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Re:LIGHT  作者: アレテマス
第一幕
32/144

特別回【バレンタイン】


2月初旬 AM10:10 スーパー・リコリス



 今日も黒木は黙々と納品作業を熟す。そんな彼の横に店長が丸めたポスターを手に持って会いに来た。


店長

「黒木君、今月からバレンタインイベントを当店でも強化して行くから、宣伝にこのポスターを店頭に貼ってきてくれないかな」


黒木

「わかりました、店長」


彼は納品する手を止めて店長からポスターを受け取ると、何故か店長の顔はニヤついて黒木を見ていた。黒木は不思議そうに店長を見返す。


黒木

「?どうしたんですか?」


店長

「ああ、いや。…そのポスター、開いてごらん?」


黒木

「?」


彼の言われるままにポスターを目の前で広げる。


黒木

「…あっ」


ポスターは高級チョコブランド【GOLDY】のもので、そこには彼の憧れの人、双葉が映っていたのだ。


 白のブラウスに茶色チェックコルセットフレアスカートによるガーリーファッション。髪はハーフアップのウェーブにアレンジされ、正に可愛さ全開のバレンタインコーデを魅せる彼女の姿に、黒木の気持ちは高まり自然と口が緩む。


店長

「君が双葉さんのファンだって高田君から教えてもらったよ。どうだい?そのポスターは」


黒木

「いや…なんていうか…やっぱり凄い人ですね、双葉さんは。とても綺麗です」


店長

「綺麗?うーん…これはどちらかと言うと綺麗というより【可愛い】じゃないかな?そう思わない?」


黒木

「あっ、はい。可愛い…ですね。でも、俺にはこのポスターの双葉さんはキラキラと輝いて見えたので、綺麗だな…って」


黒木のコメントに店長は思わず笑って、彼の肩に手を乗せた。


店長

「ハハハ、やっぱり黒木君は少し変わってるね」


黒木

「すみません店長。…こういう時は可愛いって思えばいいんですね?勉強になります」


店長

「真面目すぎだよ、黒木君。…まぁ、いいか。取り敢えずそのポスターは君に任せたよ」


黒木

「はい、わかりました」


店長の指示に黒木は機嫌良く店頭まで向かい、綺麗な彼女が一人でも多くの人に見てもらえる様にと、心に思いながらポスターを貼り付けた。


………



AM10:40 Sunna メイクルーム


 今日は聡が双葉の長髪を利用した様々なヘアメイクを試したいと朝からメイクルームに呼び出され、彼に付き合っていた。


 双葉は椅子に座り、好きに髪を触らせ何も気にする事なくスマホを触り続け、つぶグラのタイムラインを眺めている。


 時折流れてくる広告はバレンタイン関連のものばかりで彼女は特に気にしていなかったが、偶然にもその広告が目に映った聡は、作業を集中しながらも口を動かす。


「双葉ちゃん、今年こそはアティシに手作りチョコちょうだいよ〜ん。去年明美ちゃんには作ったんでしょぉ〜?」


双葉

「ええー、やだ。作るのめんどくさい」


その言葉に聡の手が一瞬で止まる。双葉は振り返ると彼はの目はぎょろりと見開き、あんぐりと口を開いたまま動かなくなっていたのだ。


双葉

「…そんなショックだった?」


「…酷い!!アティシと双葉ちゃんの友情はその程度だったわけ!?アティシ、悲しくて泣いちゃう!!」


泣くフリをする彼に双葉は面白がってスマホを向け撮影する。


双葉

「だって去年と比べたら今年は凄く忙しいんだもん。【パーフェクトモデル】には手作りチョコを作る余裕も与えてくれないのだよ、聡ちゃん」


「それは確かにそうだから突っ込みづらいわ」


いつものノリに合わせながら再び双葉は体を前に向けてスマホを触り出し、聡も再びヘアメイクに取り掛かる。


「それじゃあ今年は誰にもあげないわけ?」


双葉

「そんな事ないよ。作る時間がないなら、出来上がってるのを渡せば解決じゃん?予約してるのがあるから、それをみんなに渡すよ」


