13話【幸せの形】
司会
「見てますか皆さん!?16年ぶりに果たせた親子の再会は、日本中に感動を届けております!完璧な父と娘は、我々に愛を届けてくれました!!」
司会
「この瞬間をずっと見ていたいのですが!ここから先はお二人だけの時間を配慮して帰っていただきます!お二人とも、本当に我々に感動をありがとうございましたー!」
二人は集まった人々に祝福され、仲良く手を握り、観客へと手を振り返しながら送迎車へ乗り込むと、車は直ぐ様走り出し中継場所から離れるのであった。
ジュリ
「終わりましたね」
高田
「はー…マジで良かった…こんなに泣いたの初めてかもしんねぇ…」
黒木
「……」
満足そうな高田とは別に、黒木は顎に指を当てじっと考え込んでいる。それに気付いた高田は彼の背中を叩いた。
黒木
「いた…!?」
高田
「お前ぇ!こんな時に何考えてんだよ!双葉ちゃんマジ凄かったろ!?」
黒木
「…そうかな。俺にはそう見えなかったよ」
高田
「ハァ!?」
ジュリ
「はいはいもうここに用はないんで帰りましょーね」
高田
「いだだだだ!?ジュリちゃん抓らないで!?抓るならもっと優しくして!?」
詰めかける高田を止めるようにジュリは彼の腕を摘み引っ張って先にエレベーターへと向かった。黒木は苦笑いしながら見送り、改めて一人で考え込む。
黒木
(双葉さんと出逢ってずっと見てきたからわかる。あの笑顔は作りものだって…それに父親に歩み寄るあの姿も…まるで近寄りたくないものへ近付くようにも見えた…)
黒木
(…あれが本当に感動するものなのか?)
広場の方へと目を向けると、まだ残っている人々は喜びを共感し合い、つぶグラを開けばハッシュタグ付きで、双葉へのメッセージでタイムラインは埋め尽くされ大バズりを起こしている。まるで二人を崇めるこの光景が、黒木には奇妙に見えた。
黒木
(…双葉さんは、見ている俺達に合わせて自分を演じてるのか?)
彼の疑問は結局解けぬまま、二人を追うようにエレベーターへと帰るのであった。
…………
双葉
「ここでいいです。下ろしてください」
運転手
「?目的地までまだもう少しありますよ?」
双葉
「いえ、ここで大丈夫です。お父さんと二人っきりで話しながら帰りたいので」
運転手
「そうですか。…わかりました」
二人を乗せた送迎車は人が全く歩いていない静かな場所にて止まる。秀樹は先に降りると、運転席へ顔を覗かせ愛想良く微笑んだ。
秀樹
「運転手さん、ここまでありがとうございました」
運転手
「とんでもない。幸せなお二人を送れて私も光栄です。…それでは」
双葉も降ろして送迎車は走り去る。秀樹は双葉の方へ振り返り、手を差し出すも彼女は握ることなく先に歩き出してしまう。秀樹は握られなかった手の事を気にしながらも彼女の後をついていくように歩く。
秀樹
「凄かったな、双葉。みんなも俺達の事を最高の家族だと思ってくれてるよ」
双葉
「うん、そうだね」
秀樹
「テレビ局には感謝しないとな。ここまで派手にやってくれたのなら、何か御礼も考えないと」
双葉
「うん」
秀樹
「そうだ。アリケンさんは双葉と話したいと言っていたよ。今度、彼のチャンネルに出演してやってくれ。今回の件は彼のおかげでもあるからな」
双葉
「考えておくよ」
秀樹は嬉しそうに話し続け、双葉は淡々と返す。その反応が気になり、秀樹は早歩きで双葉の横にくっつくように歩き、彼女の手を強引に握る。
秀樹
「本当に会えて嬉しいよ、双葉。大きくなったな」
双葉
「……」
双葉
(…なんで父親ヅラしてるの?)
