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死者からの贈りもの

作者: 楠基

今から14年前、ある一人の女性が、突然の事故によって、亡くなりました。


その亡くなった『瞳美さん』と言う女性は、当時はまだ大学生で、名門大学に通っていました。


瞳美さんは、2トントラックにはねられ、亡くなったのですが、不幸にも、そのトラックを運転していたのが、彼女と同じクラスだった『広輔さん』と言う男性でした。


広輔さんは、その後、退学処分となり、大学をやめると同時に、刑務所に入りました。刑務所から出た後、『宅配便』の仕事に着き、また日常の生活に戻ることが出来ました。


そんなある日、広輔さんは、会社の上司に呼び出されました。上司のところに行くと、上司は、一つの箱を手に持っていました。


『お呼びでしょうか。』

『ああ…、これ…、お前宛てに来てるぞ…』

『ああ、そうですか。ありがとうございます。』


しかし、上司は、黙ったまま箱を見つめていました。

『…どうなさったんですか…?』

『いや…、これ…、送り主の名前や住所、それから、中身が書いていないんだよ…』

『えっ…?』


広輔さんはびっくりして、箱の伝票を見ました。すると、確かに、送り主の名前や住所、中身が書いてありませんでした。あるのは、広輔さんの名前と住所だけです。


『…なんだか、不気味だな…。何か、危険な物が入っていたらいけないから、警察に出しておこうか?』

『いえ、一応、僕宛てに来た物ですから、持って帰って、中身を見てみます。』

『そ…、そうか…?』


夜。帰宅した広輔さんは、早速、その箱を開けてみました。すると、中に入っていたのは、なぜか、『ズッキーニ』でした。

(ん…?ズッキーニ…?なんで、ズッキーニなんだよ…?)


広輔さんは、取りあえず置いておこうと思い、キッチンの隅に箱ごと置いておきました。

それからと言うものの、毎日毎日、送り主の名前と住所、箱の中身が書かれていない箱が広輔さんのもとに届くようになりました。

二日目は『ツクシ』、三日目は『トマト』、四日目は『スイカ』、五日目は『キュウリ』…と。


そして、今日は六日目です。それぞれに共通することは、全てが『食べ物』だと言うことだけです。それぞれがどんな意味を持っているのか、広輔さんには、理解出来ませんでした。


警察に言っても、『中身が危険な物ではない』と言う理由で、相手にしてもらえませんでした。


それでもまだ、あの送り主のわからない箱は送られ続けていました。

六日目は『ダイコン』、七日目は、また『ツクシ』、八日目は『タケノコ』、九日目は『ヒジキ』、十日目は、また『トマト』、そして、十一日目に『ミカン』が来た時、広輔さんは、急に怖くなって、小学校からの友人の『豊さん』に、相談をしました。すると、豊さんは、


『今までに送られて来た物を、紙に書いてみなさい。』


と、言いました。広輔さんは、言われた通り、今までに送られて来た物を紙に書きました。豊さんは、それを見て、


『今までに送られて来た物の頭文字を取って読んでみなさい。』


と言いました。広輔さんは、意味がわからないまま、読んでみました。

『…ズ…ツ…ト…ス…キ…ダ…ツ…タ…ヒ…ト…ミ…?……ずっと好きだった…瞳美…!?』

『そう。その瞳美さんって言う女性は、ずっと、広輔のことを想っていたんだよ。そして、その想いを伝える前に亡くなってしまったから、こうして、メッセージとして、広輔に送っていたんだよ。』

『そうだったのか…』


広輔さんは、ぼう然としてしまいました。


それから、その送られていた食べ物は、全て、瞳美さんの好きだった食べ物だそうです。

瞳美さんは、好きだった人にようやく、自分の想いを伝えられて、もう、この世に未練はなくなったことでしょう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 依頼主は空欄より「瞳美さん」の方が良かったと思います。 過去を思い出し怯える主人公に瞳美さんの本当の思いを解き明かしてみせる友人。そんな展開の方が切なさも出た気がします。 生意気なことを書い…
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