譚14 襲撃 前編
● 譚14 襲撃 前編
姫妻愛。十八歳。性別女。職業――革命指導者継続中
見張りの者から『襲撃者有り』と連絡が来たのは、東の空がうっすらと白み始めた明け方の事だった。
私が物見櫓まで登ると、継続して様子を伺っていたタロスが渋い顔で告げた。
「すまねぇ姐さん。気付いたのが遅かった。奴さん達、既に第二警戒網を突破してやがる。今は、第三警戒網の罠の解除にもたついてるみたいだ。」
タロスは以前の野盗襲撃の際、捕らえた後に仲間となった五人のうちの一人だ。
ディックと同じく臨時とは言え、元警備兵だけあって、戦闘経験のない村人の兵士より、こういう荒事の時は頼りになる。
今では信頼のおけるメンバーの一人だ。
私は、タロスから望遠鏡を渡されるとそれを覗いた。
望遠鏡は魔道具になっていて熱源探知の刻印が刻まれている。私のアイデアで、脱走兵だった一人の職人が作ったものだが、思いのほか良く出来ていて、まるでサーモグラフィーの映像を見るかのように、望遠鏡の中に映し出された。いわゆる丸見え。
覗いた先には明らかに、人影と思しき映像が映し出される。その数は三十以上。まだ潜伏している者もいると考えれば、最低でも五十人はいると覚悟した方が良い。
追加の情報をタロスが告げる。
「北と西も、既に潜んでいるみたいだ、正確な数は分からないが、正面よりは確実に数が少ない。どうする? 姐さん」
状況は、既に多くの兵に取り囲まれているようだった。正面が手間取っている分、完全に包囲された訳ではないが、おそらく時間の問題だろう。完全な包囲までは、あと、一時間弱、日の出が始まるくらいと言ったところか。
タロスの報告に、私は思考を重ねる。考えて結論を出す事が、今の私の仕事だ。
通路としての位置付けである北門だけならともかく、搦手や脱出用として作っておいた分かり難い西門まで抑えられているとなると、やはり、内通者が潜入してると思った方が良さそうだ。だが、今は炙り出している時間は無い。住民の避難が最優先だ。
強行に北門を突破してみるか? いや、兵士だけならともかく、住民を引き連れての突破は無理だ。子供や老人だっているのだから。
同じ理由で西門もダメ。
では籠城するか? いや、これもダメだ。籠城は援軍が来なければ意味がない。兵力が増えると期待あってこそ、不利な状況を耐える事が出来るのだから。
そこまで考えると、私は結論を出した。
出した結論を高々と告げる。
「この砦は放棄し、第二砦へと拠点を移す。戦力は正面に集中、北と西の門は最小限の兵にて対応、敵に突入の兆しが見えたら罠を発動し、岩を落として門を塞げ。住民の避難は隠し通路で行う。先導はタロス、お前に頼む」
こんな事もあろうかと――と言うのは、青い矢印の人に任せておいて、以前の野盗襲撃の際の反省を生かし、脱出用にと隠し通路を設けておいたのだ。
もちろん通路の存在はトップシークレット。なので、内通者にも知られていないはず。
「姐さん、隠し通路を使うのは良いが、人一人通るのが精一杯だぜ。脱出に時間が掛かり過ぎる。それなら北門を強行突破した方が、見込みがあるんじゃねぇか?」
もっともな意見をタロスが言う。だが私は小さく首を左右に振ると。
「いや、もし仮に北門を突破できたとしても、正面の兵力を回され追い打ちを掛られたら勝ち目がない。それならば、籠城すると見せかけて、隠し通路から脱出を図る方がまだ望みがある」
私の返答に、タロスを含め皆が納得してくれた。
私は皆の目に決意の光が灯ったことを確認すると、現状を打ち砕くべく指示を出す。
「では、カータは西門、ベルンは北門に指示を。リーネとオーヴェは弓隊を指揮、私と共に正面の敵を食い止める。ディックは住民の誘導を最優先に後方支援と情報統括を頼む」
――以上、解散!
その言葉を合図に、それぞれは動き出した。
この窮地を逃れる為、行動を開始した。




