1章-3 未だ戦火に蝕まれる者達
「大佐、ご命令の通り『ウォーカーズ』の数人を捕まえて参りました。」
小綺麗な部屋で革製の椅子に座っている軍服の男に隊員が報告する。煙草にサングラスの体が大きい男を前に新人であった隊員は緊張しているようであった。
「ほう、何処に隠れていた?」
「暴君が支配しておりました村の住人が匿っておりました!」
「なるほど。」
大佐と呼ばれた男は机の上の灰皿に咥えていた煙草を押し付ける。
「それで、捕まえた者達は『あれ』の場所を吐きそうか?」
「それが、今回捕まった『ウォーカーズ』は皆物心も付いていない幼児でありまして…。」
「なるほど、『吐く』以前に『知らない』と。どうしたらいいと思う?爺さん。」
男が煙草を咥えるといつの間に現れたのか男の椅子の後ろに立っていた執事服の老人がライターで火を着けた。
「奴らは仲間意識が強いですからね、そこを突けばよろしいかと。」
「なるほど」
男は口から煙を吹きながら少し考えているようだった。そして、静かに立ち上がる。
「捕まえた者を全員処刑せよ。なるべく聴衆が多いよう街中で、前以て住人には知らせておけ。そして、奴らを匿っていた村には火を放て。」
「!?」
捕まえた者達は何れも幼児である。そんな者達の命を奪うなど、隊員は抗議したかったが、男の眼光がそれを許さなかった。隊員は力無くその場を去っていった。
「しかし、こうも簡単に暴君を討てるとはな。『裏切り者』の存在あってだが。」
大佐は満足そうな表情で煙草を吸っていた。執事服の老人はコーヒーを入れたカップを机の上に置いた。
「ええ、もう少しで世界はあなたの物ですよ。」
その言葉に大佐は大笑いした。世界が自分のものに、そう考えると笑いを堪えることなどできなかった。