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【完結】Re:LIGHT  作者: アレテマス
第三幕
135/150

65話【世界一のズッ友】


 …時刻は15時。人々はこの時間になると束の間の休憩を求めて最寄りのカフェやスイーツショップに駆け込む。人によってはこの時を心より楽しみにしている者もいる至福の時間だ。


 だが、そんな人々が其々の娯楽を楽しむ中にひっそりと紛れ、街のベンチにてジュリは足を組んで座っていた。パーカーのフードを深く被り、自分がジュリだと分からない様に隠している。



 春香に言われた言葉は、深く彼女の心を傷付けた。悔しいが彼女の言っている事は間違ってはいない。


 ダブル・アイはプロジェクトを始動してから確かに人気は上がっていってはいたが、スタコレに選ばれる程の実力には満たせていなかった。前回のスタコレからの辞退者の埋め合わせがあったからこそ、参加が出来ている事をすっかり忘れていたのである。


 腹が立って仕方がない。だが春香がそれを言ってきた事はもっと腹が立つ。せっかく仲良くなれたと思っていたのに、結局それは上っ面だけだったのだと。所詮春香も、他の奴等と同等で自分を馬鹿にしているのだ。


 だが、どうしても、その怒りの矛先を春香に向ける事は出来なかった。双葉の意思を継ぎ、蒼く染めたあの日から、ムカつく奴らは自分がどう罰せられようと、全員ぶっ飛ばすと意気込んで生きてきたが、今最も腹が立っている春香相手には何もする気力が湧かなかった。


 信頼していた人に裏切られたから?それとも正論を突き付けられて反論が出来ないから?何故この感情のままに動けないのか?それはジュリ本人にも理解が出来ず、ただただ俯き虚無となっていた。


 一つ分かるとすれば、今は誰にも会いたくない。この怒りと何かが混ざった感情で誰かに出会ってしまったら、またその人を傷付けてしまうかもしれない。自衛の為ではなく、相手の事を考え、ジュリは時が解決するのを、たった一人で待ち続ける。



 だが、そんな彼女の思いも、TMAを後にして数十分で壊されるのである。誰かがジュリの後ろからそっと忍び寄り、両腕でガバッと彼女に抱き付いた。


「だーれだ!!」


馬鹿に明るい声が後ろから聞こえてくる。ジュリは舌打ちを鳴らし振り返らず、不貞腐れた顔で返す。


ジュリ

「二奈」


二奈

「うえっ!?まぢ!?せいかーい!!ジュリっぺやるねぇー!!ウチらマジ相性良いんじゃね!?」


彼女に抱き付いたのは二奈である。ジュリが出て行ってから直ぐに追いかけて来たのだ。


 相変わらず一人で馬鹿騒がしく勝手に盛り上がり、彼女はウキウキと後ろから回り込んで隣にくっつく様に座る。


二奈

「ウェーイ!やっと見つけたよジュリっぺ!!もー!一人でどっかに行かないでってー!!ウチチョー寂しいんだってのー!」


ジュリ

「何しにきたの」


勝手に腕に手を回し、馴れ馴れしくくっ付いてくる二奈に無反応。それどころか、フードの下から見える横顔は、彼女はとても苛立っているのが伝わってくる。だが、二奈はそんな事も気にせずニカッと笑って【何しにきたの】への質問に丁寧に返すのだ。


二奈

「ジュリっぺに会いにきた!」


ジュリ

「一人にさせてって言ったよね」


二奈

「言った!!」


ジュリ

「じゃあなんできたの」


二奈

「ジュリっぺに会いにきた!!」


ジュリ

「…意味分かってる?」


二奈

「分かってる!!」


ジュリ

「だったら何で」


二奈

「ジュリっぺに!!会いに…!!」


ジュリ

「いや、もういい。ちょっと黙って」


二奈の馬鹿具合に、ジュリは余計に腹が立つ。だが、流石に空気は読める様で、二奈は一息付くと彼女なりに真面目に返した。


二奈

「いやね、にーににはめっちゃ止められたんよ?『ジュリちゃんが一人になりたいって言ってるんだから、回復するのを信じて待とう。今会うとブタれるぞ』って?でもでも!ウチはそんなの無理!!って言ったわけ!!」


