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Re:LIGHT  作者: アレテマス
第一幕
30/143

16.5話【双葉大好き女子クラブ】②



AM10:08 Sunna カフェスペース



フレン

「いやー。まさか双葉ちゃんが来てくれるとは思ってなかったよ」


双葉

「今日の仕事は午後からだし、Sunnaのスタジオでの撮影だから午前中はゆっくりできるんだ」


春香

「そうなんですね!それなら是非とも私達と一緒にガールズトークで盛り上がりましょう!」


双葉

「うん、いいよ」


フレン

「それじゃあここは一つ…私から話題を…って、あれ?あそこの席に座ってるのジュリちゃんじゃない?」


春香

「あっ、本当ですね!ジュリちゃーん!おはよー!こっちで一緒に喋…」


春香の元気一杯の呼び声は、ジュリの顔を見て詰まる。


嫌なことがあったのだろう。恐ろしい程怖い顔をしていて激しく足を揺すってる。今日のジュリは刺々しい頃を思い出させるぐらいに機嫌が悪い。


 フレンと春香はまだこちらに気付いていないジュリをじっと見て固まったままだ。


フレン

「…あれはそっとしておくべき?」


春香

「え、えーっと…」


双葉

「おはよージュリちゃん」


怖いもの知らずの双葉は笑顔でジュリに近付く。


ジュリ

「おはようございます双葉さん。今は放っておいてくれませんか?」


双葉

「そんなこと言わずにさ、こっちでみんなとお喋りしようよ?」


ジュリ

「チッ…」


大きく舌打ちを鳴らすも、彼女が引くことがないのをわかっていたジュリは渋々と此方のグループの席へと座った。指をトントンと机を突きながら苛々ともう片方の手でスマホを見ている。双葉もグループに戻ってきてニコニコと座る。


フレン

「こほん…ジュリちゃん合流したわけですし…では気を取り直して、私から話題をー…」


双葉

「あっ、どうせだし聡ちゃんも誘おうよ。もう事務所には来てるはずだし」


春香

「あっ!良いですね!呼びましょう!」


フレン

(ナイス双葉ちゃん!聡ちゃんならこの場のムードをよくしてくれて、きっとジュリちゃんの機嫌も良くなるぞって考えね!)


双葉はスマホを取り出し聡をメールで呼ぶ事にした。


……数分後


「お待たせ」


フレン

「聡ちゃん!待ってたー……」


声がする方に、フレンと春香が振り返るが思わずまた固まってしまった。


 髪は整わずグチャグチャに乱れ、メイクもまともに出来ていない。死んだ目で遠くを見つめるようなボケーっとした聡がそこに立っていた。


フレン

「…聡ちゃん?」


「はい。僕が聡です」


声に覇気がなく、野太く低い声で聡は答える。いつものファンタスティックが抜け落ちた彼の姿に双葉は面白がってスマホで撮影を続けていた。


春香

「…な、何かあったんですか?」


聡は遠くを見つめながらグループに加わり椅子に座る。


「今日の朝食…納豆の買い溜めを忘れて食べれなかった…」


春香

「な、納豆?」


双葉

「あっ、春香ちゃんは知らないだろうけど、聡ちゃんの朝食は白ご飯と味噌汁と納豆の三つって決まってて、どれか一つでも抜けるとこうなるんだよね」


フレン

「ええー……理由がしょっぱい…」


「あっ、僕の事は気にしないでお話を楽しんでください。はい」


春香

(いや無理ー…!!)


ジュリ

「……」


聡の珍しい姿を一瞬たりとも見る事なくイライラしながらジュリはスマホをずっと触っている。


滅茶苦茶に機嫌が悪いジュリ。この世の終わりのような顔で、ただ声の低いおっさんになってしまった聡。


フレン

(地獄か…?)


フレンはこの状況に恐怖を感じる。


フレン

(ダメよフレン…!双葉大好き女子クラブのメンバーが大変だっていうのに何もしないなんて!ここは私が何とかしないと!)


