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名も無き者達の英雄譚  作者: たかはらナント
36/42

番外編 あの時の白いおねぇちゃん

 ● 番外編 あの時の白いおねぇちゃん



 藤堂加奈がその地震で被災したのは、大学を卒業し、この中学に赴任してから間もない春の事だった。


 幼少の頃より憧れていた職務であった為、彼女のやる気は人並み以上だったのだが、担当したクラスの副担任として挨拶しようとしたその矢先、地震は起こってしまったのだった。


 彼女としては出鼻を挫かれた感は否めなかったのだが、そんな感情も、被害の大きさを認識した時に無くなってしまった。


 直下型地震。後の報道でそう呼ばれた。

 想定以上の大きな揺れを伴ったその地震は、観測史上初の震度を記録し、広範囲にわたり爪痕を残した。

 震源地となった大都市では、多くの建物が倒壊し高架型の高速道路が遥か先まで横倒しになっていた。同時に発生した火災の所為で更に被害は深刻となり、直接の地震で見舞われた被害よりも多くの命が失われたと伝えられた。


 学校の生徒達は割れたガラスなどで怪我をした子もいたけれど、全員命の別状は無し。住民達に関しても震源地からは外れた郊外の田舎町だけあって、畑に出ていたりなどで難を逃れた者も多かった。それでも地震の揺れに耐え切れなかった家屋が殆どで、介護、介助を必要とする者達や一部の住人が下敷きとなってしまっていた。


 中学校の体育館が避難所となり、多くの人が避難して来た。ガラス片などが取り除かれた教室は臨時の病室となり、ケガや病気、体調を崩した者などに割り当てられた。


 被災から三日目には自衛隊が派遣され、食料や水、通信施設、照明と言ったライフラインが仮にではあるが整えられた。被害の大きい大都市との通り道になっていたこの中学校が災害救助の拠点基地として選ばれた為だ。広いだけが取り柄だったグラウンドに、所狭しと自衛隊のテントが張られていた。


 そんな中、一人の女の子が救助された。この町に古くからある教会の下から助け出された女の子は、見慣れない白い服を着ており、髪を肩口まで伸ばした可愛らしい顔つきの女の子だった。


 「この子、どうやら外人さんみたいでな、ワシらじゃさっぱり言葉が分からんけ、先生おねがいしますわ」


 「分かりました」と藤堂加奈は言った。もとより担当の教科は英語である。留学した経験を活かし、なるべくネイティブな英語を教えようと意気込んでいた程だ。

 しかし、その女の子の話す英語は、英語であって英語ではなく、文法も何もない単語を羅列しただけの英語だった。

 英語を使わない国の人間が片言の英語を使っている、そんな印象を受けた。

 か、と言って、英語以外に他の言葉を話せるでもなく、藤堂加奈は通じるであろう英語で会話を試みるのであった。


 瓦礫の下敷きになっていたと聞いたので、最初は『怪我は無いですか?』『身体に異変は無いですか?』と言ったようなことを聞いていった。

 特に頭を打って脳内出血などを起こしていた場合、後になってから命を落とす事は多々あるのだ。その為にも女の子の表情に注意し、話しながらも違和感が無いかよく観察したのだが……見る程にそう言った違和感があるようには感じられなかった。いたって健康。それどころか、女の子との会話が進むにつれ、受け取った印象は、


 『傲岸不遜』


 であった。


 失礼だとは思ったが、そう感じてしまったのだから仕方ない。とにかく、立ち居振る舞いが最近の子のモノではない。思春期特有の生意気さも気怠さもまるでない。その子から醸し出されるオーラは威圧的で、例えるならばどこかの軍人か、政治家とでも話をしている気分だった。

 そう言えば、大学の恩師もこんな雰囲気で話していた。と、藤堂加奈は溜め息をついた。

 つまりは苦手な部類の人種なのであった。

 



