1章-1 未だ戦火に蝕まれる者達
少女はその金のポニーテールを揺らしながら、湖の横の花畑で花とにらめっこしていた。いつも採っている薬草の花を頭の中に浮かべながら選別していった。『道端に生えてる物が金になる、ちょっとした錬金術って訳さ。』彼女の父親が自慢気に言っていたものである。
「今日も小鳥さん達が賑やかね。」
少女は汗を拭いながら湖に目をやった。湖の上では色鮮やかな鳥達が踊っているようだった。少女は一息吐いたあとまた薬草摘みに戻ろうとした。そんな時、鳥は鳥でもダミ声のような鳴き声が聞こえてきた。
「?」
少女はその声がする方向を見た。そこにはカラス達が集まって何かをつついていた。そのあまりの数に下に何があるかは見て分からなかったが、何故か少女は気になって仕方なかった。
「カラスさん、ごめんなさいね。」
近づいてくる少女を見てカラスは逃げるようにどこかに飛んでいった。カラスにつつかれていたのは人であった。あちこち金メッキの剥がれた鎧、そして鳥を彷彿とさせる模様のボロ布を纏い、額には大きな傷が付いていた。只者ではない、それは彼女じゃなくても分かることだろう。
「…誰だ?」
黒髪の男が目を開いた。男の目は少女と同じく赤色であった。