フレン

「で、では!今度こそ私からお話しするね!」


フレン

「昨日のことなんだけどさ。KENGO社長がこっそり書類整理を抜け出して外出しようとしてたのを秘書さんにバレちゃったみたいでー…廊下で説教が始まったと思ったら、周りに人がいるのに社長は土下座なんかしちゃったんだよ!やばくない!?」


春香

「そ、それはやばいですねー!ねぇ、双葉さん!」


双葉

「ウケるー」


双葉はスマホでつぶグラ見ながら適当に返事をする。


フレン

(もう飽きてるー!!)


フレンは助けを求めるように春香に視線を向ける。それに気付いた春香は、しっかりと頷き話題を続ける。


春香

「ど、土下座と言えば!聡さんもKENGO社長に怒られて土下座をしてましたよね!」


「そう。でもそれは全部僕が悪いから。言う事を聞かず、好き勝手にメイクや衣装の予算をオーバーしまくる僕の責任です。本当に社長には申し訳ないと思ってます。こんなカスみたいな人間でごめんなさい」


フレン&春香

(えぇぇー……)


あまりにもネガティブすぎてドン引く二人。


ジュリ

「そんな事ないですよ、聡さん」


「?ジュリちゃん…?」


春香

(!フォローするんだね!?ジュリちゃん!!)


ジュリ

「聡さんはカスみたい、じゃなくてカス人間ですよ。いつもウザ絡みしてくるしクネクネしてるしSunnaに迷惑かけてるし、貴方は正真正銘カスです」


フレン

(ウオォーイ!!ジュリちゃーん!?)


「そうか。僕はカスだったか…調子こいてすみませんでした。今日から僕の事をカスと呼んでください」


春香

(物凄く落ち込んでるー!!!)


双葉

「ねぇ、二人とも」


フレン

(!!女神様降臨!!救済をお願いします!!)


双葉

「お腹空いたからケーキ頼んでもいい?」


春香

(今!??この状況で!?!)


この状況ですら双葉は自由気ままにケーキを注文するのにカウンターに行ってしまった。残された春香とフレンは、この重い空気に耐えきれず何も言えずに黙り込んでしまう。


一人イライラしているジュリは遂に立ち上がる。


ジュリ

「もう行きますね」


春香

「!ま、待ってジュリちゃん!もっと話そうよ!?ね!?」


ジュリ

「これ以上何を喋るんですか。今は一人にしておいてください」


フレン

「ジュリちゃん!何かあったのなら私達が聞くよ?」


春香

「そう!そうだよ!私達に頼って良いんだよ!」


ジュリ

「ハァ?何で貴方達が聞くんですか?別に貴方達が私の愚痴を聞いても良いことなんて何も…」


春香

「可愛い後輩を放って置けるわけないじゃん!」


ジュリ

「……春香さん」


フレン

「それにさ、私達は【双葉大好き女子クラブ】のメンバーでしょ?仲間を助け合うのも当然じゃん?」


そう言って決まったかのようにウインクをするフレン。ジュリは何言ってんだこいつと言いたげな表情を見せながらも、今はそのおふざけが不思議と面白く思えた。


ジュリ

「…フフッ…メンバーになった覚えはありませんけど、聞きたいのなら聞かせてやりますよ私の愚痴を」


ジュリは戻ってきて椅子に座る。果たしてどんな愚痴が出るのか、二人は唾を飲み込み構える。


ジュリ

「自分らしさを大事にしようと思って、マネージャーに仕事をパンク系ファッションで探すように頼んだんですよ」


ジュリ

「…そしたら拾ってきた仕事がロリータ系のファッション。ド派手なピンク一色のフリフリなワンピースを着せられて…マッッッジで最悪でした。仕事終わった後、思わずマネージャーを蹴って言ってやりましたよ。『パンクとロリータは別物だろ!』って」


大きく溜息を吐くジュリに、二人は口を開きポカンとした表情になっていた。


フレン

「…え?それがイライラしてた理由?」


ジュリ

「あ、はい。マジありえなくないですか?ロリータでもゴスロリとかならギリ許しますけど、『ラブラブキューン♡』とか言ってそうな服を私に着せるなんてバカすぎるでしょ」


春香

「そ、そんな事ないと思うけど…」


ジュリ

「はぁ?」


フレン

「いや…まぁジュリちゃん可愛いし普通に似合うでしょ」


ジュリ

「お二人もファッキンクソマネージャーと同じ事言うんですか!?私が着たいのは最高にロックでクールな奴ですよ!!」


春香

(内山さん酷い言われようだな…)


