ソードマン伯爵領
眠気と戦いながら書いたので文章にかなりの不安
「見えたよ」
「あれがクナイぜの町か...結構でかいんだな」
森を抜け小高い丘を登り、その頂上から町が一望できた。町は外壁でぐるりと囲まれていて、町の左端にここと同じように小高い丘が見える。そこに城が建っているのがわかる。あれがソードマンとかいう人のところかな?
「もうここからならすぐよ。そう言えば身分証のようなものは持ってる?」
「身分証?」
「それも知らないのね...ギルド連盟に属するギルドカードとか市民用の通行証とか...ないか。わかった私がなんとかするね」
財布に学生証なら入ってるけど無理だよな。うん。
丘を下ると詰所が見えてきた。割と人の出入りがあるようで数人が並んでいる。イリアは並んでいる人達を横目に脇にある詰所の門番に声をかけた。
「私はアレンシア国第三王女イリア・ブライト・アレンシアです。ソードマン伯爵に取次を。それとこちらはソウスケカミヤ。私の客人です」
「はっ。ようこそおいでくださいました王女殿下。失礼ですがカミヤ様と申しましたか。身分証は何かお持ちですか?」
「この者は客として迎えているので身分は私が保証します。でも...そうだな...身分証は後ほど中のギルドで作っておきましょう」
「そうでしたか。では仮の通行証を発行しておきますのでギルドで身分証を作ったらそのままギルドに渡してください」
「ありがとうございます」
「では門番。私達は町の黄金の林檎亭に宿をとるのでソードマン伯爵と連絡がついたらそちらに人を寄越すように頼みますね」
「はっ!」
「ソウスケ行きましょう」
「.........。」
「ソウスケ?」
「あ、いや悪い。やっぱお姫様なんだなーと思ってさ」
「そ、そんなことでいちいち黙らないでよ。なんか恥ずかしい」
「ごめんごめん。それで...その黄金の林檎亭ってとこに行くのか?」
「先にギルドでギルドカードを発行しよ。私もしぱらく更新していなかったし」
「おけ」
町の中は本当に中世のヨーロッパって感じの作りだった。エルフだらけだなしかし...イリアの背中についていくと周囲の建物よりも立派な建物の前で足を止めた。
「ここだよ」
中に入ると結構な人の数に驚く。50人はいるよな?そのいずれもが剣や斧や杖を装備し、軽装備からフルプーレートアーマーのような厳つい人まで幅広く見受けられた。猫耳の獣人や人間やドワーフ。ここでは色々な種族が集まっているようだ。その彼らの共通点は恐らくだが冒険者なのだろう。手続き申請と書かれた窓口へ向かう。...え?あれ?...読めた?日本語ではないのに漢字やひらがなカタカナのように読めてしまった。もしかして...発言してる言葉も?
だめだ...自分じゃ認識出来ない。
「ほらソウスケここ」
「ああ、ごめん」
「これは王女殿下ではありませんか!?約100年ぶりです!」
受付のお姉さんが挨拶を...って今なんて言った?100年ぶり?ちらっとイリアを見る。
「どうしたの?」
「そう言えばエルフは長命だったなーと思い出して...」
「あー...そう言えば歳のことはソウスケに話してなかったね。私は160歳よ」
「.........そうですか」
「え?なんか変?」
「いや...なんというかその...反応しにくい。とりあえずギルドカードの発行を。それとこれは仮の通行証です」
「かしこまりました。ギルドカードの発行ですね。ではこちらに記入を」
受付のお姉さんから申請書を手渡される。やはり読める。そして書ける。これは神様のおかげなのかな?そうだよね。神様ありがとう。
「これでいいですか?」
「はい結構です。ではこちらがギルドカードになります。魔力を流して登録が完了します。そしてギルドカードはランクに応じて受けられるクエストや報奨金が変わります。それと各種ギルドに属する店やさまざまな情報などの特典なども受けられます」
「へぇ...なるほど。最初は青からなのね」
「はい。青<緑<赤<銅<銀<金<白金<虹<黒。それぞれSSSの黒を頂点に虹がSSで白金がSで金がA。そして青がFとなります。金以上のAは世界に100人もいません。そしてSSSは世界でまだ2人しかいないほどの超一流...みたいな感じですね」
「なるほど。ありがとうございます」
「私のギルドカードの更新を」
「はいっ!では王女殿下ギルドカードを」
そういって取り出したのは銀のギルドカード。つまりランクはBだったのか。やりますな。
「おめでとうございます。今回からランクAの金に格上げとなりました」
「ありがとう。よし行こうかソウスケ」
「わかった」
黄金の林檎亭はギルドの建物のすぐ近くにあった。部屋を取り少し早めの夕食を食べることにした。
「なぁイリア」
「ん?」
「料理っていつもこんな感じなの?」
「これが全てではないけど普通の夕食はこんな感じだよ?」
なるほど。がっちがちのパンに野菜もあまり入っていない薄い味付けのスープ。なんのステーキか分からないけどサンダルの底の様に硬い肉。これはごはんの楽しみはないな。表情で察したのかイリアが声をかけてきた。
「ここは宿だからな。美味しいものが食べたければみなきちんとした食べ物屋に向かうよ明日出発前にどこか寄ってみる?」
「そうしてくれるとありがたい」
「それはそうとソウスケ。まだ夕方になったばかりだ。私も100年ぶりだけど町を少し案内しようか?」
「確かに行ってみたいな...そしたら頼む」
「よし。なら食べたら行こう」
