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1、その公爵は偽りを吐く

「ふふ。さすがは偽物殿。相変わらず人を(たばか)ることに精が出ているようですな」


 その朗々とした皮肉の言葉に、アザリアは思わずしかめ面を作ることになる。

 

(また貴方ですか)

 

 胸中でうんざりと呟き、そして相手を見すえることになる。


 ここはとある村の外れだ。

 人家も少なく、あるのは雑草のにぎわいと、野鳥の軽やかなさえずりばかり。

 

 そんなひなびた農村の風景の中に、彼は立っていた。


 数多(あまた)の従者を連れ、華やかな衣装をまとった気品のある青年──ではあるのだが、アザリアは彼について好意的な感想を抱いたことは一度として無い。


 なにせ、である。

 彼はある意味で敵なのだ。

 品の良い顔立ちをして、しかし絶望的に醜悪(しゅうあく)な目つきをしているあの男。

 レド・レマウス。

 ケルロー公爵家の当主であり、王家であっても一定の敬意が必要な存在ではある。

 だが、アザリアはそんな気分にはなれないのだった。

 露骨な嫌悪の表情を向けることになる。


「まったく、大したお方ですね。わざわざ聞きつけていらっしゃいましたか。ケルロー公爵とは、よほどヒマなお立場のようで」


 皮肉で応じる。

 すると、あの男──レドは嫌味な笑みで「ふん」と鼻を鳴らしてきた。


「ご挨拶だが、貴殿のような者に言われたくは無い。そろそろ認められたらいかがですかな?」


「いつものことですが、一応問わせていただきましょう。何を認めろと?」


「いつものことだが、一応言葉にさせてもらおう。しかるべき身分も無く、聖女としての『燐光』も無い。そんな貴殿が、聖女などと自称し、あまつさえ大聖女の地位をかすめとった稀代の蛮行。このレド・レマウス、決して見逃すことは出来んぞ」

 

 いつも通りだった。

 自信満々の自らに酔ったような間抜けな糾弾(きゅうだん)


(まったく、この男は)

 

 そして、これもいつも通りだ。

 アザリアは呆れのため息を、深々と吐くことになった。



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