二奈

「『友達が傷付いているのに、放っておくなんてそれは友達じゃない!!にーにのバーカーキング!』って言ってやったんよ。にーに、馬鹿って言われてめっちゃショックだったんだろうねー。ガーン!!って感じの顔で、その場で(うずくま)って動けなくなってたわー。マジワロチ!」


ジュリ

「…それは一馬さんが正しいな。今、アンタは私の尊重を無視して会いにきたわけだ。だから私にブン殴られても文句は言えないよね」


そう言ってジュリは片手の握り拳を見せつける。だが、二奈はキラキラとした目で、純粋な笑顔で、脅してくるジュリに寄り添う。


二奈

「ウェーイ!!殴って気が済むのならどんとこーい!!…あっ!顔に跡が残らない様にはヨロリンちょ!スタコレ控えてるしさー!」


ジュリ

「…本気(マジ)で言ってる?」


二奈

「マジマジ大真島!!…っていうかー、そんな心配もないって感じだしー?」


ジュリ

「は…?」


二奈

「ジュリっぺは大事だと思ってる人を殴れないっしょ?ウチらって、お互いを大事にしてる関係じゃん?」


ジュリ

「……」


まるで不意を突いた様な唐突な綺麗な言葉は、ジュリの握り拳をそっと下ろす。永遠にウザ絡みをしてくる彼女だが、自分の事を大事だと思っているのを知れると、殴る気も失せてしまったのである。二奈の返しに、ほんの少しだけ苛立ちが収まった。


そして、ジュリが落ち着いたのが分かった二奈は。横からハグし続けつつ突発的な提案をする。


二奈

「よっしゃ!ジュリっぺ!!ウチが来たからにはもう安心安全セキュリティ!!このヤバヤバ感情発散するには、いっちょ暴れに行くしかないっしょー!!」


ジュリ

「はぁ…?」


……


PM15:22 カラオケ店【マネクネコ】


二奈

「ヒュゥゥウウウ!!どーもっ!あざっしたぁー!!ウェーイ!!」


マイクを力強く握りしめ、歌い終わった後も音割れする勢いで叫び盛り上がる二奈。


 二奈に無理やり連れてこられた場所は最寄りのカラオケ店。入店する前から何度も帰ろうとするジュリを強引に引っ張り部屋を借りた。


 二奈は一人で流行りの歌を歌い続け、ジュリはどうでも良さげにソファの端っこでスマホを触ってる。一人で勝手に盛り上がっている状況だが、二奈は机の上にある、まだ使用されていないもう一つのマイクを手に取りジュリに差し出した。


二奈

「じゃーあー?そろそろジュリっぺの歌聴かせてくんねー?何歌う?あっ、デュエも全然オッケー的な?そーっすねー、今なら【AP2】?アーパツアパツ!!パツパツアパツ!!」


ジュリ

「歌わない」


二奈

「ありゃりゃ!あっ!じゃああれはいんじゃね!?【マツバヤシサンバ】!?最近めっちゃハマってるんよ!!ジュリっぺと一緒にアゲアゲしたい感じ?!オレ!!」


ジュリ

「だから歌わない」


二奈

「うーん…あっ!じゃあ【ファンタスティック⭐︎冬景色】はどう?サトシンゴの様にファンタスティックになっちゃってさぁ!!」


ジュリ

「歌わないって。…ていうか、あの人歌も出してたのか……」


二奈

「いや、この曲は【ジェントルマン鈴木】の曲だよ」


ジュリ

「誰だよ」


どれだけ誘ってもジュリは断る。


 しつこく誘ってくる二奈に呆れて彼女は大きく溜息を吐く。スマホをポケットへ戻すと彼女へ指を指して指摘した。


ジュリ

「さっきから何なの?歌いたくもないしここに来たかったわけでもないのにさ?ほんっと、自己中だよね、アンタ。少しは空気読めよ」


苛立っているジュリに気付いてはいるものの、二奈は何も変わらずニカーっと笑って全く引く事を知らない。


二奈

「ウチ、馬鹿だから空気読むの難しいんだよねー。でもでもー、空気を読めない代わりに24時間365日アゲアゲは任せろっていうか?!君の沈んだ心をドジャァァアンと盛り上げるし!!」