秀樹
「その…母さんは元気か?実はまだ会えてないんだ。…あっ、もしかしてそれに怒ってるのか?悪い、なんせ二人が引っ越してるとは思ってなかったからな」
双葉
「……」
双葉
(何も知らない…本当に最悪な奴だ)
秀樹
「お父さんな、反省しているんだ。この16年の間に、自分のしてきた過ちに気付いたんだ。だからどうしても双葉に会って謝りたくて…こんな大規模なことになってしまったが、また出会えてよかったよ。悪かった」
双葉
(…でも、これだけはわかる)
秀樹
「許してくれるか?双葉」
双葉
(私はコイツの【血】を確かに引き継いでいるんだって)
双葉は握っていた手を払い、秀樹の方へ体を向けると立ち止まった。彼女は笑顔で答える。
双葉
「反省したんだ、お父さん♫」
秀樹
「双葉…」
彼は抱きしめようと両手を差し伸べるが、双葉は一歩後ろに下がる。
秀樹
「?双葉?」
双葉
「ごめん、お父さん。私、明日も朝早くから仕事があるんだ。もう行かないと…」
秀樹
「!それは大変だ。それなら俺に構わずもう帰りなさい。今度、落ち着いた時にまたゆっくり話そうか双葉。…これ、電話番号だ。いつでもかけてきてくれ」
彼はメモ用紙に書いた電話番号を双葉へ渡す。
双葉
「ありがとう」
秀樹
「双葉の電話番号も教えてくれないか?後、今は何処に住んで…」
双葉
「ごめん、本当に急いでるの。今度掛けるから、またね。お父さん」
秀樹
「あっ、おい!」
秀樹が話し終える前に双葉は背を向けて、振り返る事なくその場から走り去ってしまった。
…暫く街中を走り続け、息を切らしながらも後ろを振り返る。秀樹の姿は見当たらないのを確認すると、走るのを止めて立ち止まる。寒い夜中の冬でありながらも、温まった体に額から汗は流れ、胸に手を当てるとゆっくり深呼吸をして乱れた息を整える。
暫くして落ち着くと、双葉は歩きだしスマホを取り出して直ぐ様、電話を繋げて耳に当てた。
双葉
「もしもし細田さん。相談があるんだ」
…………
あれから一週間が過ぎた。
双葉と秀樹の生中継は脅威の【47.3%】の視聴率を叩き込んだ。日本のほぼ半数の人間は、二人の再会の瞬間を見守ったのだ。日が過ぎてもネットニュースや、つぶグラでは二人の話題が尽きることは無く、人々は彼等に夢中になっていた。
感動の親子として称され、ブルー色のカラーコンタクトは品切れを起こし、青色に関連する商品も二人の瞳を連想されバズっていき売れていく。今、間違いなく日本一有名な親子として知られているのだろう。それは【パーフェクトモデル】をより輝かせる功績として見られるのであった。
そんな中、休日を過ごす黒木は自宅にてスマホで双葉へ電話をかける。しかし、あれから何度試しても彼女から返ってくることはなく、つぶグラの更新も止まったまま一切情報がなかった。肝心な情報源であるジュリとはあの日から会えていない。あの時に見せた【嘘の笑顔】が彼女への心配を加速させていく。
全く繋がらない電話に諦めて、耳から離しテーブルに置くと天井の電気を細目で見つめて溜息を吐く。
黒木
(双葉さん…大丈夫かな…)
黒木
(何か他に手段は……そうだ!この方法なら…)
彼女の状況を確認する方法を考えていた黒木に、一つの可能性が導き出される。彼はスマホを再び手に取ると、あるアプリをダウンロードするのであった。
………
同日 PM15:05 Sunna事務所 会議室
秘書
「社長、連れてきました」
秘書が扉を開けて入ってくる。会議室にはKENGO、眼鏡を掛けた細田、メイクを一切していない素の聡が並んで座っている。
秘書が扉の横に待機すると、後からもう一人部屋に入ってきた。秀樹だ。彼の姿を見ると三人は立ち上がり深々とお辞儀をする。
KENGO
「初めまして、桜井秀樹さん。モデル事務所Sunna、代表取締役を務めるKENGOです」
秀樹
「はぁ…どうも。…あの、双葉は?彼女に呼び出されてここに来たのですが…」
