五十九話 馬鹿げた計画の反省会
「ふ、う……なんとかなったわね」
岩の下のわずかな隙間で、私はほっと胸をなで下ろす。
私はもちろんのこと、抱えたオラクルとクリスには怪我ひとつない。
岩が落ちてくると同時にふたりをつかみ、岩盤の隙間にもぐり込んで落石を免れたのだ。
だが四方八方が岩に囲まれてしまっている。立ち上がるほどの高さもないので、狭い中で私たちは身を寄せ合うしかない。おまけにクリスは轟音のせいか、気絶してしまっているし。
オラクルが私のそばでくーんと小さく鳴く。耳はぺしょんと垂れていて、ひどく申し訳なさそうだ。
「ううっ……すんません、姐さぁん……」
「いいのよ、あなたが悪いんじゃないわ」
オラクルの頭を、そっと撫でる。
想定外のアクシデントが重なった末に、この生き埋め展開。
その諸悪の根源は……私だ。
「私がバカみたいな計画を立てたせいよ。謝るならこっちの方だわ」
「そ、そんなことはないっすよ! でも……なんで俺まで助けてくれたんですか? 俺は死んでも、そのうち復活するっていうのに……」
「それは頭じゃ分かってたんだけどね」
私はため息交じりに、彼へと笑いかける。
「やっぱりほら、友達は見捨てられないわ」
「姐さぁん……」
オラクルは瞳を潤ませて私を見つめる。
そんな折だ。
「うっ……」
「クリス!」
クリスが身じろぎ、体を起こす。
そんな彼を支えながら私は声をかけた。
「気付いて良かったわ。大丈夫?」
「あ、ああ……すこし目眩がするが――っ!」
そこでクリスの目が見開かれる。
その視線の先にいたのはオラクルだ。
「フェンリルめ! ここでトドメを……!」
「あわわっ! ダメダメ!」
また剣を抜きかける彼を慌てて止める。
そのついでにオラクルを背中で庇った。
もうここまで来たら、計画なんてどうでもいい。
「ごめんなさい、クリス。あなたに言わなきゃいけないことがあるの」
「言わなきゃ、いけないこと……?」
「ええ」
私は重々しくうなずいて、オラクルの頭をぽんっと撫でる。
「実はね。このフェンリル、私のお友達なの」
「っ……!?」
「あ、姐さん……いいんすか?」
「もういいのよ、オラクル」
不安そうなオラクルをなでなでしていると、クリスもそれが真実だとわかったのだろう。
剣の柄から手をゆっくりと放し、低い声で問う。
「いったいどういうことだ……?」
「あなたがこれ以上悩まなくてもいいように、お芝居を打ったの」
目的は、クリスにフェンリルの呪いについて吹っ切れてもらうこと。
そのためにこのオラクルに協力してもらって、一芝居打ったこと。
それらを包み隠さず、彼に打ち明けた。
クリスは目を丸くして、ぽつりとこぼす。
「それは……本当のことなのか」
「ええ。ごめんなさい」
私はふたりに向かって、深々と頭を下げる。
「軽率なことをして、あなたたちを危ない目に遭わせてしまった。軽蔑してもらってもかまわないわ」
「姐さん……」
「ふっ……」
オラクルが心配そうに私を見つめる中。
クリスは小さく吐息をこぼし――。
「ははははは!」
「へっ?」
急に笑い始めたものだから、慌てて顔を上げてしまう。
彼は腹を抱えて笑い転げていた。目尻には涙さえ浮かんでいて、今にも笑い死にしそうなほどだ。
ええ……そんな面白い話だった、今の?
オラクルもぽかんと首をかしげている。
続きは明日更新します。本章はあと一話か二話です。
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