10話【また明日】
12月31日 PM23:00 PEACEFUL RETREAT
キリコ
「…さて、閉店準備でもしますか」
…ガチャ
川崎
「キリコさん!!こんばんは!!!」
キリコ
「やぁやぁ川崎君、待ってたよー。いつも通りの元気で大きな声で大変よろしくて……とりあえずカウンターに座りな?」
川崎
「はい!!失礼します!!」
キリコ
「何か食べる?今勤務を交代したばかりで、何も食べてないんじゃない?簡潔ので良いならすぐ作るよ。食べたいのある?」
川崎
「俺はキリコさんの作る料理なら何でも食べたいです!!」
キリコ
「…はぁ〜、また君はそうやって…そうだ。時間も時間だし、年越し蕎麦でも用意してあげるよ。まぁ…コーヒーには合わないだろうけど」
川崎
「…あっ!キリコさん!!」
キリコ
「どしたのさ」
川崎
「聡さんが言ってた通りだ!!体が少し揺れてますね!!今!!嬉しいんですか!?」
キリコ
「…ハァ〜。やっぱあの時にナルシストバカを仕留めれば良かったな。これ、暫くイジられる奴じゃん」
川崎
「俺はそんなキリコさんが可愛くて眼福です!!!」
キリコ
「君ねぇ…」
……
川崎
「年越しそば!!美味しかったです!!」
キリコ
「はいはい。締めの一杯用意したよ」
川崎
「ありがとうございます!!丁度コーヒーが飲みたかったので助かります!!……おや?このコーヒー…とても香りがいい様な…?それに酸味もフルーティーな気がします」
キリコ
「お、気付いたんだね。これはね、ケニア産の豆を使ってるんだ。一杯千円以上もする高級な品物さ」
川崎
「千円以上?!そ、そんなコーヒーを頂いていいのですか!?」
キリコ
「だって後数十分で年を越すって言うのに、何も特別感ないのつまんなくね?だったらさ、こうして川崎君との年を越す時ぐらいは、特別な一杯の方がいいでしょ?」
川崎
「!キリコさん……このコーヒー、じっくりと味わっていただきます!!」
キリコ
「そんな固くならなくていいって」
キリコ
「…しっかし、あの二人もあんな事が起きなかったら、今頃こうして過ごせたんだろうねぇ…」
川崎
「…?何か言いましたかキリコさん?」
キリコ
「あーいや、何でもないよ。……双葉は成長したんだ。あの子ならきっと、彼がいなくとも……」
星々が煌めく夜の街にて、特別な時間を過ごす二人。
そしてそれは、心に光を宿す者達への、新たな朝へと繋がるのである。