ジュリ

「バカらし…」


二奈

「ウェーイ!!バカでオッケー!それがウチの取り柄じゃーん?」


ジュリ

「いや取り柄じゃないでしょ」


何でもかんでもポジティブに捉える彼女に益々呆れてしまう。(かたく)なに歌わないジュリに、渋々と二奈は諦めた。


二奈

「チェー、ジュリっぺとトゥギャザーソングしたかったのにー。ま、いっか。じゃーあ、次は何歌おっかなー?ジュリっぺーなんかリクある?」


ジュリ

「ない」


二奈

「ドライで草。……あっ、そうだ!じゃあじゃあこの間ジュリっぺがエアーポッツで聴いてたアレにしよ!えーと……あったあった!おっほん!それでは聴いてください!【デーモンズユアードリーム】!」


ジュリ

(…カラオケで歌える様な曲じゃないだろそれ)


予約も済ませ、音楽が鳴り出すと二奈は音楽に身を任せ、その場のノリで歌い出す。


 歌のジャンルはヘヴィメタル。激しい演奏とシャウトが合わさり、二奈は両手でマイクを握って大きく頭を振りながら歌う。本人はヘドバンをしているつもりだ。…だが、そもそも曲そのものを知らずに選曲しただけに音程がまるで合ってないし、リズムも滅茶苦茶である。


 しかし、二奈にはそんなのは関係がなかった。全力で叫んで、体揺れるぐらいノリノリになれたら何だって構わない。


 初めは冷たい視線で見ていたジュリも、何事にも100%で取り掛かる彼女のスタイルは、徐々に足がトントンと床を踏みリズムを刻んでいた。ジュリのロック魂に熱が入っていく。


 そして、一番盛り上がるであろうサビに突入する寸前。机に置かれていたマイクを手に取りジュリは勢いよく立ち上がるとマイクに向かってビリビリと叫んだ。


ジュリ

「ヴォ"ォ"ォ"ォ"オ"イ"!!」


二奈

「ヒュウウウウ!!メチャ上がるゥー!!♫」


結局、二奈の強引な誘いに負けてしまい、ジュリは感情のままに歌いだした。ここまで来ると最早制御不能。彼女はどんどんとヘヴィメタルの曲を予約していき、喉が潰れる勢いのままに叫び続けた。



その後も二奈に身を任せ行動を一緒にする。



 ゲームセンターに連れて行かれると、プリクラでこれでもかと言うぐらいに盛りに盛られた加工で二奈は爆笑していたり、協力するパーティーゲームでは全く連携が取れず二奈が爆笑していたり、リズムゲームではノリで思うがままに叩くだけで二奈は爆笑していたり…とにかく彼女は笑い続けた。そんな彼女にジュリは終始呆れながらも無心に付き合う。



 たっぷりと遊び終えて次に来たのは流行りのスイーツショップ。スタコレに向けて最近まで甘い物を制限していたが、二奈はお構いなくドンドンと映えるデザートを注文していく。


 初めは食べないと意地を張り、フリーダムな彼女を黙って見ていたジュリも、何でもかんでも美味しそうにオーバーリアクションで食べている二奈に屈して自分も沢山デザートを注文した。リミッターが外れた二人は、ガツガツと甘く(とろ)ける品々を堪能するのであった。



 …そんなこんなで二奈に付き合っていると、時間はあっという間に過ぎてしまい日は暮れる。


 だが、二奈の暴走は止まらない。もういいと断るジュリの意見など彼女には通じず、次に訪れたのはクラブハウス。


 どうやらこの場所は二奈の行きつけのようで、彼女が入店するだけですれ違う客とハイタッチやハグを交わしていく。彼女の顔の広さが(うかが)える。


 薄暗い店内はネオンライトで照らされ、DJによる激しいビートでブースが大盛り上がり。二人は人が少ない端にある階段を椅子代わりにして座る。


 バーカウンターから貰ったノンアルコールカクテルのグラスを片手に持つと、二奈が一方的に乾杯をしてくる。これだけ遊んでも疲れを一切見せない彼女の体力は底知れない。


二奈

「ウェーイ!!ジュリっぺノッてるー?」


ジュリ

「アンタ……ほんっと元気だね。ずっとその調子じゃん」


二奈

「遊んで楽しいのに疲れるってなくねー?まだまだいけるっしょー!!」


ジュリ

「何それ………フフッ」


ここまでずっと(しか)めっ面だったジュリが遂に笑った。二奈に悟られない様にずっと顔に出ない様に我慢をしていたが、本当は少し前からすっかりと機嫌は良くなっていたのだ。