「あらやだー準備がいいのねー双葉ちゃーん」


双葉

「知ってるー」


「因みにどんなチョコなの?」


双葉

「GOLDY」


「ふーん、無難な選択ねぇ。【パーフェクトモデル】様がチョコにも拘らなくてもいいわけーん?」


双葉

「配る人、一人一人被らないように、特注で頼んだから一箱5万だよ」


「物凄く拘ってますね。流石は双葉様で御座います」


双葉

「手のひらくるっくるじゃん」


一通りのヘアメイクを試し終えて、聡は双葉の横に立つと彼女の顔を覗き込む。


「…ねぇ、やっぱり黒木ちゃんにも渡すの?」


その質問に双葉はスマホを触っている手を止めて、聡の方へと顔を向ける。


双葉

「気になる?」


「そりゃあー気になるわよー!!…ほら?異性だし?彼ちょーイケメンだし?…ほら、ね?ね?やっぱりそういうの??」


今日の聡はウザさが増していて面倒だ。双葉はジト目で返す。


双葉

「もしかしてだけど…私が黒木さんに本命チョコをあげるとか期待してるの?」


「いやぁ〜??別にぃ〜??ただまぁ?お二人さんめっちゃ仲良しだすぃ??双葉ちゃんも黒木ちゃんに、ドキがムネムネしてたりなんてあるかもだすぃ〜??」


若者の恋愛事情に興味津々な彼は、体をクネクネと揺らしウザったらしく話しかけてくる。これが双葉でなければ誰しもが彼に腹立つだろう。


双葉

「私と黒木さんはそんな関係じゃありませ〜ん。残念でした〜」


「えぇ〜ん?せめて彼だけでも作ってあげたらぁ〜??きっと、黒木ちゃんは双葉ちゃんの手作りチョコ、食べたいと思うわよ〜ん??」


双葉

「んー…そうかなー?」


彼女の反応に聡は期待を膨らませる。


「…もしかして作る気になっちゃった?」


双葉

「だから忙しいってば〜」


聡はニヤつきながら双葉から離れて机に置いてある小道具の整理を始める。聡が離れるのを確認すると、彼女はつぶグラを閉じて検索画面を開いた。


…………



2月14日 PM12:31 スーパー・リコリス



 バレンタイン当日がやってきた。リコリスでいつも通りに働く黒木も、本日はパートの人達からチョコを受け取っていた。手作りというわけではなく市販のチョコだが、彼の日頃の働きぶりに感謝して渡しているのだ。


 昼の休憩時間になると、彼は受け取ったチョコを机に纏めて置く。その数は10個以上、いつもは弁当を用意して食べる黒木もこれだけの量に消化すべく、今日は弁当代わりに食べている。


ジュリ

「おはようございま……うわっ」


昼から出勤予定だったジュリが休憩室に入ってくると、山積みに置いてチョコを食べ続ける彼の姿に驚いた。黒木はジュリに気付いて振り返る。


黒木

「おはよう、神田さん」


ジュリ

「ハァー…やっぱ顔が良い人はこんなに貰えるもんなんですねぇ」


ジュリは椅子に座ると、山積みのチョコ箱を横から一つ手に取り、彼の許可なく勝手に開けて食べだす。相変わらず黒木はその行動すら気にせず、他のチョコを食べ続ける。


ジュリ

「私もさっきまで事務所に居たんですけど、双葉先輩から貰えましたよ」


黒木

「双葉さんから?」


そしていつも通り双葉の話題になると黒木は直ぐに反応する。ジュリは悪そうにニヤつき、自身のバッグを漁って高級チョコ【GOLDY】の箱を取り出して彼に見せた。


ジュリ

「しかもGOLDYですよ?羨ましく思っちゃいました?」


黒木

「おお、高級チョコを貰えたんだ。良かったね、神田さん」


素直に他人の良いことを喜ぶ彼に、ジュリは大きく溜息を吐いた。


ジュリ

「やっぱり黒木さんって、つっまんないですね…」


黒木

「…?」


ジュリ

「いや…気にしないでください」


 二人がチョコを食べていると再度休憩室の扉が開く。振り返るとそこには、おしゃれなサングラスをかけてオールバックをキメた高田が遅番として出勤。その姿に思わずジュリは、食べていたチョコをポロリと落として固まった。


