156.スナッフビデオ①(怖さレベル:★★★)
(怖さレベル:★★★:怖い話)
怖い話やホラー映像が好きな方なら、
一度は『スナッフビデオ』なんて言葉を耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。
グロテスクな人殺しの映像だとか、戦争中の血なまぐさい動画とか、そういう「裏もの」に惹かれる人って、案外いたりしますよね
おれの友人でも、マニアなヤツがいましてね。
おれは怖い話とか、ホラー映像とかは好きだったけど、
グロ系はあんまり興味がなくて。
ヤツが手に入れたっていうスナッフ動画を見せられたこともありますが、
作り物くささバリバリで、苦笑いする出来でしたしね。
だからあの日、スナッフデータを見つけた、と言われた時も、
(どーせ偽物だろ)って思っていたんです。
その日、おれとソイツ――八木原は、
仕事終わりに飲みに行っていました。
職場のストレスの発散という名目で、
だらだらと居酒屋で時間をつぶすという、よくある飲み会です。
お互い三十代半ばになって独り身。
二時間ほど飲んで、そろそろ帰ろうかとなった時、
「そういやぁ、モノホンっぽいスナッフ画像のデータ販売のサイト見つけたんだよなぁ」
と、思い出したかのように言いました。
おれは、コイツがいつもそうやって、クソデータを買わされたり、
うっかりパソコンをウイルスに感染させたりするのを見ていたので、
「バーカ。どうせ偽モンだろ」
と鼻で笑ったのですが、八木原は引きさがりません。
「いやいや、今回ばかりはマジだって。だって、サンプルからしてヤベェもん」
「んだよ。海外の殺戮ショーとかそんなんか?」
「それがさぁ、たぶん日本の。だから余計マジっぽいんじゃん」
「……はあ? 日本の?」
八木原が今まで集めてきた怪しいデータの数々は、たいてい外国もの。
それすら作り物感満載のニセモノばかりで、
国内制作のものなんて見たことがありません。
というか、バレたら販売停止どころか、即刻逮捕でしょう。
「ぜってー作りモンだろ。それかダミーサイト」
「って思うじゃん? でも、実際見たら信じたくなると思うんだよな~」
ほろ酔い状態の八木原は、ニヤニヤと笑うのみ。
余裕ありげなヤツの様子に、おれはイラっとして、
「ま、好きにすりゃあいいけど。騙されて大金せしめられても知らねぇぞ」
「いやぁ、そこでちょっとお願いなんだけどさぁ……今日帰ったら早速買ってみようと思ってんだよ。な、うちについてきてくれねぇ?」
「はあ? ついてくる?」
「お前明日休みだろ? 家飲みついでにさ。頼むよ~」
と、ヤツにしては珍しい提案をしてきたんです
別に予定があるわけじゃないし、互いに独身の身。
それに、いろいろな画像を漁ってきた八木原が
『本物っぽい』と豪語するデータに、おれもちょっと興味がわいてきていました。
まあ、別にいいか。
そんな軽い気持ちで、ヤツの家についていくことにしたんです。
「……これが例の?」
「そうそう。リアルな雰囲気あるだろ?」
八木原が見せてきたサイトに、おれは「うーん」と唸りました。
よくある海外の怪しいサイトだと、広告まみれだったり、リンク自体がものすごくわかりにくかったり、
よくわからないところに飛ばされたりと、ダミー感たっぷりなものが多いんですよね。
でも、今回ヤツが見せてきたのは、いたってシンプルなサイト。
特定ワードが含まれたタイトルと、極小サイズのモザイクがかったサムネが
いくつか並んでいるだけで、非常にシンプル。
一見、スナッフ画像のサイトとはとてもわからないように、
巧妙に作られているのがわかりました。
「お前さ……どうやってこんなとこ見つけたんだよ」
「そりゃあ、そういうコミュニティがあるからな! 情報収集のたまもんだよ」
ちょっとだけ自慢げに胸を張った八木原は、
カチカチとマウスを操作し、さらに違うページを開きました。
「で、ほら、ここ。実は隠しリンクがあって、そっから動画のページに飛べるわけよ」
「この時代に隠しリンク……!?」
「懐かしいだろ? で、ほら、ここだ」
なにやらパスワードを打ち込み、ヤツは新しいページを開きました。
相変わらず画面は殺風景なものの、出たページの感じが若干変化しました。
いくつものサムネ画像とリンクが並んだ、一見ブログサイトのようなページ。
そのうちひとつを八木原が開き、
サンプルと書かれている部分を、クリックして表示しました。
「なんだよ、これもモザイクか……って、うっわ」
「……な? 本物っぽいだろ?」
再生され始めたサンプルは、確かにリアルでした。
前振りもなく突然始まり、高校生くらいの女性が手足をしばられているところを、
いきなり包丁で――という、内容。
シチュエーション自体はありきたりですし、
傷口にモザイクもかかっているので、作り物だろう――とは思うのですが、
襲われている少女の表情と顔色が、あまりにも生々しい。
血が流れ出ていき、体が痙攣して命が失われていく仕草のひとつひとつが、
演技にしては、ちょっとリアル過ぎました。
>>




