盗賊と結婚話と沈黙と
話の繋げ方や構成とかに課題山積
移動するにしても時間が中途半端だった為にその日は寝ることにした。翌朝。おれらは川の上流を目指している。なんでもこの川の上流までいけば橋があるのでひとまずそこまで行こうということになったのだ。
「しかしソウスケは不思議な人」
「ん?」
「国の名前も知らないし亜人の知識もないし本当に色んなことを知らない」
「ああそれか...ちょっと理由があってさ。まぁいずれ話してもいいかなって思ったらその時に話すよ」
「何かあるなら言ってほしいのにな。こうやって敬語もやめてせっかく打ち解けたのに」
おっと...エルフがほっぺを膨らませるとか新鮮だ。
「まぁそう言うなって。まずは書状を届けに行ってからだろ?」
「それはそうだけど...」
ジト目で見るのはやめてくださいお姫様。てか歩いていかなくても飛んでいけばすぐなんじゃないか?これ。
「なぁイリア。そのガルフローランって国に行くには町とか村とかどっか通るのか?」
「橋の先にクナイぜという町がある。この国で三番目くらいの大きさかな?ソードマン伯爵家の領地だ」
「ソードマンと言われてもわからんけど...けど町か。なぁイリアそこまで飛んでいったらダメかな?歩くのしんどいだろ?」
「飛んでいくって...何を言ってるの?」
「あ、そうか...いやこうやってさ」
ふわり。と空中に浮かぶ想佑を見上げて腰を抜かすイリア。そのうちアゴが外れるんじゃないかなこのお姫様。
「と、飛べるのっ!?しかしどうやって...飛行の魔法なんて聞いたこともないよ!」
「それは自分自身に飛行の付与をしたからだよ。まぁ飛行だけじゃないけど。それでイリアにも付与をかければ一緒に飛んでいけるし早いからさ。どうかなーって」
「そんなことが...」
考え込むイリア。の、割には目を輝かせているのは言わないでおこう。
「とりあえず試してみる?」
「う、うむ。そうだね。なんでも試してみないとだよね!」
なんかキャラが最初の頃よりおかしくなってる気がするけど...まぁいいか。イリアに飛行と結界の付与をかける。
「そしたら飛ぼうと思いながら魔力を流してみて」
「わかった!...お、おおおおっ!?」
「これで飛ぼうと魔力を流せばいつでも飛べるよ。次に結界な?こんな感じ...見えるかな?これは速度を上げて飛ぶ時とか突風対策だな。無いと結構きついからさ」
「ほ、ほう...こうか?風を感じなくなった」
「上出来だ。そしたらちょっと飛んでみようか。付いてきてくれる?」
「わかった!」
飛行の練習はすぐ終わった。終始目を輝かせていたイリアは初めて自転車を買ってもらった子供のようにはしゃいでいてなんか可愛かった。
「とまぁこんな感じで行けるんだけど...どうかな?」
「これで行きたい!魔力もそこまで減らないし...半日飛んで休憩を挟めばまた半日近くは飛べると思うし。何より飛んでるんだよ!だから飛んでいこ!」
「お、おう。わかったから落ち着け...な?じゃあ橋の所まで行くか」
「おーっ!」
こうして飛ぶこと一時間。これ歩いたら一日はかかる距離だったな。うん。飛んで正解。橋が見えてきたのでとりあえず降りて橋まで歩くことにした。
「私はまだ夢を見ているのかな。さっきまで飛んでたんだよ!しかもあんなに早く!」
「だから落ち着けって。それよりあんまり人に言うなよ?」
「わかってる!しかし姉様に自慢したい」
「おい」
自慢って子供かよ。まったく。
「じょ、冗談だよ。それにしてもソウスケの力は凄いな。服も破けていたはずだし体の傷も癒えてるし汚れも消えている」
「あーそれな。衣服や装備が損傷しても魔力を流せば再生するようにしたし、温度管理もできるし洗濯もいらないから」
「本当に凄まじいな...出来ないことはないのか?」
「できない事か...恐らくだけどおれに魔法は使えない。付与することでしか事象を顕現させることができないんだと思う。これは直感だけどさ」
「なるほど...ならソウスケは戦いには向いてないんだね」
「いや戦えるよ?」
「でも魔法が使えないなら厳しいよ?体もあんまり強そうじゃないし手ぶらだし」
「ああそう言うことか。それは...「動くな!」ん?おお!人がいっぱいいる!」
明らかに山賊か盗賊と呼ばれる身なりの男達が10人。話に夢中で気づかなかった2人だが想佑は半年ぶりに見るイリア以外の人間に出会えて少しテンションがおかしかった。
「ソウスケ盗賊だ!」
「金目のもの出してもらおうか」
一際でかい大男の盗賊が手斧片手に凄んできた。
「金目のものと言ってもこれと言ってなー...イリアなんかある?」
「バカソウスケ!何を悠長に!」
「おいおい随分余裕じゃねぇか。痛い目みないとわかんねぇのか?」
「え?痛い目は嫌だな...イリアどうする?戦う?逃げる?」
「戦うと言っても多勢に無勢。しかし放っておくこともできない」
「なら戦うってことでいいのね?」
「なんだやんのか?」