黄金の林檎亭を出て町を散策する。服屋に靴屋に武器屋に屋台に魔道具屋。日本と比べるとやはり違うなと感じる。
「そう言えばソウスケは装備はいらないの?珍しい格好だけど普通の服だよね?」
「あー...アディダスの白のスウェットにスニーカーって...確かに場違いだよなー」
「どうする?いっそ全て買いかえる?」
「いや...服はこのままでいいけど予備を買っておこうかな?付与で常時清潔に保たれてるけど何があるかわからないし。あとは武器屋と魔道具屋に寄ってもいいかな?」
「わかった。じゃあ最初に服屋に行こうか。確かすぐそこにあったと思う」
服は意外と手触りのいい物が多く、下着類を中心に銀貨2枚ほど買い込んだ。次の武器屋では素人目にも粗悪品が多くて買わずに退店した。最後に魔道具の店に来たのだが...これはイリアに聞かねばなるまいて。
「なぁイリア。この魔道具ってやつは魔石に魔力を流して使うんだよな?おれの付与とどう違うんだ?」
「ああ...これはソウスケの付与とは違ってそれぞれの魔石に魔法を込めてそれを魔法陣で制御しているからな。例えば光を生むこの魔道具はライトの魔法を込めてある。光の強さは魔法陣で決めている。それにこっちにある一番高いテントだけど、土魔法のカモフラージュと風魔法のウインドと火魔法のファイアと水魔法のクーリングがそれぞれの魔石に込められて全体にいくつも魔法陣が組み込まれている」
「つまり?」
「つまりこのテントは外からは見えにくく中は温度調節が可能と言うことだ」
「確かに...おれの付与とは違う...というか手間暇掛けてるな」
「いやソウスケの力が異常なんだよ。魔導なんてこの国の王女である私ですら見たことないんだからね?」
「はい...あれ?この魔石は?」
「これはさっき武器屋に寄った時に...穴の空いてる鎧や剣を見なかった?あれにはめ込むための物だよ」
「なるほどな...そういう事か」
「恐らくソウスケが想像してる通り。例えば火魔法のファイアを込めた魔石を剣にはめれば炎の剣として使えるし、鎧に風魔法のウインドプロテクトをはめれば防御力もあがる」
「なるほどね。効果はどの程度なの?」
「それこそ魔石の大きさや質、装備者の魔力や込められた魔法の強さによるけど...Sランク以上の装備はドラゴンとも戦えるほど強力なものが多いけどね」
「つまり普通の冒険者はそこまで強力な装備を持っていないのが普通ってことか」
「そういうことになるかな」
「ふーん...勉強になったよ。ありがとう」
「どういたしまして。買い物も終わったし宿に戻る?」
「んー...町の場所もわかったしちょっと空でも散歩してこようかな」
「なにっ!私も行きたい!」
「お、おう。じゃあ「あっ...!」どうした?」
「ソードマン伯爵...」
「あっ!宿に戻ってみようか...」
宿に戻るとそれっぽい兵士が馬車と共に入口に立っていた。ごめんよ。
「王女殿下。お待ちしておりました。ソードマン伯爵がお待ちです」
「う、うむ。では行こうか」
黄金の林檎亭から馬車に揺られ15分。馬車がこんなにも揺れるものだとは...。
「到着しました」
場所から降りると丘から見えていた白の入口だった。近くで見ると本当にでかいな...。
「姫様!久しぶりでございます!」
「ソードマン伯爵。お久しぶりですね。待たせてしまい申し訳ありません」
「何をおっしゃるのです!さぁ中へどうぞ!お連れの方もどうぞ!」
元気な人だな...つかイケメンだよな...エルフなので歳はまったく分からないがとにかくイケメンの領主ってことはわかった。それとソードマンって名前の通り剣が豪華だった。
領主の部屋に通されメイドが紅茶を注いで去っていく。缶コーヒーが飲みたいな。
「それで、今回は...姫様が来られたと言うことはやはりガルフローランのことでしょうか?」
「ええ。そして護衛を務めていた第5師団は恐らくですが法国の手の者から私を逃がし、全滅しました。その後行き倒れていた私をここにいるソウスケが助けてくれたのです」
「...ソウスケ殿。姫様を救っていただき感謝いたします」
「いえ当然のことをしたまでです」
「それで...カイルも?」
「恐らくは」
「そうですか...昔は泣き虫で私がよく鍛えたものです...姫様を逃がしたことがあの子にとってのせめてもの救いです」
「散っていった者達の為にも私はなんとしてもガルフローランまで行きます。それがせめてもの手向けとなるように...」
「そうですね...ガルフローランへはいつ発つのですか?」
「明日の朝にでも」
「何か必要な物はありますか?」
「いえ大丈夫です。気遣い感謝しますソードマン伯爵。その代わり道中護衛を務めた者達の供養を頼みたいのですが」
「わかりました。責任を持って遺体を回収して供養します。ご安心ください」
「ありがとう。では今日はここで失礼します」
「晩餐を準備しているのですがいかがしましょうか?」
「ありがたいですが先に食べてしまったので...ではガルフローランから帰る途中にまた寄らせていただきます。その時に呼ばれたいのですがよろしいですか?」
「かしこまりました。では無事お帰りの際は料理長に腕を振らせましょう」
「ありがとう。ソードマン伯爵。では私達はこれで失礼します」
「はい。では道中お気を付けて」
ソードマン伯爵に見送られ、馬車で黄金の林檎亭へと戻る。すっかり空は暗くなっていた。
「よかったのか?晩餐行かなくて」
「うん」
そう頷くイリアの表情はどこか悲しそうだった。
なにを書こうか思案中