KENGO
「その事も踏まえて貴方にお話ししたい事があります。どうぞ、其方へお座りください」
秀樹は状況をイマイチ把握してないまま、言われるがままに椅子へと座り、後から三人も座った。秘書は頭を下げると、扉を閉めて部屋から出て行く。
KENGO
「私のお隣に座って頂いてるのは双葉さんのマネージャーを担当している細田、ファッション&メイクを担当している矢澤です」
秀樹
「あ、そうなんですね。いつも双葉がお世話になっています」
彼の紹介に二人はもう一度頭を下げる。一通り紹介を終えKENGOは穏やかに話す。
KENGO
「親子の感動の再会、凄かったですね。視聴率も47%を超えたみたいですよ。あれからは双葉さんと会っているのですか?」
秀樹
「そうなんですよ。実家に戻る前に出来るだけ一緒に居たいと思ってたのですが、中々彼女に渡した電話番号にかけてくれなくて…」
KENGO
「はは、そうですか。ではあれから出会ってないと」
秀樹
「何処に住んでいるかも、電話番号も聞き忘れましたからね。それで、今日初めて電話がかかって来たと思ったら【Sunna事務所に今から来て】とだけ言われて、こうして来たわけなんですが…」
KENGO
「そうですか。…それは良かった」
秀樹
「…はい?」
KENGO
「いえ、貴方が双葉の居場所も電話番号も知らないのは好都合だって言いたいんですよ」
穏やかな口調から突如強い口調へと切り替わる。ここで漸く秀樹は、自分の状況に危機感を感じるが、もう遅かった。
KENGO
「桜井さん。私達は貴方がどんな人間なのかを彼女から聞いてるのですよ。世間には父親と名乗り現れましたが…16年前、【離婚】をしていますね?それも原因は貴方の【浮気】で」
秀樹
「!」
彼の身に纏った【嘘】を破る様にKENGOは続けて話していく。
KENGO
「他にも此方で少し貴方の事を調べましてね。海外出張も嘘で、ここへ来る前は偽名を使い、目立たないように田舎のアパートにひっそりと暮らしていたそうで」
秀樹
「な、何故それを…」
KENGO
「愛人も複数人と付き合って貯金が底をつく寸前で、何らかの方法で【元父親】と知られて、アリケンの出演を引き受け話題を呼ぶために【父親】を名乗り報酬金を貰いに姿を出した…そうですね?」
KENGO
「我々は【パーフェクトモデル】としてトラブルを避ける為に、貴方が父親を名乗った事を敢えて否定せず世間には公認しました。但し、貴方が取った行動をこのまま見逃す訳にはいかないのです」
秀樹
「…警察に突き出しますか?」
恐る恐る聴いてくる彼にKENGOは、冷たい目で見つめながら手を組む。
KENGO
「先程も言いましたが、我々は世間の目に映るトラブルを避けたいんです。それが【パーフェクトモデル】に響くのであれば尚更、ね」
KENGO
「…それに、離婚をしたと言えど貴方が父親である事は事実、警察もこれぐらいでは動かない可能性もあります」
秀樹
「それじゃあ何でここへ俺を呼ん…!」
彼が声を荒げる前に、細田は机の下から大きなシルバーのアタッシュケースを取り出し、ドンっ!と机の上に置いた。かなりゴツく重みのある音だ。
秀樹
「…?なんですかこれは?」
KENGOは彼の質問に応じるように、立ち上がりアタッシュケースの蓋を開いた。
秀樹
「…!!」
中が見えた瞬間、秀樹は驚き思わず立ち上がりそうになった。そこにはびっしりと分厚い札束が、隙間無く綺麗に詰められていた。
細田
「此方のアタッシュケースの中には【1億円】が詰められています」
秀樹
「い、いち…1億!?」
そのあまりにもデカ過ぎる金額に秀樹は驚き続け圧倒されていく。KENGOは冷静に話を続ける。
KENGO
「此方の1億の内訳は、5000万はSunnaが。残りの5000万は双葉が用意したものです」
秀樹
「ふ、双葉が!?…全然話が見えてこないぞ!どうしたいんですか!?」