 「黙祷!」


 教頭の大きな声で我に返る。

 あの日から四年、復旧はかなり進んでいて、まだまだ仮設住宅に住む者も多いのだが、概ね平常に戻りつつあった。

 そして本日、この中学校では全校生徒の他に、町の有力者や近隣住民も集まり、慰霊祭が行われていた。グラウンドに並んだ全ての者があの日の事を悼み黙祷する。


 都市部では区画の再整理が行われていて、未だ手つかずの地域もあるのだが、そちらも法的整備が整えば一気に復興してくるだろう。

 

 町長や町会議員、校長の長い挨拶が終わると、それぞれが蠟燭に火をつけて、文字を象るように並べていく。

 石灰で予め記された文字は 【心】 だった。毎年、生徒達からの募集でこの文字が決まる事になっている。

 蝋燭を全て並べ終えると、最後に献花が行われ慰霊祭は終了となる。

 生徒達はやっと解放されたとそれぞれの教室へと戻っていった。


 藤堂加奈も四年の月日を経て、副担任を卒業し、晴れてこの春から二年生の一クラスを受け持つ事になった。

 二年二組。

 担任となった受け持ちのクラスへ向かう途中で、教え子たる一人の女生徒から声を掛けられる。


 「加奈ちゃん、すごい動画見つけたから、今日は絶対部活に来てね」


 「こら、藤堂先生と呼んで。(教頭の前では)」


 生徒から親しみを持って呼ばれるこの呼ばれ方は、教師としての威厳を損なうものではあったが、藤堂加奈は仕方ないと受け入れていた。今までのような威圧的で抑え込むような教育ではなく、もっと生徒に寄り添った友人のような教育を彼女が目指したいと思っていたからだ。

 しかし、教頭には見くびられていると、都度説教を喰らうので、せめて教頭の前だけではと小声でお願いはしているのだ。今も廊下の端からこちらを睨んでいた。


 「で、どんな動画?」


 問いかけると、その女生徒は言った。


 「えっとね。宇宙人に攫われる動画だよ」


 「何それ? フェイクじゃないの?」


 思わず声と同時に笑みが出る。

 すると女生徒はしばらく考えた後、


 「どうだろ? 動画自体は定点カメラの映像みたい何だけど……とにかくすごいの!」


 何がどうすごいのか、さっぱり分からないが、とりあえず、先に見て欲しいと言う事だろう。うっかり話してしまうとネタバレして面白くなくなる、女生徒はそう言いたいのだと思った。

 藤堂加奈は気楽に理解すると、


 「うん、分かった。必ず行くから、早く教室に入りなさいね」


 女生徒が、走って教室に入っていくのを見届けると、教頭がまだこちらをじっと見ていたのだと気付いた。

 くわばらくわばら。





 放課後になると、藤堂加奈は、女生徒から誘われた通りに部活へと顔を出した。


 おもしろ動画研究部。これが、女生徒たちの作った部活だった。

 藤堂加奈は頼まれて、その部活の顧問をしている。


 彼女たちの理念は、震災で疲弊した人達に、少しでも明るい話題を届けられるようにと、動画を探して紹介すると言うものであったが、そう言った高尚な理念を貫いたのは三ヶ月ほどで、今ではショッキングな映像を含めた、暇つぶし動画を探す会になっていた。

 それでも良いと藤堂加奈は思う。確かに汗水流して熱血するのも青春だが、こうしてのんびりと無為の時間を過ごせるのも青春なのだ。大人になれば否応でも責任と言う重いものがのしかかって来る。この時期にそう言ったしがらみを感じることなく自由にするのも大切な時間だと藤堂加奈は感じていたのだ。


