十七話 完全にバグったんだけど!?
「そういうわけだから、なんとかしてもらえないかしら!?」
【いや、なんとか、と言われてもな……】
邪竜ヴァルドーラは、むーんとうなる。
中庭から逃げ出したあと。
私はまっすぐ購買に駆け込んで、ケーキを根こそぎ購入した。
その足でダンジョンに向かい、この最下層――邪竜の間にやってきたのだ。
午後の授業をサボることになるが、緊急事態のためやむをえない。
その緊急事態とは、もちろんこのバグ状態だ。
先ほどまではちらつくほどだったノイズが、今や私の全身を覆うほどになっていた。
おまけに異常はこれだけではない。
「いいから早く――縺薙?迥カ諷九r蜈?↓謌サ縺励※縺。繧?≧縺?縺?シ!?」
【うーん、すまぬ。なにを言っているのだかさっぱりわからん】
「縺ゅ≠繧ゅ≧譁?ュ怜喧縺代ーーーー!」
【難儀な体質だなあ。壁にめりこんだり地面に埋まったり】
台詞が文字化けする。
意思に反して、瞬間移動してしまう。
今だって胸くらいまでは地面にめりこんだ状態だ。
私はこれをよーく知っている。
バグっているのだ。完全に。
こういうとき、ゲームならリセットすれば元に戻るのがセオリーだが――。
「繝ェ繧サ繝?ヨ縺ェ繧薙°縺ァ縺阪k縺九?繝シ繝シ(訳・リセットなんかできるかーーーー)!!」
悲しいことに、ここは現実。
リセットイコール死である。
打つ手がなくて、最近知り合った邪竜に助けを求めたというわけだ。
ケーキもそのために買い求めた。
このゲームの裏ボスたる彼なら、きっとなんとかできるはず。できなければ完全に詰みだ。
【どれ、《浄化》】
「はっ……治った!?」
邪竜がおもむろに、状態異常回復魔法をとなえる。
淡い光が私を包み込み、次の瞬間には地面の上に座っていた。言葉も元に戻る。
ほっと胸をなで下ろすが……その指先に、またじじっとノイズが走った。
「やっぱりまだ治ってないし!?」
【ふーむ、やはり駄目か】
邪竜は大きなため息をついてみせる。
そうしてしばらくしてから、こんなことを語りはじめた。
【この世界にはな、とある伝説があるのだ】
「伝説……?」
【そう。この世界は、『何者かによって設計された箱庭だ』というものだ】
「っ……!?」
おもわずハッとしてしまう。
それってまさか、このゲーム『ダンジョン恋物語』を作ったスタッフたちのことだろうか。
【その何者かは、綿密にこの世界を作り上げた。しかし、それも万全ではない。ときおり綻びが生じ、この世の理を超えた現象があらわれるという】
「つまりそれが、今の私の状態っていうわけ……?」
【うむ】
邪竜は鷹揚に頷いてみせる。
じとーっと私を見つめて――。
【おぬし、なんぞこの世界の理に反するような邪法に手を染めたのではないか?】
「……あはは」
【その顔は図星のようだな。ここに入り込んだのも、その邪法を使ったのか】
合点がいったとばかりに彼は肩をすくめてみせる。
バグ技を邪法に数えるなら、これほど世界にケンカを売る技もないだろう。
私の背中を滝のような汗が流れ落ちる。
一方で邪竜は私の体に浮かんだノイズを興味深げに見つめる。
【おそらくそれは、邪法を使ったせいで生じたケガレといったところだろう】
「えええ……このままだと私、どうなるわけ?」
【爆発して死ぬ】
「ばっっっっっっっ……!?!?」
【と、いうのは冗談だが】
「今そういうのは笑えないからね!?」
ばごぉっ!
私のすぐそばにあった、大きなクリスタルが砕け散る。
おもわず裏拳で、びしっとツッコミを決めてしまったからだ。
ちょっと当たっただけなのに……。
雪のように散らばる破片を見て、汗がさーっと引いていった。
邪竜は呆れたようにため息をこぼす。
【……その力は、この世の摂理に反するものだ。最悪、おぬしは世界の自浄作用によって排除されてしまうだろう】
「は、排除って、どうなるわけ……?」
【この世界からはじき出され、亜空間を死ぬこともできず永遠にさまよう……とかだろうか】
「爆発して死ぬより悪いんだけどぉ!?」
ジョジョのカーズ様とか、ディアブロじゃん!?
読んだ当時は『うわあ、エグい最期』と完全に他人事のような感想を抱いたものが……今の私のすぐ目の前には、彼らと似たり寄ったりの末路が待っているという。
(そんなベリーハードな展開はごめんよ……!?)
続きは7/10更新予定です。
ブクマに評価、ありがとうございます。PVも一万を越えました。読んでいただけてとてもうれしいです。




