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付与魔導はじめました  作者: ようすけ
5/5

仮面

背景の描写がこれでもかってぐらい貧相でした

「ソウスケ...起きてる?」


「起きてるよ」


夜10時くらいだろうか。こっちにきて半年くらい経ったけれど夜はまだなかなか寝付けない。丁度いい。


「とりあえず入って」


部屋に入ってきたイリアの表情は浮かない。


「...散歩でも行こうか?結局帰ってきてから部屋にこもりっぱなしだしさ」


「そうだな...着替えてくる」


「このままいくぞ。ほら」


寝間着姿のイリアの手を引き、ふわりと窓から空へ飛び出す。


「あ、ちょっ...」


「町を出るまでは静かにしといて」


「う、うん」


見下ろす町は所々灯りが点いている。日本の夜景に比べたら...比べるまでもない話だった。それでも幻想的に見えてしまうのはここが異世界だからだろうか。見上げると今日は満月のようでとても綺麗だ。


「もう少し高度を上げよっか」


町がどんどん遠のいていく。


「たまにはこうして夜の空を散歩するのもいいもんでしょ?」


「たまに...というか初めてだけどね」


「はは。そうだったな。しかし今日は月が綺麗だな。知ってる?あんなに綺麗なのに実際はただの荒地なんだ」


「月が?ソウスケは行ったことがあるの?」


「ないよ。けどあそこがどんな所かは知っている。とても人が住めるような世界じゃないってことも」


「ならなんであんなに輝いてるの?」


「あれは太陽の光を月が反射してるんだよ」


「太陽の光を?」


「そう。...色々話を聞いててさ。思ったんだ」


「何を?」


「イリアの護衛で亡くなった人達のこと。もちろん顔も知らないし関係だってわからない。けどイリアの顔を見てれば大切な人達だったんだなってのはわかる」


「気づいてたんだね」


「気づくよそりゃ。...月がなんで輝くかって話したよね?思ったんだけど亡くなった人たちにとってイリアは太陽みたいなもんかなって」


「私が?」


「そう。彼らはイリアに照らされて輝く。これからしっかり生きてしっかり笑っていけばきっと。悲しんで引きこもってたって彼らは輝かないと思うからさ」


「...うん」


「だからって訳じゃないけど...いつまでもそんな顔すんな。イリアにはやるべきことがあるだろ」


「...うん。私強くなる。戦争は絶対に起こさせない」


「大丈夫。おれもついてる。イリアは1人じゃないから」


「...うん!」


月を見上げたイリアの横顔は微かに微笑んでいるように思えた。こんな話を誰かにするのって...思えば初めてだな。かーちゃんからはさんざん聞かされてたのにな。当時は子供過ぎてよくわからなかった。おれも少しは大人になったってことかな?そういうことにしておこう。



ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー



「ソウスケ朝だよ!起きて!」


「...うるさい。勝手に入んな」


「ほらご飯行くから準備して!」


「...わかったから...先に下で待ってて」


「早く来るんだよ!」


朝からやかましい...けどスッキリした顔のイリアを見てどこかほっとしている自分がいた。


「お待たせ」


「遅いよ...もう待ちくたびれたしお腹すいたよ」


「そんなに待たせたかな...とりあえず朝ごはん行こうか」


近くの定食屋さんでイリアがおれの分も注文してくれたんだけど...ステーキだった。朝からは重すぎるって。


「それで今日も飛んで行こうか?」


「飛んでいく!多分1日飛べばガルフローラン王国の領内に入れると思う。そこからさらに1日か2日飛べば王都のべリシアが見えるはず。そこが私の目的地よ」


「ならそこまでしっかり護衛を務めますよ。王女様」


「ちょっとからかわないで!行くわよ!」


「はいはい」


街道を目印に、下から見つからないように飛んでいく。透明化とか隠蔽を付与してもよかったんだけどそうなるとお互いを視認できなくなるので何もかけていない。


「やっぱり飛ぶのは早いわね...そろそろお昼くらいでしょ?」


「そうだな...普通に飛んでも馬の2~3倍くらいの早さだと思う。どっか降りて昼にしようか?」


「そうしよ!」


街道から少しそれたところに少し開けた平地が見えたのでそこに降り立つ。周りには岩とかも無いので地面に硬化、構造変化、清潔の付与をかけて即席のイスとテーブルを作り上げた。