 その時ふと思う。そう言えば、あの白い服の女の子は今のこの子たちとは真逆だったのではないかと。何か重い責任を負って、あの場にいたのではないかと。


 世界地図を見せたあの時、白い服の女の子は、顔を真っ青にしたかと思うと、慌てて外に飛び出して、空を仰ぎながら分からない言葉を二回叫んでいた。

 後を追いかけた時に見た女の子の顔は、絶望に暮れたかと思うと、すぐさま何かを決意して、生気を取り戻し、空を睨みつけていた。

 そして、次の朝、唐突に姿を消した……。



 「あ、待ってたよ加奈ちゃん」


 活動の場となっている視聴覚教室に藤堂加奈が入ると、待ちくたびれたと言うように女生徒が声を掛けて来た。

 その場には他にも二人の女生徒が居て、入室したての藤堂加奈の手を引っ張って、早く座れと催促した。

 女生徒たちは既にノートパソコンを用意しており、すぐさま再生できるようにと画面まで立ち上げている。

 女生徒たちに囲まれながら藤堂加奈が正面の特等席に着くと、


 「とりあえず、途中まで見て貰った時に、フェイクかどうか聞かせて欲しいの」


 そう言われ、再生ボタンがクリックされた。


 真っ黒な画面から始まった映像は、特に凝った演出もなく、白抜きの文字が浮かび上がった。


 【あなたはこの映像が嘘だと思いますか?】


 そんな問い掛けが書かれていた。


 文字が消えると、朝の天気予報でよく見る定点カメラの映像が映し出され、今にも降り出しそうな空模様を映していた。

 すると数秒後にカウントダウンが表示され、終わったかと思うと目の前の建物に雷の落ちる光景が映し出された。一瞬ホワイトアウトする映像。


 ここで一旦、女生徒が再生を止める。


 「ねぇ、今のどう思った?」


 どうと言われても——。


 「落雷の映像?」


 「うんそう。フェイクだと思う?」


 どうだろう? 本物と言われれば本物だし、フェイクと言われても良く出来てるね。くらいだ

 素直にその旨を話すと、女生徒はさも楽し気に、


 「じゃ、続きを再生するね」


 と、宣言して再生ボタンをクリックした。


 今度は先ほどの映像の他に、一部分を拡大したワイプ映像が映っていた。

 ワイプには何者かが撮影をしている風景が映っており、輪郭はぼやけているが、はっきりと四人の男女が映っていた。全体を移した映像には赤丸が表示されており、その中の映像が拡大されているのだと分かる。

 そして、先ほどと同じくカウントダウンが表示され、終わると同時に雷落の映像が映し出された。

 ただ、先ほどと違うのは、ワイプの拡大映像に映っていた男女が、全て消えている事だった。ご丁寧に撮影機材も全て消えている。


 女生徒はそこでまた再生を止めると、先ほどより興奮した様子で尋ねて来た。


 「ねぇ、今度はどう?」


 明らかにフェイクくさいと藤堂加奈は思った。

 撮影機材が残っているならまだしも、それも全て消えているとなると、その部分だけを別の日のモノに差し替えれば簡単に演出できる。


 「フェイクでしょ。屋上部分の映像を差し替えれば簡単に編集できるじゃない」


 自信をもってそう言うと、女生徒は更に興奮して、


 「やっぱりそう思うよね! でもね、ここからが本番なの」


 何を以って本番なのかは分からないが、とにかく続きを見る藤堂加奈であった。



 そこからは、文字と分割画像により編集された映像を見る事になった。


 まず【お気付きだろうか?】と文字が入り、消えると同時にワイプの拡大映像が映った。今度はスローモーションになっていて、雷が落ちてホワイトアウトすると映像は止まった。

 そして、その止まった画像に映っていたのは、空間の裂け目と思われる位置から飛び出た巨大で真っ黒な手だった。

 その後、コマ送りの分割映像になり、二コマほどでその手が引っ込んだかと思うと、今度は男女四人と周りのモノが全て、その裂け目に吸い込まれていった。

 実際の時間にすれば、コンマ一秒にも満たない僅かな時間の映像。サブリミナル効果でも仕込んだのかと思える刹那の映像。

 もう一度同じシーンを繰り返すと、次の場面に移って行った。


 ここまで見た時、完全にフェイクだと思った。あんな化け物染みた映像はそれ以外に考えられないからだ。ただ、なぜかそう言い切れないと藤堂加奈は思った。それは、動画の続きを見ると更にそう思えた。


