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47.変わり果てた幼馴染②(怖さレベル:★★★)

「三か月くらい、前だったかな。なんかTVの企画かなんかで、

 心霊スポットにロケに行ったらしいんだ」


フォークを持った手が、ガリ、と器をこすりました。


心霊スポット、などという話に、大方の話が見えてきました。


「……それから、あいつおかしいんだよ。

 今まで、アレだけ気をつけてた身だしなみも、

 全然気にしなくなって。一日中うちにこもりっぱなしで」

「こ、こもりっぱって……だって、仕事は?」


「……行ってない、と思う。

 オレもちょうど忙しい時期で、あいつとあんまり会えてなくてさ……

 こないだ行ったら、もうそんなあり様で」


そう言うと山岸は、ダン! とテーブルに額を打ち付けました。


「今、ぜんぜんオレとも口聞いてくれなくて……

 あいつのうちに押しかけても、ろくに応答もなくってさ……」

「お、おいおい。あいつの親とかに連絡……あ、そっか、もう亡くなってんのか」

「そーなんだよ……なぁ、頼む! お前、あいつの幼なじみだろ?

 あいつの女友達なんてわかんねぇし、お前しか頼れねぇんだよ……」


と彼は両手を合わせて頼み込んできます。


確かに幼い頃は近所同士で、

ケンカもすれば、互いにちょっと惹かれ合っていた時期もありました。


今はもう一切連絡もとっていませんが、

こうも言われれば、気にもなるというもの。


「わかった。役に立てるかはわかんないけど……行くよ」

「マジか! 日下部、ありがとう!」


感極まったようにぐっと手を握ってくる山岸に苦笑を返し、

彼に誘われ、翌日に家に向かうことにしたのです。



言われた住所の元へ向かえば、

出迎えてくれたのは三階建ての立派な家屋。


「……これ、金安の家?」

「ああ、スゲェよな。あいつ、親が死んじまったから……」


確かに、彼女のご両親はうちの地方で開業医をやっていた為、

かなりの財産が彼女の元へ渡ったのでしょう。


なんでも、山岸も一人暮らしをしているそうなのですが、

彼女が病み始めてから、半同棲状態なんだそうです。


(……なんだ? この臭い……)


山岸と共に玄関まで向かったところで、

うっすらと妙な臭いが漂ってきました。


人生で今まで嗅いだことのない、不快な臭いです。


ドブ臭さとも違う、排泄物などとも違う、

少し、すえたような――。


「おーい、ケイコー?」


ガラッと扉を開けた山岸が、室内へと声をかけました。


シーン


しかし、中からは一切の返事がありません。


「しょうがねぇな……悪い、入ってくれ」

「あー、お邪魔しまーす……」


と、案内されるがままに中に足を踏み入れれば、


「う、っ……」


先ほどから漂っている妙な臭いが、

室内にも濃く充満しています。


我慢できないほどではないのですが、

どこかじっとりと、絡みつくような、臭気。


「なぁ、なんか臭いのするモン置いてるか? ……その、お香とか」


いきなりクセェなんて言うことはできず、

当たり障りのない内容を尋ねました。


「におい? あ、やっぱ気になるよな。

 ケイコがあの心霊スポット行った付近からハマり始めたらしくってさ……」


すっかり鼻がバカになっちまった、と山岸は苦笑しつつ、

居間の方へ俺を通してくれました。


「ケイコ、二階にいるんだ。ちょっと下りてくるように言ってくるわ」


と彼は居間から出て行ってしまいました。


一人取り残された俺は、通されたリビングをキョロキョロと見回しました。


割とま新しい木目調のテーブルと、セットと思われる背もたれの長いイス。


ふわふわと柔らかそうなリビングマットに、

天井には、ホームシアター用らしき機材が埋め込まれています。


(もう結婚まで秒読み、って感じか)


もしかしたら、婚約はすでにしているのかもしれないな、

なんてぼんやりと出された麦茶をすすりつつ待っていると。


――スッ


「……ん?」


居間に続いているガラス戸に、一瞬人影がよぎりました。


「よーやくお出ましかな」


俺は苦笑し、ドアを開きました。


「おーい、久しぶり……あれ?」


しかし、影の通り去った廊下を見ても、

なんの姿もありません。


「……見間違い、か?」


いや、しかし。

一瞬であっても、確かに。


「…………」


まさか、本当に金安の行った心霊スポットとやらが、

なにかとんでもなくヤバイものだったのか。


イヤな汗をかきつつ、すごすごと居間に戻って座っていると、

間もなく山岸が戻ってきました。


「あー……ダメだ」


がっくりと肩を落とした彼は、どさっとイスにもたれかかりました。


「お、どーした?」

「ダメ。もー、ずっと無視。最近、オレがちょいちょい文句言ってるか、

 怒ってるみたいなんだよなー」


ふー、とテーブルに突っ伏すように山岸がため息をつきます。


「悪ぃな、せっかく来てもらったのに」

「いや、仕方ねぇって。……じゃあ、俺が部屋に顔だけ出そうか?

 会いたくないにしろ、壁越しに挨拶くらいはできるだろ?」


と提案を上げました。


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