KENGO
「この1億を貴方に譲ります」
秀樹
「…ハァ??」
KENGO
「…ですが、このお金を受け取るのに、貴方には飲んでもらいたい条件が【三つ】あります」
秀樹
「条件…?」
状況を理解出来ず困惑し続けている秀樹に、KENGOは冷静を保ち座り込んで、手を再び組んだ。
KENGO
「まずは一つ。この金額を受け取った後は、二度と公に出ないで姿を消す事を約束していただきたい。メディアには貴方の事を既に【海外出張で再び海外に行ってしまった】と公表をしようと考えております。…勿論、これだけの金額があれば、海外で暮らすのも出来ますが…そこは強制するつもりはありません」
KENGO
「二つ目は今回の話し合い、そして貴方が嘘をついていた事、或いは今後のメディアによる質問は、一切話さないこと。これ以上、事態をややこしくもしたくありません」
KENGO
「要は貴方は二度と表に出ないで、何事もなく生活をして頂きたい。それが、Sunnaが用意した【5000万】の条件です」
秀樹
「…?残りの5000万は?」
KENGO
「それは彼女に説明して頂きます、細田さん」
KENGOは横目で細田を見る。その合図に細田は頷き、秀樹に睨みを効かせ口を開こうとするも、先に彼が口を出した。
秀樹
「そうだ!双葉は何処にいるんだ!?まずはあの子と話を…!」
細田
「残念ですが彼女はここには来ないでしょう。…ですが、彼女から伝言は預かっています」
細田の強い口調が、秀樹を無理やり黙らせる。
細田
「【二度と私の前に現れないで】…以上です。このお金はその条件に、彼女本人が用意したもの。言い換えると…貴方への【手切れ金】です」
秀樹
「手切れ…金…だって?」
KENGO
「桜井さん。一方的に話して無礼なのは承知なのですが…このお金は、我々が本気だという意志表示で集めたものです」
KENGO
「もしも貴方が、本当に今からでも双葉さんとやり直したいと考えているのであれば、受け取らなくてもいいです。若しくは…あの子への愛でさえ【嘘】であるのなら…これ以上何も言わず、このお金だけを受け取って帰って頂けませんか?」
KENGOの問い掛けに、秀樹は力が抜けたまま目の前の一億円を見続ける。すると、彼は何かを思い出したかの様に咄嗟に顔を上げる。
秀樹
「そうだ!双葉の母さんと話させてくれ!まだあの人に相談が出来て…」
細田
「双葉の母は!!」
諦めが悪い彼に、キレるように細田が怒鳴り声を上げた。突然の出来事に彼はビクッと反応する。
細田は怒りを抑える震えた手で、掛けていた眼鏡を外して机に置く。いつも冷静な彼女がこれ程に怒りを表に出しているのは、聡やKENGOでさえ初めて見る光景だった。彼女は一度息を整え、発する。
細田
「…双葉の母は6年前に亡くなっています」
秀樹
「…え?」
細田の声は震えている。秀樹の態度が気に入らず怒りが込み上げてきているのを必死に抑えているのだろう。
細田
「…貴方は、元妻の名前を覚えていますか?」
秀樹
「な、何を言うんだ覚えているに決まってるだろ?ええと…【ミキ】だよ!」
細田
「違います。…やはり、貴方は【嘘】に塗れた汚い人だ。貴方が消えた16年前から双葉に何があったかも知らずに、よくもまあ平気な顔で出て来ましたね…!?」
細田の怒りは益々強くなる。
細田
「双葉は!絶望の中【パーフェクトモデル】と呼ばれ人々から愛される努力をしてここまで這い上がってきた!!その娘の功績に縋り、仲直りしようだなんてバカじゃないの!?」
細田
「双葉が貴方を抱きしめたのも人々が求めたから!!心の底から憎い相手を抱きしめた!!あの子の気持ちもわからずに…【父親】なんて名乗るな!!」
怒りのままに言い切った細田は酷く乱して、息が荒くなっていた。双葉を近くで見てきた彼女だから出せる強力な覇気は、部屋を一気に静まり返すのだった。
