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十九話 バグはひとまず落ち着きました

 そして、あの日から五日が経過した。


「んあー……ずる休みも飽きてきちゃったわね」


 私は寮の自室で、ごろごろダラダラと惰眠をむさぼっていた。

 窓から見える空には、高々と太陽が昇っている。


 時刻はお昼過ぎ。

 今日は休みではなく、午前中までとはいえ、ちゃんと授業のある日だ。


 あの、中庭での騒ぎ以来、私はずーっと部屋にこもりっきりでいる。


 表向きには体調不良。

 中庭での一件で無理をしたせいで、ひどい風邪を引いてしまった…ということにしていた。


 ヨハネも自室に入れず、心配してお見舞いに来たリリィにも顔を見せなかった。

 ふたりが心配してくれているのはわかっていたが……あんな状態を見せるわけにはいかなかったからだ。


「でも、ようやく元に戻ったかしら」


 のそのそとベッドから起き出して、姿見の前に立つ。

 トレードマークの縦ロールが、ちょっとくたびれているものの、いつもと変わりない私の姿だ。

 ズル休みの罪悪感から、一応制服にだけは着替えている。


 そして、その体にはなんの異変もない。

 ノイズが浮かぶことも、床や壁にめりこむこともない。


「あーあー、あー。マイクテスト、マイクテスト」


 台詞だって文字化けしない。

 いたってふつうの、女の子がそこにいた。


 邪竜ヴァルドーラ――ヴァルの忠告通り、私はバグ技を使わずにここ数日大人しくすごしていた。


 結果、あの忌々しいバグ状態は、みごと収束に向かった。

 ほっと一安心……ではあるものの。


「はあ……でも、根本的な解決には至っていないのよねえ」


 私の未来に立ちはだかる、数々の死亡フラグ。

 それに対抗するために手に入れた力は、今や完全に失われてしまったはず。

 ヴァルとの会話を思い起こす。


【しばし療養することだ。さすればその奇っ怪な馬鹿力も、元に戻るだろう】

『それは困るんだけど……しかたないのかなあ』


 ためしに、このまえ無限増殖バグで増やしたコインを取り出してみる。


 つやつやと金に輝く真円の硬貨。

 それをぎゅっと強くにぎりしめるが、形が変わることはなかった。


 やっぱり、あの馬鹿力はきれいさっぱり消えている。


「奇跡の果実は……うーん、バグったままかあ」


 リュックの中をのぞきこむと、残った奇跡の果実がいくつか転がっている。

 しかしそれらは数日前の私のように、ジジッとノイズが走っていた。


 これを食べたらどうなるか。

 おそらく、またステータスがおかしいバグ状態となるのだろう。


「やっぱ真面目に努力するしかないようね……」


 本来ならそれが普通なんだけど。

 まあ、いざとなったらヴァルを頼れば――。

 

 しかしそこで、ふと気付くことがあった。


「って、ちょっと待って? ヴァルに会うには、裏技を使わなきゃいけないわよね……?」


 私はまだレベル1。

 常識外れの筋力だって、今や完全に消え去った。


 そんな非力な小娘が、ダンジョンの百一階にたどり着くには、正攻法じゃとてもじゃないけど不可能で……。


「なんであのとき気付かなかったのよ!? うわあああ……私のバカぁ……!」


 っていうか、ヴァルもあの様子じゃ気付いていなかったわね!?

 彼がケーキを食べる様子を、にこにこ見守っている場合じゃなかった。


 頭を抱えていると――。


「えええ……ほんとにどうし、って、あら……?」


 そこで、ノックの音が響いた。

続きは7/11更新予定です。

昨日は推敲前の十八話を誤ってアップしておりました。

多少手を加えて上げ直しました。お騒がせいたしました。

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