 友の機嫌が直るのを目視で確認出来た二奈は嬉しさのあまり、カクテルを一気飲み。そして、目を輝かしてジュリの背中をバンバンと片手で叩く。


二奈

「イェーイ!やっと笑ったー!ジュリっぺもっとアゲていこーぜー!?」


ジュリ

「うざ……でも、ありがとねっ。二奈のおかげでちょっとは気が楽になったよ」


二奈

「素直な感謝にあざまる水産〜!これもう、どいたま超えてノーベル平和賞受賞っしょー!」


ジュリ

(やっぱりウザ…)


隣でギャーギャーと騒ぐ二奈を横目にカクテルを少し口に含む。甘酸っぱく爽やかな微炭酸が口いっぱいに広がり、飲んでいて心地が良くなる味だ。


 二奈の全力の励ましとカクテルの味に心が落ち着いたジュリは、ブースでリズムに合わせて踊り狂う人達を静かに見つめながら二奈に問い掛ける。


ジュリ

「…ごめん。春香先輩にあんな事言われても何も言い返さなかった。ダブル・アイの努力も分かってない癖にさ。スゲー腹立ってるのに…なんでだろ」


二奈

「それはそうじゃね?」


ジュリ

「は?」


二奈

「だってジュリっぺとハルぽよってスーパーウルトラフレンドリーじゃん?ハルぽよがあんな事言ってもジュリっぺが暴れなかったのは、ハルぽよは本当はそんな事思ってないって信じてるからっしょ?」


ジュリ

「そ、それは…そう…かも?いや、別に春香先輩とはそこまで仲良くは…」


二奈

「マ?ジュリっぺ、移動中とか休憩中とかずっと無理してるハルぽよの事気にかけてたくね?フツーならそこまで相手の事意識しないし、年がら年中気にかけてるって事は、それはロンモチで大切に思ってるってことっしょ」


ジュリ

「…そんなに話してたんだ、私。全然気付かなかったな」


二奈

「自覚なくて草ァ〜!!」


ヘラヘラと軽い感じで話す二奈だが、実のところ相手のことをしっかり見ているんだなとジュリは感心する。そして、少し前の一馬の行動を思い出した。


ジュリ

「…前にスタジオでさ、ビッチを椅子で叩いてやろうとした時、一馬さんが止めてくれたじゃん。それだけじゃなくて、私に寄り添って励ましてくれて……今の二奈は全く同じ事をしてくれてる訳だけど…兄妹揃って立派なんだなって思っちゃったよ。…凄いね、二人は」


ついさっきまで苛立っていた彼女は、今度は己の制御が効かない行動に落ち込みだす。その様子に二奈は笑うのを止めて大きく溜息を吐いた。そして、ジュリと一緒に楽しそうに踊ってる人達を遠目で見守り、口角を上げ続けながら語り出す。


二奈

「…ウチさ。流王兄妹としてモデルデビューして浅い頃にガチ恋パイセンがいたんだよね」


ジュリ

「…?」


彼女らしくもない、真面目なトーンで話しだす二奈にジュリは黙ったまま耳を傾ける。


二奈

「先に芸能界に馴染んでいたにーにと違って、ウチはファッションセンスもカリスマ性もなくて、デビューして間もない頃はチョー大変だったんよ。それはもーどんな場所でもガッチガチに固まってさ、Ryu-Oブランドに傷付けてしまうって当時はメッチャ焦ってたわけ」


二奈

「そんな時に現れたガチ恋パイセン。チョー優しくてチョー面白い。一生緊張してるウチにいつも寄り添ってくれて、モデルとして成長させてくれたんだ。スッゲーその人の事が好きだった。その人は、ウチの憧れだったんだよね」