双葉

「因みにロリータを着たジュリちゃんは此方です♫」


人数分のケーキをトレイに乗せて戻ってきた双葉は、スマホと一緒に机に置く。


 映し出されたスマホ画面には、確かにロリータ特集で可愛いロリータファッションをきているジュリが映っていた。


ジュリ

「ア"ァ"ー!!?」


見られたくないものを見られ、これにはジュリも思わず汚い声で悲鳴を上げる。先輩方は目を輝かし彼女のファッションを見ている。


フレン

「ええー!やっぱり可愛いじゃん!すっごい似合ってる!」


春香

「何でもっと早く教えてくれなかったのジュリちゃん!?これ保存して良い!?」


ジュリ

「ダメに決まってるでしょ!?あぁもう!やっぱり言うんじゃなかった!」


双葉

「そんな事ないよジュリちゃん」


ジュリ

「はい!?」


双葉

「二人はさ、適当に言ってるんじゃなくて、本当に似合ってるから褒めてるんだよ。私もすっごく可愛いと思う」


双葉はジュリに寄り添いニコッと頭を撫でる。双葉の温かい言葉に、ジュリも照れてしまい顔を赤めてそっぽ向く。


ジュリ

「……まぁ……似合ってるなら……いい……か?」


春香

「今度買いに行く?私ロリータ専門ショップ知ってるよ!」


ジュリ

「いや…本当に勘弁してください…」


フレン

「とりあえずジュリちゃんも落ち着いたようだし無事解決ね!流石は会長、素晴らしき神対応でございます」


双葉

「あはは、なんかよくわかんないけど、私って会長だったんだ。まーとりあえず、みんなの分のケーキも持ってきたから食べよっか」


春香

「ありがとうございます!一件落着…」


「じゃなーい!!!!」


突然聡が絶叫を上げて勢いよく立ち上がり、周りはビクッと驚いた。


「アティシは!!?アティシは放置プレイなの!?慰めてくれないの!?」


フレン

「……いつもの聡ちゃんに戻ったし、これで解決だね」


ジュリ

「あっ、はい。そうですね、早くケーキ食べましょう」


周りは聡を気にせずケーキを食べ出す。


「ヤダヤダー!!アティシもジュリちゃんみたいに優しくしてもらいたーい!!もっとアティシの悩みを聞いてー!!」


双葉

「聡ちゃん」


「!!やっぱり双葉ちゃんはわかってくれるのねん!!それじゃあ聞いてくれる!?アティシの納豆への愛の物語を…!!」


双葉

「静かに」


「はい、すみません。ケーキ頂きます」


双葉の一言に一瞬にして静まり、丁寧にケーキを食べ出す行動には思わず三人も吹き出してしまった。



………



別の日


リコリスの休憩室にて黒木とジュリは休憩が被り、お互いに椅子に座りながらスマホを触っている。


ジュリ

「黒木さん」


黒木

「?どうしたの神田さん?」


ジュリ

「もしも私がロリータファッション着ると、可愛いと思いますか?」


黒木

「ろ、ろりーた…ふぁっしょん…??」


ジュリ

(あっ、この反応そもそも知らない奴だ)


ジュリ

「すみません。今のは忘れ…」


黒木

「そのファッションがどんなものかは俺にはわからないけど…神田さんはとても綺麗なモデルだし、どんな衣装でも凄く似合うんだろうなって思ってるよ」


ジュリ

「…ソーデスカ」


黒木

「…?」


彼の言葉に双葉の友人が何故黒木なのかを、今一度理解した気がする。彼の嘘偽りなく褒めてくれる言葉はあまりにも純粋で優しく、双葉の心を癒しているのだろうと。


ジュリ

「…黒木さんってもしかして女誑しですか?」


黒木

「おんな…たらし…??」


ジュリ

「…いや、ないな。うん、この人絶対そんな人間じゃない」


黒木

「???」


ぶつぶつ一人で納得しているジュリを黒木は不思議そうに見つめるのであった。



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