 続きはこんな文字から始まっていた。


 【これだけを見ると、フェイク動画だと思われるだろう。しかし、この定点カメラの画像を生放送していた番組があったのだ】


 文字の後にその状況を放送していた番組自体が映る。その番組は昼から夕方にかけて放送している有名なワイドショー番組で、その中の天気予報のコーナーにて定点カメラの映像が使われていた。

 雷が落ちた事に対して驚きざわめくキャスター達。そして、その場面の拡大した映像にもはっきりとではないが確かにそれらしき影が映し出されていた。


 動画はまだ続く。


【ここに映っている四人の男女は実在した学校の生徒である。


   三年 眞上紫乃

   二年 姫妻愛

   二年 風元隆

   一年 朱鳥拓郎


 この生徒たちは映画研究部として活動していたのだが、この日を境に皆、行方不明となっている。もし、生徒たちの情報をご存じの方がいたならば、当サイト、もしくは下記警察署まで連絡して欲しい】


 そして、その四人の顔写真が映し出された。

 それを見た藤堂加奈は驚いた。この中の一人の顔に見覚えがあったからだ。

 

 眞上紫乃と言う名の女の子。多少やつれて目の下に隈が出来ていたが、あの、教会の下から助け出された、白い服の女の子に間違いない。


 すると、同調するように、女生徒が目を輝かせてこう言った。


「私さ、あの日の地震が起こった時、この中学に避難してきてたの、その時見たのよ、この眞上紫乃って女の子。この子ってさ、あの時の白いおねぇちゃんで間違いないよね!」


 その言葉に、藤堂加奈はあの日の事を思い浮かべた。傲岸不遜と思うに至ったあの時の、白い服の女の子の姿。


 『ボクは、ハビリア△◇国、近〇△◇△◇隊所属の シノ・マガミ 〇△だ。現在◇△中の事故により、空間◇〇囚われ、見知らぬ土地へと◇〇◇△しまった。速やかに現在地の情報を提供いただければありがたい』


 ところどころ聞き取れなったあの日の言葉が頭の中に浮かんでくる。


 存在しないハビリアと言う名の国。なのになぜ知らないのかと言いたげに驚いた女の子の表情。その後で、世界地図を見せた時のあの慌てた態度――。


 ハビリアと言う名前はあの後何度も調べたけれど、国の名前どころか都市の名前でも当てはまらなかった。挙句にはネアンデルタール人より前に存在した石器人の呼び名だと検索サイトでは説明していた。


 もしかして、あの女の子は別世界の人間だったのだろうか? 何かと戦っている最中に誤ってこの地に来たのだろうか? 近〇△◇△◇隊所属の——と女の子は言っていた。所属というからには何かの組織に与していたと考えられる。あの子が軍人のような立ち居振る舞いだった事も、威圧的だった事も、それならば説明がつくのだけれど……。


 藤堂加奈が困惑する最中、女生徒は嬉々として言葉を重ねた。

 女生徒にしてもあの白い女の子は異質だったのだろう。被災した時の恐怖の記憶とも相まってきっと鮮烈に覚えているに違いない。


 「加奈ちゃんに見せる前にさ、トモ君先生に見てもらったんだ、そしたらあのおねぇちゃんに似ているとは思うけどって、加奈ちゃんにも見て貰えって」


 続けて、


 「あのおねぇちゃんなんかカッコよかったもんね。あの白い服、今から思えばどこかの制服みたいだった。もしかして、さっきの黒い手と戦ってたのかな? あの時、空に向かって叫んでたでしょ、宇宙にある母船とでも交信してたのかな?」