「本当に凄いよね...」


「何しみじみ呟いてんの」


「ソウスケは当たり前みたいに使ってるけど...やっぱりその力は凄いよ」


「ありがと。まぁ...おれにとってはこれが普通だしまだ世間のこともよくわからないしね。今日は何の肉にする?肉とかフルーツみたいなのだったら腐るほどあるよ」


「んー...王犀って言いたいけど...他にどんなのがあるの?」


「えーとね...名前が分からないからなー...ワイバーンみたいなやつと足が6本ある牛みたいなやつと、金色の狼みたいなやつと...」


「ちょちょちょっと待って!もしかして...ソウスケは神の山から来たの?」


「神の山?ああ...確かにくそでっかい山だったけど...神の山かはわからない」


「ちょっと...金色の狼ってのを出してもらえない?」


カードから金色の狼を出す。


「......!?......やっぱり...」


「何が?」


「この狼は神狼と呼ばれる魔獣よ」


「え?神...なの?」


「正確には神の山に棲む最強種に付けられる名前なんだけど...倒したんだよね?」


「だって昼寝してたらいきなり襲いかかってきたんだよ?そりゃ倒すよ」


「ソウデスカ...ちなみにこの神狼だけど、もしもギルドのクエストで討伐依頼が出されたとしたらSS以上が数人がかりで倒すようなランクよ」


「カウンター1発で仕留めたからそんな強いもんだとは知らなかった...」


「いい?以前この魔獣が暴れた時は村が三つと都市一つを半壊したんだからね?そんな魔獣がいる所で寝てるなんて...」


「まぁ確かに...普通こんなのが10頭くらいで暴れればそりゃそうなるよな」


「え?」


「え?何?」


「いや...1頭の話ですよ?その暴れたっていうのは」


「え?群れじゃないの?」


「もしかしてだけど...ソウスケが昼寝してて襲われたのは...群れ?」


「ああ、そうそう。昼寝してたら10頭くらいに囲まれてて一斉に飛びかかってきたからカウンターで...こう」


「もしそれが本当ならソウスケは確実にSSS以上の力を持ってることになるわ。そこまでとは思ってなかった...」


「まぁ...今度からは気をつけるよ」


「なにに!?」


「いやなんとなく...それよりもう王犀でいい?また丸焼きにするよ?」


「あ、うん」


こんがり焼けた王犀の肉に目を輝かせながらかぶりつくイリア。よほど好きなんだなこれ。食事を終え、再び空中を移動する。こんなにも自然があるもんだなと関心しつつ、いずれこの世界も環境破壊とか叫ばれる日が来るのかなと思いふけっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー



「そろそろ日もくれるしこの辺で降りようか?」


「いや...もう少しでガルフローランの村があるはず。そこまで行こう」


「おーけー。じゃあ少し速度あげるよ?」


「望むところだ!」


このお姫様は...。よほど空を飛ぶのが好きなんだな。速度を上げて15分ほど経ったか。村らしき所から火の手が上がっているのが見えた。


「おいイリアあれ」


「火事...かな?急ごうソウスケ」


村の入口付近に降り立ち村の中へ駆け寄る。村はパッと見30軒くらいの家のうち5軒から火の手があがっているようだ。そして所々見慣れない仮面をつけた輩が獣人を襲っている。獣人が20に対して仮面がその数100ってとこか。


「きさまらぁぁぁぁ!」


イリアが吠えた。


「あああぁぁぁぁ!」


剣を抜き、仮面達に切りかかるイリア。


「イリア!この仮面のやつらってもしかして?」


「そうだ!私達を襲った奴らと一緒だ!獣人たち!助太刀に入る!バラバラにならずに固まれ!」


イリアの怒号を受けて、虎や兎、熊や狐といった獣人たちが互いを庇いながら固まり始める。それを取り囲むように仮面達がゆっくりと詰め寄ってくる。想佑は仮面の1人の仮面に麻痺の付与をかける...が、効果が無い。どうやら麻痺無効か、状態異常無効がかかっているようだ。


「ちっ。面倒くさいけどおれがやる。イリアは獣人達のフォローを」


「わかった!」


「付与発動」


その言葉をきっかけに想佑の体が僅かに光る。次の瞬間仮面達の心臓から血が吹き出す。瞬き一つの間に半分近い仮面達が心臓を穿たれ絶命していく。残りの約50が隊列を組み、魔法の詠唱に入った。狙いは全て想佑に向けられる。炎、風、光、水、闇、様々な魔力が仮面達の手に集まる。


「放て!」


仮面の1人の合図を皮切りに想佑に迫る魔法の爆撃。想佑は小石を拾うと一言発した。


「マイクロブラックホール付与」


その言葉と共に放物線を描く小石。想佑に当たるはずの魔法は逆再生するかのように小石に引き寄せられる。一瞬ノうちに黒いビー玉くらいのそれに吸い尽くされて魔法は消えた。


