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Re:LIGHT  作者: アレテマス
第一幕
33/144

17.5話【とある男達の会話】


PM12:58 2月某日 都内のカフェ



「…斎藤!こっちだ!久しぶりだなぁ」


「久しぶり、工藤。仕事は順調か?」


ソファに座りここは喫煙席だと確認すると、男は胸ポケットからタバコを取り出し直ぐ様火をつけて、端に寄せられた灰皿を自分の前まで寄せる。


「あぁ、色々と忙しいけど順調だよ。…ていうかお前、この間禁煙するとか言ってなかったか?」


「歳を取ると考え方も変わるもんだよ。禁煙すると言ったあの頃の俺はまだ若かった。だからそんなバカな宣言をしたんだ」


「若いってお前…禁煙宣言したのは確か3年前ぐらいだろ?奈穂美ちゃんにタバコ臭いって言われたからもう止めるって…」


「そうだったか?」


「そうだよ」


一服終えて灰皿に吸い殻を乗せる。店員は既に注文を聞いていたようで、二人分のブラックコーヒーを置いて厨房へと戻った。


「…それで、頼んでいた件だが…何かわかったか?」


「あぁ、勿論だよ。お前の期待に応えれる範囲には情報を入手出来たかな」


「先に依頼料払っておく」


「いいっていいって!実はパフェも頼んでるから、その代金を奢ってくれるだけでいいよ」


「パフェって…お前も相変わらず甘党だよな。若くねえんだからそろそろ糖尿病とか気にしろよ?」


「それを言うならお前も癌のリスクを考えろ。…って、こんな話をしにきたわけじゃないだろ」


彼はコーヒーを一口飲むと、ビジネスバッグよりA4サイズの厚みがある封筒を取り出して机に置いた。


「今回の情報はその封筒の中にまとめてある。後で確認してくれ」


「わかった、助かるよ。…詳細はこのファイルで見るとして…結果は先に聞かせてくれるか?」


「OK。まずは結論から言うと…双葉の母親は【星谷 美花】で確定だ。双葉の親権は母親側にあったが…桜井秀樹との離婚後も【桜井 美花】として苗字も旧名に戻さずにいた」


「…何故父親を嫌っている双葉が、自身の名を【桜井】のままにしていると思う?」


「さぁな。だが、それは美花にも同じ事が言えるだろう。秀樹は当時三股を理由に離婚をしているわけで、奴に対する恨みは母親にもあったはずだ。そんな嫌いな奴の名前をわざわざ残すなんて、おかしな話だよな」


「……」


男は顎に手を当て冷静に考える。


「それと、もう一つわかった事がある。双葉の学生時代についてだが…どうも高校には通ってなくて、一年生で退学しているようだ」


「理由は?」


「一度も学校に通わず不登校が続き、一年の夏休みを迎える前に自主退学、だそうだ」


「…そうか。…これは、あくまで俺の推測でしかないんだが…双葉がこれだけ人気になれば、例え高校以外、小中と元同級生を名乗る人間が一人ぐらい出てきてもおかしくないと思うんだ。それが一切ないのもおかしいと思わないか?」


「あぁ、不思議だよな。あの青い瞳も教室じゃ絶対に目立ってたろうに…過去の情報を一切出していない双葉でも、同級生一人一人に自分の過去を黙るように指示してると考えるのも難しい話だ」


「…まっ、その細かい部分を調べるのが俺の仕事だな。残りは自宅で確認するよ」


男はコーヒーを飲み終え、差し出された封筒を自身のバッグに入れ込んだ。


「しかしまぁ、どうしてまた美花の事を調べ出してるんだ?確か6年前に担当を任されて一度調べてるんだよな?」


その質問を答える前に、男はタバコを取り出して火を付けた。


「…なんでだろうな。正直俺もよく分かってない」


「はぁ?探偵も暇じゃないんだぞ?お前の気紛れで付き合わせるなよ」


「…工藤。俺は様々な芸能人を地獄に落としてきた。でも、それは奴等の傲慢や強欲による自滅だと思ってる。黒が確定した時はいつも清々しい気持ちで記事を書き上げてたよ」


「とんでもないな…お前…」


「まあ聞けよ。…芸能人は所詮裏を隠し、平気で嘘をつくカスの集まりだって思ってたんだけどよ。たった一人だけ、裏がなく人に好かれたいという純粋な理由だけで芸能活動を頑張る子がいたんだ。…それが【星谷 美花】だ」


「…この間、双葉と対面取材をしたんだよ。あの子は騙せてるつもりだろうが、動作や喋り方からコイツも嘘をついているってわかったよ。だが、美花の娘であるならその嘘が、そこらのクズ野郎と同じものとは到底思えない」


「…それは記者としての視点か?それとも…美花のファンとしての視点か?」


男はタバコを吸い終えて、灰皿に乗せると二人分の代金を机の上に用意して立ち上がる。


「だからそれがよくわかってないんだ。…だが、双葉の謎を解明出来れば、当時解けなかった美花の真相を知る事が出来るかもしれない」


「…要するに、過去の自分と向き合いたくなったのかもしれないな。あの純粋なバカのせいでよ」


「それって、小嶋君の事かい?」


「さぁな。…さて、俺はもう行くよ。パフェ代はここに置いてあるから。また何か頼む事があれば連絡する。じゃあな」


「斎藤」


背を向け歩き出した彼を呼び止める。


「今度は仕事じゃなく飲みにでも誘ってくれよ?ほら、奈穂美ちゃんも大きくなったろ?少しは娘の話を聞かせてくれ」


「…気が向いたらな」


彼は振り返る事なく手を挙げてヒラヒラと振り、店を出ていく。


 すれ違った店員は大きなパフェを用意して、一人残された男の前に差し出す。


 彼は映えるパフェを前に機嫌を良くして、スマホで撮影をしようと構えると一件のメッセージが届いた。




【都内にて桜井秀樹を確認。指示を求む】




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