田

「うわー…これがイケメンの特権って奴か…イッテ!?痛い痛い痛い!!足!!足やめて!?」


決して黒木の美顔に釣られた訳でもないのに、そう思い込む高田にキレたジュリは、無言で何度も高田の足を蹴った。


…………


PM21:03 高田の住むマンション


 高田の住むマンションにやってきた。ここに来るまでの間、映画を見る為にポップコーンが必要だと高田が騒ぎ、態々映画館へ買いに行ったり、ジュリが独身である店長の様子を見に行くと言って、店長の自宅に栄養ある物を買い集めて届けたり…マンションに到着してからも、高田特製の炒飯を三人で食べ終え…既に時刻は21時を回っていた。


 高田は慣れた手つきで映画鑑賞用のサブスクで支度を進める。照明も暗くして準備は完了。高田は床に座り、彼の後ろにある幅の広いソファに黒木とジュリが座る。彼曰く、客人には高級なソファで映画を堪能してほしい…らしい。


 映画上映前の宣伝CMが流れ出し、暗い部屋をカラフルに照らしていく。


ジュリ

「それで、何の映画見るんですか?」


高田

「映画マニアの俺がオススメする映画だよ!絶対に面白いから期待してね!」


ジュリ

「そうですか。…黒木さん、この人信用して良いんですか?」


高田

「オォーイ!!」


黒木

「ハハ…」


相変わらず高田を雑な扱いをするジュリに黒木も思わず苦く笑った。


 映画が始まり三人は画面に集中する。暗い部屋の中、ジュリは暇になった自分を誘ってくれた二人について静かに考えていた。


 都会に来てからずっと仕事がなく、荒んでいた心を双葉や春香は受け入れてくれて仲良くしてくれている。


 それは彼等も同じで、リコリスに来た時の態度に、高田はそれが持ちキャラだとか、黒木は気にせず接してくれた、おかげで除け者にされず今も仕事が出来ている。


 このまま誰にも構わず噛み付いて周りを引き離し、一匹狼としてやっていくのだろうと考えていたジュリにとって、三人で仲良く映画鑑賞をする等想像もしていなかった。…正直な所、この二人といる時は双葉と春香と同様に居心地が良かったのだ。


ジュリ

「…悪くないな」


ジュリはこの場が楽しく自然と口角が上がりボソっと呟いた。




 映画の鑑賞を始めて30分。流れる映像を見続けているジュリは驚愕していた。


ジュリ

(す、凄い…)


ジュリ

(びっっっくりする程つまらない…)


そう、絶望していたのだ。


三人が見ている映画のタイトルは【秘書と饅頭】


 和の国に住む大手銀行の秘書【坂本】(※キャストは外国人)が、喋る饅頭【ウスシオ】と恋に発展していく恋愛映画だ。


 しかし恋愛映画としてみていると、上映40分後には地球侵略にきたUFOの軍勢が襲来。ウスシオは実は勇者アーサーの血を引く末裔で、その呪いを解く力を宿しているのが坂本だった。彼女の協力によって、ウスシオは元の姿に戻り(※此方もキャストは外国人)仲間を集める為に、5大大陸の旅が始まる。


 だが、彼等の旅を妨害する四天王が現れ坂本とウスシオの恋は六角関係となり、仲間同士の裏切りの連鎖が起きる。棒読みの決め台詞で坂本の心を落とすのは誰なのか…


要するにこの映画は【Z級映画】なのだ。


 あまりのつまらなさにジュリは絶望した表情で映画を見続ける。もう内容が頭に入ってこない。チラリと高田の方を見ると、子供の様に目を輝かせ映像に魅入っている。


 黒木の方はいうと、こんなつまらない映画であろうと真剣に見続け、時折


黒木

「そんな…ウスシオはまだ秘めている力があるのか…?」


等とこんな映画を真面目に考察していてダメだった。前言撤回、この二人はダメな大人だ。


 あまりにもつまらない為、我慢が出来なくなったジュリは、黒木との間に挟むように置いていたポップコーンを膝の上に乗せて、黒木にくっつく様に座り、高田の鑑賞の邪魔にならない程度に小声で話し掛ける。


ジュリ

「…双葉先輩とも普段からこんな事してたんですか?」


双葉の話題には直ぐに反応するのを分かっていたジュリの予想は的中して、彼もまた小声で返す。


黒木

「家で映画鑑賞はなかったかな。…双葉さんとは一緒に映画鑑賞をしようと約束したけど…多分叶わないと思う」


ジュリ

「海外に行くからですか?」


黒木

「うん。…もう一緒にいられる時間も、あまりないしね」


寂しそうに話す黒木にジュリはぼーっと映像を見続け話を続ける。


ジュリ

「海外に行くのはどう思ってます?」


黒木

「凄いと思ってる。俺はモデルの仕事がよくわからないけれども、世界中の人が双葉さんの活躍を待っているんだなって…」


ジュリ

「…それ、建前でしょ?」


黒木

「…?」


黒木はジュリの方へ振り向く。


ジュリ

「本音を聞かせてくださいよ」


黒木

「いや…これが本音…」


ジュリ

「いいえ、嘘です。…いつもより声のトーンが低いですよ?寂しいんでしょ?」


黒木

「……」


ジュリに詰められ、黒木は静かに頷く。彼女は溜息を吐いて彼の方へと振り返った。


ジュリ

「寂しい思い…本人に伝えましたか?海外に行ってしまったらその思いも言えなくなりますよ?」


黒木

「神田さん…」


ジュリ

「そうだ。海外でイケメン高身長の白人男性に持ってかれる前に、ついでに告白もしちゃいましょうよ」


黒木

「は、ハハ…そういう関係じゃないから」


ジュリ

「本当ですか?」


彼を揶揄う様にジュリの表情はニヤつく。その顔を見た黒木は嬉しそうに微笑んだ。


黒木

「神田さん、そうやって笑うんだね。初めて見せてくれた気がする」


ジュリ

「あっ……女誑し」


黒木

「???」


ジュリ

「…まぁ話を戻してですね。スタコレまでに一度連絡入れてみたらどうですか?あの人だったら、どんなに忙しくても貴方の話は絶対に聞いてくれますよ」


黒木

「神田さん……ありがとう」


素直に感謝する彼にジュリはニヤリと笑い、片手のグーをだして親指を立てた。彼は頷き返す様に親指を立てる。


 そんな二人で会話をしていると映画は終わっていた。高田は立ち上がり部屋を明るくして、気持ち良さ気にニコニコと満足している。両手を腰に当て一人でウンウンと頷き発する。


高田

「いやー!!!クッッッソつまんなかったー!!!」


その発言の瞬間、ジュリの膝の上に乗っていたポップコーンは、彼の顔面に向けて投げつけられたのだった。


この三人の奇妙な仲は、まだまだ続くのである。


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