 更に続けて、


 「この不明者リストにある、姫妻愛って子、元総理大臣の姫妻健吾の孫だってさ、情報提供者には最高二千万の賞金が出るんだよ、白いおねぇちゃんの情報提供したら、いくらかでも貰えるのかな? ねぇ、加奈ちゃんはどう思う? サイトに連絡しようかと思うんだけど、どう思う?」


 すごい事と言うのはこの事だったのか。と、藤堂加奈は理解した。

 つまりは、情報提供の見返りである賞金に、女生徒は目がくらんでいるのだと理解した。


 確かに、動機はどうあれ自身でも同じように感じたのだ。白い服の女の子の情報が何かの役に立たないかと思ったりもする。

 けれど、そんな感情とは違う何かが拒否をした。触れてはいけないと警告した。いや、少し違う。きっと汚してはいけないだ。

 藤堂加奈は、白い服の女の子の決意に満ちた姿を思い出すと、口を開いた。


 「きっと連絡しても何も貰えないわね、それどころか余計な情報だと思われるかも知れないわよ。警察が欲しがってるのはこの雷が落ちた後の情報でしょ。この事件が起こったのが去年の八月だし、白のお姉ちゃんが居たのはさらにその三年前の春。下手をすると怒られるかも知れないわよ」


 「えーそうかなぁ……そう言った情報って少しでも欲しいんじゃないの?」


 女生徒はストレートに食い下がる。藤堂加奈は説得するよう続きを口にした。


 「それが事件の起こった日以後の情報ならね、三年前の情報何て煙たがられるだけよ。それに、この写真の子。よく似てるけどきっと別人ね。だってあのお姉ちゃん、外人さんだったじゃない。もうニホンには居ないわよ」


 そこまで言うと女生徒はがっくりと肩を落とした。


 「えーそうなの? う―――ん。加奈ちゃんに言われるとなんかそんな気がして来た。せっかく大発見したと思ったのになぁ」


 女生徒はまだ諦め切れない様子だったが、藤堂加奈は今の内にと席を立つ。


 「じゃぁ職員室に戻るわね、あなた達も遅くならない内に帰りなさいよ」


 「はーい……」


 渋る返事を聞きながら、逃げるように視聴覚室を出る藤堂加奈だった。



 職員室へ戻る途中の廊下で、藤堂加奈は先ほど見た動画の事を思い出す。


 情報云々はともかく、あの動画は本当だったのだろうか? 裂けた空間から飛び出た黒い巨大な手。行方不明になった四人の男女――。


 顔写真の一枚一枚が頭の中をよぎっていく。


 仮に、あの白い服の女の子が別世界の人間で、あの黒い手と戦っていたのだとしても、あの撮影機材は何のために有ったのだろうか? 脈絡が無さすぎて分からない。

 やっぱりフェイクかな? 前後の構成も統一感が無かったし、行方不明の情報提供に興味を持って貰えるようにとアレンジしただけなのかも――いや、それも考えすぎか……。


 藤堂加奈はそう結論付けると、それ以上考えるのを止めた。

 四年も前の事を今更考えても仕方がない。当の本人が居ないのに、答えなんて分かる訳がない。

 廊下を歩きながら外を見ると 【心】 の字を象った蝋燭が全て消えているのが見えた。


 あの白い服の女の子は何処に行ったか分からない。けれど今もどこかで頑張っているのだと思いたい。あの不退転に満ちた眼差しは折れることなく進んで欲しい。

 願わくば、あの子の道にもひと時の安らぎがありますように。と、無神論者であるにもかかわらず藤堂加奈は神に祈った。


 グラウンドの端に咲いている桜の花は、殆んどが散り、葉桜に変わろうとしていた。

 復興はまだまだこれからだ。

 藤堂加奈はパシンと自身の顔を両手で叩くと、まっすぐ前を向いて職員室へ向かうのだった。

 










2021.4.17

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