表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/68

十二話 ランチタイムに不穏の気配

「もうすぐ中庭です。新鮮な空気を吸えば、すこしは気分もよくなるはずでしょう」

「うう、ありがと……ヨハネ。迷惑かけるわね……」

「お気になさらず。これも従者の務めですから」


 どこぞの邪竜が子犬なら、彼はドーベルマンなどの忠犬だ。


 そんなことを考えていると、やがて校舎の外に出る。

 今日も気持ちのいい快晴だ。

 爽やかな風が頬を撫でる。

 

 そこは校舎と校舎に挟まれた空間で、一面の緑が広がっている。


 足下はすべて芝生で、植え込みはよく手入れがされており、ツタ薔薇(ばら)のアーチといった洒落(しやれ)たオブジェもあった。


 そのあちこちにベンチが置かれていて、生徒たちが思い思いの時間を過ごしている。


 木陰のベンチに腰を落とし、私はひと息つく。


「ふう……ちょっと楽になったかも」

「それはよかったです。本日のランチはサンドイッチをご用意しましたが……召し上がりますか?」


 そう言ってヨハネがバスケットを開いてみせれば、中には様々なサンドイッチが詰まっていた。


 定番の卵サンドに、きゅうりのサンドイッチ、BLTサンド。

 それと……ぴかぴか光るイチゴのサンドイッチ。


 奇跡の果実を思い出し、ちょっと胃もたれがひどくなる。

 

「ふ、フルーツサンドは……ちょっと無理かも」

「では、そちらは僕がいただきましょう。夜は消化のいいメニューを用意いたしますので」

「あんまり気にしないでちょうだいね。あなただって学校の用意とかがあるんだし……」


 彼もこの学校の学生だ。私と同じように授業を受けて、課題をこなす。


 そのうえ私の面倒まで見るとなると……負担は大きいはず。

 だが、ヨハネは晴れやかな顔で言う。


「ご心配には及びません。僕は入学前から、あらかじめ勉強を進めておきましたから。魔法だっていくつか扱えますし。ほら、この通り」

「わっ」


 ぽんっと軽い音を立てて、ヨハネがかざした手のひらに、小さな火の玉が出現する。


 火を操る初級魔法だ。

 火の玉はすぐに消えてしまうが、彼はにっこりと笑う。


「まだ初歩の初歩ではありますが……学業を先取りした分、当分はロザリア様のお世話に専念できます」

「その分の時間を勉強とか青春に費やした方が、よっぽど有意義だと思うんだけど……?」

「ロザリア様のお世話をすることが僕の青春です」


 ばっさりと重いことを言ってのけるヨハネだった。

 その笑顔には一点のくもりもない。


「さて、夜は胃にいいハーブティをお煎れいたしますね。厚手のナイトウェアも用意いたしましょう」

「忠犬っていうより、もはや田舎のおばあちゃんね……」


 私は半笑いになりながら、きゅうりのサンドイッチをぱくっと一口。

 バターの風味がふんわり香り、きゅうりのシャキッとした食感が楽しい。


 おかげでちょっと気分がよくなった。


 そんな折――。


「そ、その……困ります!」

「ははは、そう言うなよ」

「む?」


 聞き覚えのある少女の声と、覚えのない粗野(そや)な声。

 それが妙に耳について、声のした方を探す。


 すると、すぐに生徒の集団が目についた。


 ひとりの女子生徒を、四人の男子生徒が取り囲むようにしている。

 五人ともタイの色からして、私と同じ新入生だ。


 女の子はすこし青い顔をしているが、少年たちはにやにやと笑っている。


 少年たちに見覚えはない。

 だが、女子生徒の方は、嫌というほどに知っていた。


(り、リリィ……?)


 先日のパーティで私と一悶着(ひともんちやく)あった……このゲーム世界の主人公。

 見間違えようのない彼女だった。

続きは7/6に更新します。

ストックが厳しくなってきたので、明日からは一日一回更新です。すみません。

引き続き、お暇つぶしになれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