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23、急転(2)

「……ふーむ。どうやら気づかれたらしいな」


 レドが淡々と呟くと、マウロが一層目つきを鋭くした。


「朝一番に急ぎの連絡があった。宮廷に文官として勤める、俺の一族からのものだ」


「なるほど。宮廷の文官殿からか」


「にわかに処刑の準備が進められているらしいと教えてくれた。相手は誰だと思う? レド・レマウス。ケルロー公爵がその対象であるとさ」


 理解は追いつかないが、やりとりは進む。

 メリルが静かな怒りの表情で口を開く。


「間違いなくハルート殿下の浅知恵でしょう。歴史的な不作が確実のものとなり、大聖女処刑の責任を問う声はかつてなく高まっていますから」


 マウロが頷きと共に言葉を継ぐ。


「お前を全ての元凶として処刑することで一件落着としたいようだな。まさしく浅知恵だが……さて」


 一息置いた彼の双眸(そうぼう)に、凄絶(せいぜつ)な光が宿る。


「さて、だ。ケルロー公爵。さて、どうする? ケルロー公爵一門に、俺のレンベルグ侯爵一門。この2勢力だけでも相当のことが出来るぞ?」


 マウロはレドの反応をうかがうように間を置き、その時間がアザリアに現状への理解をもたらした。


(あ、あの男は……っ!!)


 胸中に湧いたのは怒りだった。

 もちろんのことハルートへの怒りだ。

 彼に関してはもはや何も思うことは無いと思っていたが、こうなれば話は別である。

 我が身可愛さにレドを犠牲にしようなどと言語道断の所業(しょぎょう)だ。


 当然だが、ハルートに同情の念などは無かった。


 発言から察するにだが、マウロには大人しくしている気はさらさら無いらしい。

 存分(ぞんぶん)にすれば良いと思った。

 すでにハルートの立場は怪しくなりつつあるらしいが、そこにレドにマウロと国を代表する貴族が立ち上がればどうなるか?

 

 きっとハルートは無事ではすまないが望むところだった。

 彼がどんな目に会ったとして、今のアザリアには自業自得だとしか思えない。


 だが……アザリアはレドの表情をうかがう。


 不安がよぎったのだ。

 そんな未来になり得るのか?

 気になるのは、先ほどのレドの発言だった。

 自らを去り行く者と言い、気づかれたのかと妙な呟きも発していた。


 そのレドだ。

 彼はマウロに肩をすくめて見せた。


「物騒な話に聞こえたな。まさか殿下に弓を引くつもりでもあるのか?」


 この疑問の声に、マウロは明らかな苛立(いらだ)ちを見せた。


「なんとも悠長な物言いだな。弓を引くつもりでもあるのかだと? 他に何がある? 向こうはな、すでに十分過ぎる敵意を見せつけてきたのだぞ?」


 メリルが同意の頷きを見せる。


「どうにも処刑の準備は内密に進められていたようなのです。レド様を抵抗を許さずに処刑する腹積もりのようですが……これを敵意と言わず何と呼べば良いのでしょうか?」


「大聖女殿のことで呆れ果てたものだが……今回で堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒が切れた。良い機会だ。あの男に、次期国王の地位など必要あるまい?」


 マウロが目線でレドに同意を迫る。

 きっと頷いてくれるはず。

 アザリアはそう期待した。

 だが、彼にその気配は無い。

 マウロに対し、なだめるような苦笑を浮かべた。


「そういうことはあまり口にして良いものでは無いぞ。人聞きがどうにも悪すぎる」

 

 レドの態度には余裕の空気すら漂っていた。

 それがマウロの気に(さわ)ったらしい。

 彼は、苛立ちを超えて怒りの表情を浮かべた。


「おい、本当に状況が分かっているのか? ここで動かなければお前はどうなる? あの男に処刑されるのだぞ?」


 レドは何でも無いように頷いた。


「分かっている。いや、承知していたと言うべきか?」


「は?」


「その話は私も十分に知っていたということだ。そして、その話を私は拒絶するつもりは無い」

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