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十一話 バグ技チートでお腹を壊す

 次の日。


「だ、大丈夫ですか、ロザリア様」

「へーき、へーきよ……うん」


 私はヨハネに支えられながら、ふらふらと学園の廊下を歩いていた。

 顔は真っ青で、額に浮かぶのは大粒の脂汗(あぶらあせ)


 足取りもおぼつかなくて、ヨハネがいなければ一歩も動けなかったことだろう。


 昼休みということもあって、廊下を歩く生徒も多く、みな私を見るなりぎょっとしていった。

 よほど死相が浮かんでいるらしい。


 今日は朝からこの調子だ。

 そんな私に、ヨハネは眉を寄せてみせる。


「いったいどうされたのですか、胃もたれだなんて……昨夜はなにか間食でも取られたのですか?」

「あはは、ちょ、ちょっと、食べ過ぎちゃって……うっ」


 私はぎこちなく笑うしかない。

 胃薬を飲んだものの、まだお腹が張っている。


 まさか昼休みの今になっても不調を引きずるとは思わなかった。

 

(さ、さすがに百個は食べすぎだったかしら……)


 昨日はあれから奇跡の果実を抱えて部屋に戻った。

 夕食は控えめにして、いざ実食。


 レアアイテムとはいえ、ダンジョンの奥底に隠されていたような代物(しろもの)だ。


 賞味期限その他が気になっておそるおそる口をつけたが、意外にも味はまっとうなものだった。

 

 むしろ、今まで食べたどんな果物よりもおいしかった。

 強い甘みが口いっぱいに広がって、それでいてほのかな酸味がいいアクセント。


 おかげでお腹いっぱいになるまで食べてしまった。

 今度また増やす分をすこし残し、リュックはすっかり軽くなった。


 そうして幸せな気分で眠りについて……この通り。

 私は見事にお腹を壊してしまった。


 もう十分胃の中の果実は消化されたはずなのに、まだお腹の底に溜まっているような感覚が続く。


 若いからといって無茶をするとロクなことがない。猛省(もうせい)した私である。


(うう……でも、これでかなり強くなったはずよ。何が変わったのか、いまいちよくわからないけど……)


 ステータスを上げるアイテムを百個食べたのだ。

 当然その分、私は強くなっているはず。


 ただし、お腹の具合が悪いせいか、その実感はまるでない。


「できたら魔力が上がってるといいなあ……」


 私はぽつりとつぶやく。

 せっかく剣と魔法の世界に転生したのだから、魔法を使ってみたい。


 前世では日本のオタク文化にどっぷりだったし、(あこが)れと言ってもいい。


 この世界では魔法はありきたりな技術だが、きちんと勉強しないと身につかないものだ。


 子供の頃から使える子もいるが、私を含む大部分はこんな学校で学ばないと小さな火の玉さえ出すことはできない。


 だが、魔力が上がった(かもしれない)今なら、なにかすごい魔法が出せる……はず。

 私はぐっとこぶしをにぎるのだが、それにヨハネがため息をこぼす。


「ロザリア様、昨日のダンジョンの件といいずいぶん学業に意欲的のようですが……まずは体調を整える方が先かと」

「うぐっ……ごめんなさい」

「まったく、これでよく『世話はいらない』とおっしゃったものです」


 ヨハネはため息混じりにぶつぶつとこぼす。

 それでも、どこか声は弾んでいた。


 そこには私の世話ができることに対する、隠しきれない喜びがこもっている。物好きな人だ。


(そういえば、ヨハネにお小言をもらうなんて初めてかも……)


 私のロザリアとしての記憶の中でも、またゲームの中でも、こんなシーンは初めてだ。

 それだけ距離が近くなった、ということだろうか。

 私が変わったから、彼も少しずつ変わっていくのかもしれない。

続きはまた夜に。

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