「ば、ばかな...」


あっけにとられる仮面を余所に踏み込む想佑。先の半数が絶命したように先ほど放てと命令を下した仮面以外の命を刈り取る。


「な、なんなん...なんなんだ貴様は...」


「イリア。聞きたいことがあれば聞くといい」


あっけに取られていたイリアだったがギリッと歯を食いしばった。


「貴様らが私たちを襲ったものだな?吐け!どこの手のものだ!やはり法国なのだろう!!」


「ひ、ひっ...ま、まて。私を殺せば神の怒りが」


仮面の胸ぐらを掴むイリア。


「やはりその言動...法国の者だな。誰か!ロープはないか!?こいつを縛り付ける!」


「は、はい!お、おいロープだ!ロープを持ってこい!」


虎の獣人が叫ぶ。程なくして仮面の男は獣人に捕縛された。想佑は村の中心に即席の牢屋を作って中に押し込めると、仮面の男が装備につけている魔石を全て外した。


「長はいますか?それとけが人を治すのでここに」


「長はわしじゃ。猫の獣人のミームという。この度は助けていただき感謝する」


「私はアレンシア王国第三王女イリア。イリア・ブライト・アレンシアだ。こっちはソウスケカミヤ。私の護衛をしてもらっている」


「ア、アレンシアの王女殿下でしたか!?失礼をいたしました」


「長よ気にする必要は無いぞ。それより奴らだが...」


「は、はい。先ほど急に現れまして..」


「詳しいことは牢屋の奴に後で聞こう。イリアそれよりけが人だ。長、けが人を早くここに」


「は、はい。お前達けが人を」


こうして集められたけが人に再生、体力回復、状態異常回復を付与した水を飲ませる。


「傷が!お、おお...これは奇跡だ」


「ありがとう!ありがとうございます!」


地に頭をつけ、両手を組んで崇められ始めてしまった。


「これで全員ですか?」


「これで...全員じゃな...王女殿下、カミヤ様。本当にありがとうございますじゃ。しかしなぜこのような所に?」


「私はガルフローランの獣王陛下に...戦争をしないためにきました」


「戦争を?」


イリアは牢屋をちらっと見る。


「ええ、ゼルシアード法国にハメられてアレンシア王国とガルフローラン王国はこのままでは戦争をしてしまいます。それを止めるために王都へ向かう途中でした」


「なるほど...理解できましたのじゃ...それはそうともう日暮れ。何もありませんがよければうちに泊まってはくださりませぬか?せめてものお礼をしたいのですじゃ」


イリアが想佑を見る。想佑もイリアに頷き返した。


「ではお言葉に甘えることにします。一先ず私は仮面の男に聞きたいことがあるので...長、また後ほど伺います」


「はい、かしこまりましたのじゃ」


「やっぱりここを襲ってイリア達のせいにするってことだったのかな?」


「恐らくね...詳しいことはあの男に聞くわよ」


牢屋を覗くと男は体育座りをしながら何やら呟いている。


「終わりだおれはもう終わりだ...」


「おい」


「終わりなんだ...もう見放されたんだ」


「おい!!」


「ひっ...」


「お前に聞きたいことがある」


「な、なんだ」


「ゼルシアード法国の者で間違いないな?」


「ふっ...ふひっ...だったらなんだ」


「目的を答えろ」


「目的?そ、そんなの決まっているだろう!エルフや獣人のような出来損ないがこの世にいていい訳がないだろう」


「...そんな世迷言のために...カイル達はっ...」


「イリア。おちつけ」


「わかっている!...くそっ。お前を連れて獣王陛下への証人とさせてもらう。いいな」


「う、うひっ...ひひっ」


「一応...付与しとくか」


男の体に魔法陣が浮かび、消えた。


「ソウスケ?」


「自殺防止と他人を害せないように付与をかけただけだ」


「そんなことまでできるのか...だけどありがとう。こいつを証人にできれば私も獣王陛下を説得しやすい」


「いいさ。牢屋にも結界を張るから明日おれらが出発するまで逃げ出すことも、逆に助け出すこともできない。今日はゆっくり休もう」


「...そうしよう」




ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー



次の日、長達に別れを告げて男をロープで引っ張りながら村を後にした。


「一気にガルフローランまでいくか」


「私の魔力量も考えて欲しいけど...でもゆっくりもしてられないしね」


「こんな面倒なことさっさと終わらせようぜ」


「うん。ソウスケ...ありがとう」


「今更礼なんていらないよ。ほら行こう」


「うん」


ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー


ゼルシアード大聖堂地下。


「バカな...100人送って誰も帰ってこないだと?あんなちっぽけな村だぞ?」


恰幅のいい司祭のような男が口を開く。


「バルアス司祭...これは問題ですよぉ...?ねぇカイゼン枢機卿?」


男か女かわからない間延びした声はどこか甘ったるく、危険な香りを漂わしている。


「このまま帰ってこないとなると...少し。そう。少しばかり...いけませんね」


カイゼン枢機卿と呼ばれた優男は片眼鏡の奥で目を細め、そっと口角を上げた。

思案中

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