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三十八話 ファンクラブを公認します!

 ただ死にたくない一心で、無様(ぶざま)足掻(あが)いているだけの女だ。

 それに、みんなに秘密にしていることだってたくさんある。

 ヨハネとリリィにはステータス999999のこと。ヴァルには前世のこと。


 だから私は、みんなが()(たた)えるほどの器じゃない。


 そんなことを、かいつまんで説明するのだが――。


「そんなことはどうでもいいんです」

「へ」


 リリィはあっさりとそう言ってのけた。

 私の手をにぎって、彼女はやわらかく笑う。


「ロザリアさんが、どんな秘密を抱えてらっしゃろうと……そんなこととは関係なく、私たちはあなたが大好きなんです」

「り、リリィ……」

「そのとおりです」


 ヨハネも私に笑いかけ、諭すように。


「ロザリア様が僕たちを助けてくれたことも、お優しいことも、どれも真実です。お(した)い申し上げるのに、これ以上の理由が必要でしょうか」

「うむ、我もおまえのことは認めている」

「ヴァルまで……」


 三人が私にかける言葉は、とてもあたたかなものだった。

 ここまで言われて卑屈(ひくつ)になるのは……みんなに悪いわよね。


 私はまた、ため息をこぼす。

 先ほどのものとは違って、諦めと照れの混じったものだった。


「わかった。だったらこのファンクラブを認めるけど……条件があるわ」

「なんですか? なんでもおっしゃってください!」

「えっと、その……」


 食い気味のリリィから、ちょっと目をそらして。

 私は小声でぽつりと言う。


「今度から、みんなで集まることがあったら……私も混ぜてよね。ちょっと寂しいじゃない」

「っ……もちろんです!」


 呆れられるかと思ったが、リリィは満面の笑みを返してくれた。


 正直に白状すると、みんなでキャッキャと盛り上がっているのが(うらや)ましかったのだ。内容はともかくとしてね……。


「申し訳ありません、ロザリア様。けっしてロザリア様をのけ者にするような意図はなかったのですが……」

「気にしないでちょうだい。私があなたたちの話を遮りまくったせいだものね」


 申し訳なさそうに眉を寄せるヨハネに、私は苦笑を返す。

 これからは、ちゃーんとふたりの話を聞いてあげよう。恥ずかしくても……我慢する。


 そんな決意を決めた矢先のこと。

 リリィは私のにぎったまま、にっこりと言う。


「でしたら、これからロザリアさんを交えてファンクラブの続きをしませんか?」

「えっ?」

「それはいい考えですね、リリィさん」


 ヨハネはにこやかにうなずく。


「では、ここは手狭ですし、食堂に場所を移しませんか?」

「いいですね! ファンクラブ結成パーティといきましょう!」

「えっ、えええ……」


 なんだか話が奇妙な方向に進み始めた。

 私はたじろぎ、ヴァルに助けを求めるのだが――。


「いやいや、ファンクラブはもう忘れましょうよ……ねえ、ヴァルもそう思うわよね」

「むぐもぐ……うむ」


 そこでちょうどヴァルがリンゴを食べきった。

 芯まで完食するワイルドっぷりだ。彼は感慨深げに息をつく。


「やはり、おまえの顔を見て食った方が何倍も美味だな」


 そうして私の顔をじーっと見つめて、あごを撫でる。


「つまり、おまえの話をしながら食事を取れば、何十倍も美味になるのでは……?」

「人を旨味(うまみ)調味料みたいに言うんじゃないわよ!」


 グルタミン酸もイノシン酸も、グアニル酸も、私からは摂取(せつしゆ)できません!

 そう抗議の声を上げるが、三対一の盛り上がりにはとうてい勝てそうもなかった。


「そうと決まれば話は早いですね。行きましょ、ロザリアさん!」

「では、僕は部屋から茶葉を持参いたしましょう」

「ふむ。その食堂とやらではどのような甘味が食えるのだ?」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 完全に乗り気で、会議室を後にする三人。

 私はそれを慌てて追いかけるのだった。どうしてこうなった!?

続きは7/23更新します。

ブクマに評価、ありがとうございます。二章はあと一回で終わりです。

また、これとは別の新作を投稿してみました。お暇つぶしにどうぞ。

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