黒木

「おはよう、高田」


高田

「ふっ…黒木。おはよう」


黒木は彼の容姿を気にせずいつも通りの挨拶を交わす。高田は洗礼されたモデルウォークで、固まったままのジュリの前へと歩いてきた。


 何をするんだと思うのも束の間、彼はとても綺麗なフォームで彼女に【土下座】を披露する。


高田

「ジュリ様。非常に自分勝手な頼みだと重々承知なのですが、こんな何の取り柄もなく心の狭い大人に、どうかバレンタインチョコを一つ頂けませんでしょうか?」


あまりにも強烈な情報量に、ジュリは固まったまま困惑し続けている。黒木はこんな状況であろうと気にせず、引き続き彼女の隣でチョコを食べる事に専念していた。


ジュリ

「…え?私からチョコ貰いたくて、態々そんな事してるんですか?」


高田

「はい。仰る通りでございます」


ジュリ

「……そうですか」


ジュリは黒木の山積みになっているチョコ箱をもう一つ手に取ると、そのまま高田に渡した。


ジュリ

「はい、ハッピーバレンタイン」


高田

「ありがとうございます!!ジュリ様から頂いたチョコ、大切に…ってちがーう!!これ黒木が貰ったもの!!」


高田は立ち上がり山積みのチョコ箱へと丁寧に返却する。いつもの高田に戻った。


高田

「ジュリちゃん、バレンタインチョコ持ってきてないの!?なんで?!」


ジュリ

「なんでって…バレンタインだからって、チョコ絶対渡せってわけじゃないでしょ?」


高田

「俺はジュリちゃんから貰いたかったんだよー!!ジュリちゃんのバカー!!」


ジュリ

「えぇ…良い大人が恥ずかしくないんですか?」


不貞腐れている高田に、流石に黒木も苦笑いして見ていた。


 すると黒木のスマホに電話が鳴り出し、彼は二人の様子を横目に休憩室から出て行く。外に出るとスマホを耳に当てて繋げた。電話相手は双葉からだった。


黒木

「もしもし、双葉さん?」


双葉

『あっ!黒木さん!今、大丈夫?』


黒木

「大丈夫ですけど…どうしましたか?」


双葉

『渡したいものがあるんだけど、今日の夜は大丈夫かな?』


黒木

「勿論大丈夫ですよ」


双葉

『ありがとう!21時にナナ公像前に来てくれるかな?』


黒木

「21時ですね、わかりました」


双葉

『それじゃあ、また後で!』


双葉は急いでるかのように電話を切った。彼女は相変わらず忙しいのだろう。バレンタインの日に渡したいもの…いつも鈍感な黒木でもそれが何かは大体察しがついた。


黒木

「双葉さんからも…?貰っていいのか…?」


彼は遠慮気味になりながらも、内心はウキウキしながら休憩室へと戻るのであった。



………


PM12:50 Sunna事務所 休憩スペース



双葉

「よしっと♫」


嬉しそうに電話を切ると後ろへ振り返る。そこにはまだかまだかと疼いて待つ聡と春香が並んで立っていた。


双葉

「お待たせ二人とも♫はい、ハッピーバレンタイン!」


双葉はテーブルに置いてあった紙袋からGOLDYのハート型チョコを二人分取り出して渡す。二人はまるで、表彰式で受け取るかのように有り難く深々とお辞儀をして両手を伸ばし受け取る。