二奈

「……でもさ、ある日パイセンにスタジオで合流する時にさ、ウチがまだそこに居ない時に、パイセンの声が聞こえてきたんよ」


二奈

「【あの子はRyu-O設立者の娘。今のうちにコネでも作っておけば父親からも評価されて、私にもモデルの仕事を回してくれるだろう】って。…その人は、ウチをウチとしてじゃなく、【流王兄妹】という【ブランド】でしか見てなかったんだよね」


ジュリ

「…そんな…」


二奈は少し俯いて苦く笑う。彼女の暗い部分が少し見えた気がしたが、咄嗟にいつもの太陽の様な笑顔に切り替わり話を再開する。


二奈

「スッゲーショックだったけどさ?ウチをモデルとして成長させてくれた恩もあるし、パイセンにどう思われようとウチはその人の事が嫌いになれなかった。ウチをそう思っていても、最後まで本性を見せずにずっと付き合ってくれてたしマジ感謝!最後は、パイセンが先にモデル業界を降りて消えちゃったけどね」


二奈

「…でさ、やっぱり信頼してる人に裏切られるっていうのは、エッグい心の傷になるんだよね。今はヘラヘラして生きてるけどさ?あの時は三日ぐらいガチ泣きしちゃったなー。ジュリっぺがハルぽよにあんな事言われて乱しちゃうのも、ウチにはよーく分かるよ」


二奈

「だからさ、ウチはパイセンと違って、ウチを信頼してくれる人の為に表裏なく全力で支えたいんよ。ウチを信用してくれている感謝のお返しは、ウチが全力でその人の事を信用する事だってパイセンから教わったから!!反面教師って奴?」


二奈

「ジュリっぺがウチらを信用してくれた様に、ウチは何処までもジュリっぺを信用していたい。例え他の人達から悪い目で見られようと、ジュリっぺが安心して居られる場所をウチは与えたい。にーにと違って間抜けでバカだけどさ、一緒にずっと笑っていられる様にマジガンバンべって感じ!?」


そう言うと二奈は寄り添って肩に手を回し、ピースの手をジュリに向ける。



 自分の事をバカだと自称しておきながら、本当は彼女なりに精一杯に考えて、そして誰よりも相手に寄り添う健気な姿。


 一馬と二奈は雰囲気は真逆でも間違いなく血の繋がった家族。これ程堂々と、人として立派な事が出来るのは流王兄妹の他に居ない。そう考えると、ジュリの片目からはポロリと涙が零れ落ちていた。


ジュリ

「…マジすげーよ。アンタも一馬さんも。私だけがいつまでもガキのままだな」


二奈

「んー?ガキでいんじゃね?ウチら未成年だしノンカクテルしか飲めない年頃じゃん?」


ジュリ

「そういう意味で言ってない……っぷ、アハハ」


変わることのない二奈のバカな返しにジュリはまた吹き出してしまう。機嫌を取り戻したジュリを見て、二奈はボルテージがマックスの如くテンションが上がると、勢いよく立ち上がって万歳と両腕を上げた。


二奈

「Foooo!!ジュリっぺから最強の笑顔いただきましたぁー!!今日はオールナイトでレッツダンシーング!!」


ジュリ

「あーうるさいうるさい。今日ぐらいは付き合ってやるから黙りな」


二奈

「マ?!デレデレジュリっぺマジキャワワ〜!!」


ジュリ

「…うるさい」


二人は立ち上がり人々がDJに合わせて踊り楽しむブースへ一緒に向かう。



そんな二人の様子を最初からずっと尾行していた一馬が、バーカウンターから見守り静かに微笑む。


一馬

「…成長しましタネ、二奈」



ダブル・アイはビジネスではなく、穢れなき美しい友情で成り立つ。彼等の真の絆は、誰にも止められない。


そして今はモデルとしてではなく、最高の友達として、消える事のない光で照らされた都会の夜を、共に過ごすのであった。


いつもご愛読いただきありがとうございます。


誠に勝手ながら、次回の更新は本編のクオリティ向上の為に一週目はお休みさせていただきます。


66話は4/12より更新予定です。

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