表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

善人のスキル

ナターシャにフルスイングで拳骨をされた俺は族長の反対側に腰掛けて、野菜と肉のたっぷり入ったシチューとパンを頬張っている。

人参、ジャガイモ、これはキャベツかな?

元の世界と同じ名前なんだな。ん?まてよ、話が通じるのは日本語って事なのか?異世界といえばまずは言葉の壁がありきたりなんだがな。


夕食を食べ終え腹をさすって腹筋の凹凸を楽しんでいると、族長はコホンとわざとらしく咳払いをして言う。



「さて、腹は膨れたかな?儂は族長のジハーマド。お主、何者だ?名前は?なぜこの森に?」



さっきの怒気は全く感じられないが大きなため息をつくと族長、ジハーマドは呟いた。



「あ、自分は健一郎ていいます。どうやら頭を強く打ったみたいで記憶がなくて…困っていたところをクリスに助けられてこの村に。ナターシャと言えばわかってくれると!」


んーさすがに無理があるか?

本当の事ではあるんだけどな…。

しかし、よく考えると俄かには信じられない。

確かにクリスに触れたりはしなかったが、あの血の気の通った表情や動きはナターシャやジハーマド、他のエルフと変わりはない。





「族長、こいつが言っている事は本当でしょうか?」


おいおい、自己紹介しましたよね…。

美人なんだからもう少しお淑やかにしてくれませんかね?

名前で呼んで下さいよ。


俺がジト目でナターシャを見ていると、隣のジハーマドが立ち上がった。


「私の右目は虚偽を見抜く。ケンイチロウよ…お主は少しばかりの嘘をついておる。」


腕を組んだジハーマドは左目を閉じて空洞の右目で俺を見つめる。



「な!やはり!?どこでその布を拾った!?」


ガタンと椅子が倒れ、微かにいい花のの香りが漂う。

ナターシャは立ち上がって隣に立てかけてあった弓を取り上げた。




「たぶん。いや、かもしれん…そんな感じが…うむ、なぜだ?魔眼で見抜く事ができん。」


続くジハーマドの言葉にナターシャは口をあんぐりと開けて動きを止めた。





ん?バレてないのか?魔眼?あの右目のとこ…目ん玉ないよね?どーいう事だ?


「うむ、まぁ真偽はわからんがお主からは悪人の雰囲気がせんのは事実。ナターシャ、お前も感じているだろう?」


ジハーマドの問いかけにナターシャは少しばかり顔を歪ませて頷く。


クリスやジハーマド、ナターシャも健一郎を悪人と思えなかった。

それは神々が与えた恩恵によるものである。

そしてそれはこの世界には存在しない未知のスキル。






【善人】

習得者は善人でなければならない。善人は優しさの中に厳しさを、強さを兼ね備えていなければならない。なぜなら強くなければ大切なものを守れないからである。




全く意味のわからないスキルであるが様々な効果を発揮する。

まず、習得者は見たものにいい人間であると強制的に思いこませる事ができる。クリスやジハーマド、ナターシャの様なエルフだけでなく他の全種族に対応。これは【魅了】に近いが強制度はそれの比ではなく、常にオートで働くパッシブスキルである【善人】が上位に位置する。


さらに善人には良い事がなくてはならない。つまりこの世界に存在するレアスキル【幸運】と同じ効果も持つ。


さらに、善人は自らを犠牲にする事で他者を助ける。つまり自分を犠牲にすればするほど後々自分に返ってくる幸運が増す超レアスキル【自己犠牲】の効果も持つ。





そしてこのスキルは成長し、派生する。

かつて神々からこのスキルを与えられた者は歴史に名を残す偉業を成し遂げる者が多い。



小国を救った聖騎士。

ラード教を広めた聖女。

長く苦しむ奴隷を解放したリザードマン。

魔王を封印した勇者。









そして、かつて全てを滅ぼそうとした魔王。















もう一度言おう。このスキルは派生する。

それが善か悪かは所有者次第である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