春香

「ありがとうございます双葉様。このチョコは家宝として我が家で飾らせていただきます」


双葉

「うん、普通に食べて?」


「アティシは男共にマウントを取る為に今から見せびらかして自慢してきます」


双葉

「大人として恥ずかしいからやめて?」


細田

「何やってるのよ貴方達…」


缶コーヒーを片手に、呆れた目で細田がやって来る。


双葉

「細田さん!ハッピーバレンタイン!」


双葉は紙袋から二人とは別タイプのオシャレな金の柄が描かれているGOLDYチョコを細田に渡した。


細田

「あら、ありがとう。とても綺麗な容器ね」


これには細田も嬉しそうに受け取り双葉へ微笑む。彼女も大切な人へ渡せて満足げにニコニコとしている。


双葉

「えへへ。世界に一つだけしかない特注品だよ。凄いでしょ?」


細田

「そこまでしなくてもいいのに…でも、ありがとう。嬉しいわ」


春香

「うわー。すごい綺麗な柄ですね。流石、双葉さんのセンスが光ってますね」


「えぇ!?ちょっと待って!?アティシとハルちゃんの容器は同じなんですけどォ!?ドユコトー!」


双葉

「ごめーん。流石に一人一人特注は今からじゃ間に合わないって断られちゃったから」


「キィー!明美ちゃんだけずるぅーい!」


双葉

「あはは、聡ちゃんおもしろーっ♫」


細田

「大人気ないわよ聡さん…」


地団駄を踏み態とらしくハンカチを噛み悔しいアピールをする聡は、双葉にはウケが良くて笑いながらスマホで撮影していた。


 すると、春香は自身のバッグからいそいそと手作り感満載のチョコを包んだ透明袋を取り出して双葉へ差し出す。


春香

「双葉さん!こんなクオリティで申し訳ないんですけど…受け取ってくれませんか!?」


双葉

「えっ?いいの?」


双葉の反応は意外にも驚いていた。というのもこれまでファンから届いたチョコは沢山と受け取ってきたが、Sunnaモデルの人達からは貰ったことがなかった。


 それが彼女にとっては普通だと思っていたので気にしていなかったが、春香から渡されたチョコは【友チョコ】として初めて受け取ったのである。春香はモジモジと、恥ずかしそうに視線を逸らしながら話す。


春香

「勿論です。寧ろ受け取ってくれて嬉しいです!その、双葉さんは私の憧れですし…ずっと友達でいたいって思ってますので…えへへ…」


双葉

「…春香ちゃ〜ん!」


春香

「わぁ!?」


彼女の言葉に双葉は感極まり飛び付くように抱きしめる。抱きしめてる腕はいつも以上に強い。


双葉

「やっぱり春香ちゃんは大切な後輩だよぉ〜これからもずっとずっとよろしくね」


春香

「…!は、はい!勿論です双葉さん!」


春香も嬉しそうに抱き返し、尊い光景に大人二人組は微笑ましく見つめていた。


細田

(素敵な後輩がいて良かったわね、双葉)