男達はヘラヘラと薄ら笑いをその顔面に貼り付けている。どうしようかな...。
「じゃあ終わらせるよ?」
「1人で戦う気なの!?」
「ん...まぁ問題ないかな」
想佑はあたりをぐるっと一周見渡す。周囲の木々の葉っぱに無数の魔法陣が浮かび上がる。
「ソウスケ...これは...」
「浮遊と操作と麻痺だけでいいかな?いくよ?」
瞬間木の葉が舞い、突風で煽られたかのように盗賊達に襲いかかる。
「ぐわぁぁぁ!なんだこりゃ。か、からだが...うご...かな...」
瞬き2つほどの時間で盗賊たちは全員その場に倒れ込む。
「ほらおれだって戦えたでしょ?」
「............。」
あ、イリアったらまた硬直してる。
「それでどうする?このまま放置って訳にもいかないだろうし」
「............。」
「イリア?......イリアっ!」
「はっ...」
「おかえり。ほんでこの人達どうする?このまま放置って訳にもいかないだろ?」
「そそそ、そうだな。わ、わたしは何も焦ってなどないんだよ!」
「イリア...」
「は、橋の所に詰所がある。私が兵士を呼んでくるからソウスケは見張ってて」
「わかった待ってるよ」
ヨタヨタと歩き方のおかしいイリアを見送りながら盗賊達を一纏めにしておく。ワイバーン(仮)でも丸1日麻痺してたからこいつらなら放って置いても二、三日くらい大丈夫な気もするんだけどな。
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「しかしこんなにもらってよかったのかな?だって一人100万円ってことでしょ?」
想佑は盗賊を引き渡した際に受け取った金貨を眺めながら呟いた。価値を聞いたら恐らくだけど鉄貨が100円。銅貨が日本円で1000円。銀貨が1万円。純銀貨が10万円。金貨が100万円。白金貨が1000万円。皇金貨が1億円くらいだと判明した。
「100万円...が何かはわからないけど正当な報酬だからそれはソウスケが取っておいてほしい。私は帰ればお小遣いがたくさんあるし、ガルフローランの往復分には十分すぎるほど持ち合わせもあるからな」
「いいのかな?...であればもらっておくけどさ」
「男が小さいことで気にする事はないさ。それよりも行こう。町で泊まって日中は人目を避けて飛べば2日もあればガルフローランに着ける」
クナイぜまでは歩いて一時間くらいと言うことだったので歩くことにした。途中行商人やドワーフの団体等とすれ違った。
「なぁソウスケ。さっきの盗賊たちの時の葉っぱあれは何だったんだ?」
「あれは葉っぱに麻痺とかそーゆーのを付与しただけだよ。直接触れなくても視認できれば付与はできるからさ」
「そうか...戦えないなどと勝手な決めつけを押し付けてしまって申し訳ない」
「あーそんなの気にしなくていいよ?武器も持っていないしこんなひょろひょろじゃ誰がどう見ても戦えるようになんて見えないさ」
「すまん...」
「それよりほらこれ」
「これは?中に水が入っているのか?」
「水筒だよ。詰所までイリアが行ってる間に暇だったから作ったんだよ。魔力を流せば冷たい水で中が満たされるから何度でも使えるよ」
「...なぁソウスケ。ソウスケはその...心に決めた人とかいるのか?」
「え?」
「いやだから好きな人はいるのかと聞いている」
「あー...好きな人はいないよ」
「そ、そうか」
「急にどうした?」
「もしもソウスケが嫌でなければ...その...帰ったら私と...結婚でもしてくれないかなって思って...」
ん?結婚?なわけないよな...結構?決闘?ああ...決闘か。
「ごめん聞き間違いなら結婚って聞こえたんだけど違うよね?はは...決闘かな?」
「なんでそこで決闘しなければならない!結婚って言ったのよ!」
目を合わせて時が止まる2人。イリアの顔が次第に真っ赤に染まっていく。
「なんで結婚?」
「ソウスケの力は...凄い。だから私と結婚して国の為に使ってもらえないかなと...いきなりで我儘な願いだと思うだろうが...何よりソウスケなら結婚相手としてもその...嫌じゃない...というか」
「国の為にって言うことならごめんね。断る。そもそも国に仕える気は無いんだ」
「...そうか」
無言が痛い。そして早足すぎるからイリア。はぁ...なんでこうなったんだろう。ふと視線をイリアに戻すと全速力で駆けて行った。あれ?イリアさん?
「ソウスケ!私はな...諦めないから!ひとまずガルフローランのことを片付けるぞ!」
ダッシュしたと思ったら急に振り返って叫ばれた。確かにイリアは美人だけど結婚とか言われてもな...。
「わかった。とりあえずクナイゼにいこう」
「う、うん。ソードマン伯爵にも顔を出しておかないとないけないし」
こうして気まずい雰囲気のまま一路クナイぜへと向かう2人。それから約一時間2人の間に会話はなかった。
そのうち後書きになんか書いていこうと思います