暫く沈黙は続いたが、ずっと鬼のような形相をしている細田を見つめていた秀樹は、突然可笑しそうに笑い出したのだ。
秀樹
「ハ、ハハ!…ハハ、アハハハ!!」
この状況に置いて笑い出す彼が不気味に見える。ずっと黙っていた聡も遂に口を開く。
聡
「…何が可笑しいのよ?」
秀樹
「ハッハッハッ!…いやいや、本当にすみません!ありがたーい説教話中に笑うなんて変ですよね!?でも、この人が可笑しく見えちゃって!」
聡
「…はぁ?」
秀樹
「いやだって、ねぇ!?この人、何であの子とは他人なのに、こんなにも自分の子みたいなツラして怒ってるんですかねぇ!?」
秀樹
「アンタが産んだわけでもないし育てたわけでもないのに、何をそこまで熱くなってんの!?」
細田
「…!」
彼の挑発的な発言に聡は立ち上がり、体を突き出して殴りかかろうとする。その行動に気付いたKENGOは、咄嗟に聡を後ろから抑え込んだ。
KENGO
「落ち着け聡君!殴っちゃダメだ!!」
聡
「双葉ちゃんと明美ちゃんの関係も知らずにどの口が言ってんのよ!?ケンちゃん!離して!!今コイツを殴らないと…アタシの気が収まらないわ!!」
KENGO
「ダメだ聡君!殴れば本当に警察沙汰になってしまう!そうなると、この条件だけじゃ済まないことになるぞ!!」
秀樹
「うわ…こっちのおっさんはオカマなのかよ。双葉の周りはキモいのが集まってるんだなぁ」
聡
「あ"ぁ''!?」
KENGO
「聡君!ダメだぁ!!」
KENGOも怒りに暴走する聡を抑えるのも限界を迎えようとした。しかし、
バンッ!!
聡
「…!」
机を力一杯叩く細田に一同は固まる。彼女は、ニヤついて見てくる秀樹を睨みながら震え声で話す。さっきまでは普通の男に見えていた彼も、今ではこの状況を楽しむ【悪魔】のように思えた。
細田
「それで…貴方はどうするのですか?受け取るのですか?受け取らないのですか?」
秀樹
「んー…そうだな。それじゃあ【受け取らない】」
聡
「なっ…!?」
秀樹
「…と、言えばアンタ達を振り回せて面白い事になりそうだけど…今直ぐ1億円が手に入るのなら、俺はそっちを選ぶね。どのみち受け取らない選択をした場合は、アンタらが俺の【嘘】を世間にバラすだろうし、それは俺が生きにくくて困る」
秀樹はアタッシュケースを閉じて、手提げ部分をしっかりと握ると立ち上がった。
秀樹
「俺も男だ。アンタらの条件、飲んでやるよ。表には姿を出さないしアイツの前にも出てこないのを約束する」
さっきまで【双葉】と呼んでいたのも、今では【アイツ】呼ばわりをする。彼には双葉への愛情が、微塵もなかったのだ。
秀樹
「まぁ精々ウチの娘を輝かせてくれよ。じゃ、この話は終わりという事で。…あぁ、そうそう。アンタらと会うのもこれで最後になるだろうから教えてやるよ」
秀樹
「アイツは確かに俺の子だ。【嘘】を身に纏う事でしか自分を輝かせる事が出来ない所は、見ていてそっくりだよ。そんな【嘘】に縋る俺もアイツも、最後は【絶望】に辿り着くんだろうね。…そんじゃ」
彼はそう言うと胸ポケットに挟んでいたサングラスを掛けて目を隠し部屋から出て行った。細田は俯き少しも動けず、聡は動揺する彼女に寄り添い肩に手を回す。KENGOは、ただその様子を見守るしか出来ず、部屋は暫く静かな時間が続いた。
秀樹が立ち去って少し経つと、扉がゆっくりと開く。
KENGO
「!双葉ちゃん!」
扉の先には双葉が立っていて会議室の話を聴いていたのだろう。彼女は悲しげに笑いながら言った。
双葉
「アイツ、何も変わってなかったよ」
………
秀樹はSunnaから出てくると、建物の方へと見上げて振り返る。
秀樹
「お前だけが幸せになるのは狡いよなぁ、双葉」
独り言を呟いて不気味な笑みを見せると、秀樹はスマホを取り出しながら片手のアタッシュケースをしっかりと握り締め、Sunnaから立ち去るのであった。