「うぅ…なんてファンタスティックな友情なのかしら…」


双葉

「聡ちゃんにはホワイトデー期待してるからね?」


「あらま〜♡アティシのお財布ピンチの予感〜♡」


春香

「そうだ双葉さん!今夜私の家で一緒にチョコを堪能しませんか?ジュリちゃんも来ますよ!」


双葉

「おっ、いいねぇ〜!明日は休みだから大丈夫だよ!…でも、ちょっとだけ遅くなるかもしれないなぁ」


春香

「?何か予定があるのですか?」


双葉

「ふふっ、まーね」


………


PM20:48 ナナ公像


 体が冷える寒い夜の集合場所は平日の夜だけに、人が全く居ない。一度帰ってから厚着のコートを着て、先に着いていた黒木は一人、像の前でじっと立って待っていた。


双葉

「黒木さーん!」


黒木

「!」


いつもの明るい呼び声が黒木の瞳は輝かせ、声のする方へと振り向く。そこには元気に手を振りながら此方へ走ってくる双葉がいた。


黒木

「双葉さん」


双葉

「お待たせ黒木さん!はい、ハッピーバレンタイン〜♫」


彼の前まで来ると、彼女はコートのポケットから小さな四角の箱を取り出して直ぐに黒木へ渡す。箱の容器には【GOLDY】と書かれている。


黒木

「ありがとうございます。GOLDYのチョコは食べた事ないので嬉しいです」


双葉

「あっ、そうなんだ!GOLDYはちょー高いチョコだから、一度食べたら普通のチョコに戻れなくなっちゃうかも?」


黒木

「ハハ、それは食べるのも勿体無いかもしれませんね…あっ、そうだ。双葉さんが映ったGOLDYのポスター、見ましたよ。凄く綺麗で良かったです」


双葉

「あっ!見てくれたんだ!ありがとう!でも〜…綺麗というより…可愛いって言ってくれた方が嬉しいかな?」


そう言って彼女は揶揄うように上目遣いで彼を見つめる。だが、黒木は彼女が求める言葉なら迷う事なく言うだろう。


黒木

「あっ、そうだった。こういう時は可愛い…でしたね。はい、確かに可愛いとも思いました」


双葉

「…もっと照れて言ってほしかったんだけど」


黒木

「?」


期待していた反応ではなく残念そうにジト目で彼を見つめる。


黒木

「…でも、良いんですか?俺なんかが双葉さんからバレンタインチョコを貰ったりなんてして…」


双葉

「あったりまえじゃん。黒木さんはとっくに私の大事な人の一員なんだからさ。受け取ってくれないと私が嫌なの」


黒木

「そうですか、ありがとうございます。…何だか照れますね」


彼はその言葉に嬉しそうに微笑み双葉に頭を下げる。


双葉

「えへへ。…後さ、食べ終えたら感想聞かせてほしいな?」


黒木

「勿論です。この後早速いただきますね」


双葉

「うんうん。…それじゃあ渡したいものも渡せたし、この後用事があるからもう行くね!」


黒木

「はい。また会いましょう」


双葉

「バイバーイ!」


彼女は手を振りながら駅へと戻っていく。黒木も彼女の姿が見えなくなるまでその場で手を振り続けた。


………


 家に帰ってきた黒木は早速双葉から貰ったGOLDYのチョコを開封する。中には綺麗な球体型のチョコが四つ入っていた。


 箱から一つだけ取り出して口に入れる。双葉の言っていたように、チョコは口の中で蕩け甘みが広がり、普通のチョコには戻れない程に非常に美味しいものであった。


黒木

(美味しい。流石は双葉さんが選んだチョコだ)


黒木

(…そう言えばGOLDYのチョコって、幾らするんだろうか…?)


 高級チョコを満足気に食べる黒木はふと気になると、スマホを取り出してGOLDYのサイトを調べる。黒木は自身が食べているチョコの箱と、紹介されている商品を見比べていく。


 しかし、不思議な事に黒木が食べているタイプのチョコは公式サイトで紹介されておらず、一切見つからない。


黒木

「…あれ?」


自分の食べていたチョコとサイトを何度も見返す。暫く考えて出た彼の答えは


黒木

「…特注?」


 果たしてそれが特注なのか、双葉が作ったものなのか、答えを知るのは彼女だけ。しかし黒木にとってはそんな事はどうでもよく、憧れの人から貰えた事が幸福であって、GOLDYのチョコを純粋に心ゆくまで堪能するのであった。




 その夜。春香の家でチョコパーティーを満喫して自分のマンションへと帰ってきた双葉。暗闇の中電気を付けて回り、遊び疲れた様子でベッドへとダイブする。


 ふと寝転びながらスマホを見ると、黒木からメッセージが届いていた。先程まで疲れていた表情も目が見開き、直ぐ様うつ伏せの姿勢で確認する。


【バレンタインチョコ、ありがとうございました。GOLDYのチョコは初めて食べたのですが…とても優しい味がしました。流石は高級チョコですね】


双葉

「……」


双葉

「えへへ…」


彼のメッセージに双葉は嬉しそうにニヤつき、うつ伏せで足をゆらゆらと揺らす。


双葉は気付いていないが、彼女の頬は桜のように淡く染まっているのだった。



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