第二幕【Last Episode】
12月2日。この日の黒木と双葉は黒木の新たな趣味探しという理由で朝から街に出掛けていた。十分に街で遊び、一日を満喫した二人は聡の屋敷へと帰ってくる。
すると…
パン!パパン!!
双葉
「えっ?」
一同
「「お誕生日おめでと〜!!」」
クラッカーの音が鳴り響き、双葉の帰りを笑顔で迎えてくれる。それは細田と聡は勿論、春香と高田、ダブル・アイにKENGOと大勢に。
突然のサプライズに固まってる双葉に、彼女の隣に立っていた黒木は前へと回り込み、彼女へ手を差し伸ばす。
黒木
「お誕生日おめでとうございます、双葉さん」
双葉
「…あっ、そっか!今日だった!忘れてた!」
細田
「忘れてたって貴方…毎年楽しみにしてたじゃない?」
双葉
「あはは、誕生日じゃなくても、毎日が楽しいから忘れちゃうよねー?」
春香
「私なんて今日の日、ずーっと前から楽しみに待ってましたよ!?」
高田
「俺も!!」
聡
「アティシも!!」
双葉
「めっちゃ楽しみにしてくれてるじゃ〜ん。ウケる〜」
黒木
「ハハ…双葉さん、どうぞこちらへ」
漸く今日が何の日かを思い出し、双葉は差し出された手を取ると、黒木と一緒に居間へと向かう。
居間に着くと既にパーティー会場へと切り替わり、豪華な装飾に高級料理が並べられ、テーブルの真ん中には大きなケーキが用意されていた。黒木は双葉が座る椅子を引いて彼女を座らせると、自分も隣に座る。
双葉
「ワーオ、すっごく豪華。それに、こんなに大勢の人に祝ってもらえるのは初めてかも」
高田
「いやー、なんか意外っすわ。双葉ちゃんぐらいになると、セレブの人達とキャッキャッしてるイメージだったんで…」
聡
「ンモー。分かってないわねぇん。双葉ちゃんのオーラに寄り付いてくる連中に祝ってもらうよりも、大切な人達に祝ってもらえる方が価値があるってワ・ケ!数の問題じゃあないのよん」
高田
「おぉー、確かにそうっすね!いやー、俺の考えってTHE・庶民って感じだなーハハハ!」
黒木
「……」
二年前は自分も高田と全く同じ事を考えていた黒木は静かに笑う。ジュリは怠そうに態とらしく溜息を吐いて腕を組んでいる。
ジュリ
「もう祝ったしさっさと食べましょうよ。こっちはずっと待ってたんで、お腹空いてるんです」
一馬
「ジュリちゃんは誕生日会すると聞いて、朝から何も食べずに今夜まで我慢してましたカラネ」
ジュリ
「なっ…!?」
二奈
「昼間なんてフラフラしてたからお菓子分けてあげようかって言ってんのに【夜は絶対豪華な料理になる】だなんて我慢してたの、マジで草!!」
ジュリ
「馬鹿…!余計な事言うな!」
KENGO
「…ジュリちゃん」
ジュリ
「…な、何?」
KENGO
「いつもオラついてるけど、やっぱりかわいいね」
ジュリ
「うるさい!!」
弄られて怒るジュリに一同は面白可笑しく笑う。聡は指をチッチッと振って、ポケットからライターを取り出した。
聡
「ノンノンジュリちゃん。ごちそうも勿論楽しみだけど…まずは恒例のお祝いの歌を歌わなくっちゃね。ファンタスティック⭐︎ファイア、点火よーん♡」
そう言うとライターでケーキに刺さっている蝋燭を一つ一つ灯していく。
部屋の明かりを消して蝋燭だけの光が部屋を照らす。周りの人達は声を合わせて、双葉の為にとお祝いの歌を盛大に歌う。
毎年誕生日は細田と聡でひっそりと祝っていた双葉にとって、これだけの人達に囲まれて自分の為に祝って貰えるのはとても心地が良いものだった。
そして、隣には、この世界で一番大好きな人がいる。
一同
「「ハッピーバースデートゥーユー!!」」
一同が歌い終えると双葉は大きく息を吸って、勢い良くフゥーと蝋燭を消した。
部屋は真っ暗に包まれ、周りからはパチパチと拍手の音が鳴り続ける。
黒木
「…えっ」
その中で黒木一人だけが、柔らかい感触が頬に当たったのを感じた。部屋が明るくなるも、何が当たったかが分からず、触れたその頬の部分を片手で撫でる。
一つ分かる事は、双葉が此方を見てずっとニコニコとしてること。そしていつもより少し頬を赤らめていた事だった。
黒木
「双葉さん…?」
双葉
「…フフッ。これからも私を愛してね?黒木さん」
黒木
「…!…はい、勿論ですよ」
彼は優しく微笑み頷くと、机の下から手を伸ばして彼女の手を握った。
聡
「さぁさぁ!!今夜は盛大にパーっと楽しむわよーん!!まずはアティシのファンタスティック⭐︎ダンスを…」
ジュリ
「いや、そういうのいいから」
聡
「あぁん!ひどぉい!」
KENGO
「じゃあ代わりに俺が踊ろうかな?」
細田
「社長…それはちょっとツッコミ辛いですよ…」
一同はこの楽しい時間を共に笑い合うのだった。
双葉が幸せそうに笑う顔を、黒木は横から安心した表情で見守り続ける。暗闇の中で頬に触れたもの…それが何かは直ぐには分からなかったが、彼女の赤らめた頬を見て何をしたのかを理解した。黒木はそっと隣から寄り添い体が触れると、双葉の体も反応して寄り付いてくれる。
黒木
「…ずっと、隣にいるから」
彼は優しく囁き、二人はいつまでも幸せに離れる事がなく、誕生日の夜を過ごすのであった。