森の中の出会い
文章力の無さに涙が出そうです
「...ここは...」
そこはどうやら山の頂きと思われた。360度見渡す限りの雲海。
「すげー...富士山とかもこんな感じなのかな。...さて。これからどうしようかな。そういえば神様が〖与える力〗をくれたって言ってたけど...異世界物でよくある付与魔法とか言うやつか?」
足元に落ちている小石を拾う。手に取ってどう力を与えればいいか思案した瞬間、生まれた時から知っているかのようにその力は使えた。目を閉じてそっと意識を集中してイメージを小石に投影する。小さな魔法陣が小石の下に現れる。
目を開けて手のひらの小石に鍵となる〖力〗を流す。
ふわり。と小石が浮き上がると縦横無尽にその小石は空を舞う。
「はは...こりゃすげぇな。やっぱこれって付与魔法ってやつだよな」
小石に与えた力は浮遊と操作。対象に事象となるイメージを与える。それは対象に宿っていなかった事象を顕現させる力となる。その事象を直感で理解した力を込めるとその事象を任意で顕現させることができる。
ラジコンのように意思で小石を操作しながら想佑は考えた。
「ごはんどうしよう」
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「森しか見えない...」
5時間ほどかけて下山した現在の場所は、雲海を抜けてようやく下界を見通せるようになった山の中腹。そこから確認できたのは地平線の先まで続く見渡す限りの森だった。そしてどんだけ高いんだよこの山。それにこれだけ高ければ雪があって物凄く寒くてもいいのだが、体感温度は不思議と変わらずに快適だ。
「腹減ったし喉乾いたし...もう歩きたくない」
ため息を一つつきながら小岩に腰掛ける。
休憩休憩と自分に言い聞かせながら遠くを見ていると鳥が飛んでいるのが見えた。
「焼き鳥食べたいな」
ぼーっとその鳥を見ていると段々と遠くから近づいて来るのがわかる。
「でっけー鳥だな...鳥...じゃねぇなあれ...え?恐竜?プテラノドン?」
どう見ても鳥と呼ぶにはあまりにも巨大。地球生まれの想佑にはどこか太古を感じさせるその見た目。うん。プテラノドン...異世界だとドラゴンとかワイバーンってやつなのかな?ってこんな悠長にしてていいのか。確実におれを目掛けて飛んできてるような...。
だとしたらやばい...よな。隠れ...られそうな所は無かった。よし。どうしよう。
「クァァァァッッ!」
「やばいきた!」
そのワイバーン(仮)は約20m先に着陸した。体高は10mくらいか?翼を広げるとトレーラーくらいの長さがあるように見える。え?これから逃げる...とか戦うとかっ...て無理じゃね?
「クァァァァッッ!ケェェェッッ!!」
翼を広げてゆっくりと威嚇しながら近づいてくるワイバーン(仮)から視線を外せない。心臓がバクバク脈打つのがわかる。
「こんだけ近づかれるまで何も出来ないとか危機感なさすぎだよおれ!...くそ...どうすれば...」
ふと先ほど小石を飛ばしたことを思い出す。これなら...やれるか?軽く不穏なフラグを立てつつも近くにあったボーリング玉くらいのゴツゴツした岩に目を向け、浮遊と操作のイメージを投影する。あの小石のように魔法陣が現れる。これなら...。
「いくぞっ!」
小岩に意識を向ける。ふわり。と浮き上がった小石はメジャーリーグの投手もびっくりするくらいの速度でワイバーン(仮)に飛んでいく。
「当たれぇぇぇぇ!」
小岩は見事にワイバーン(仮)の顔面に炸裂した。
「グェェェェェ!」
ワイバーンの顔からは血が流れているがどっからどう見ても軽症だ。もう1度と思い、今しがた使った小岩を操作しようとしたが割れたせいなのか反応しない。視線を外している隙にワイバーン(仮)が突進してきた。なかなかのスピードだ。翼の大きさまで考えるとこれ以上近づかれたら回避は不可能。ワイバーン(仮)に背を向け走り出す。振り向いた先には軽自動車くらいの岩が。同じように浮遊と操作のイメージを投影。現れる魔法陣。岩を飛ばしながら振り返る。
「これならどうだ...」
先ほどの小岩よりもスピードの乗った岩がワイバーン(仮)に向かって飛んでいく。ワイバーン(仮)はギョッとした様子で一瞬足を止めて回避しようとしたがそのどてっ腹に直撃。そのまま岩の下敷きになってしばらくもがいていたが数分で動かなくなった。どうやら倒せたらしい。
「助かった...?はぁぁぁ」
へたへたとその場に座り込む想佑。心臓はまだバクバクしている。
「さすが異世界...この力をもっと知ってちゃんと使いこなせないと死ぬなおれ...」
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半年後。
「クェエェェェエエエッッッ」
「...この山ってワイバーン(仮)が尽きることはないんだろうな」
半年前一番最初に倒したワイバーン(仮)よりも一回り大きい。足元に目を向けると10個ほどの小石の下に魔法陣が現れる。浮かび上がったその小石は威嚇を続けるワイバーン(仮)に向かって弾丸以上の速度で向かっていく。一瞬で蜂の巣になるワイバーン(仮)
「肉はもう余りまくってんだけどな...でももったいないしなー...ま、いいか」
召喚当時に唯一ポケットに入っていた長財布を取り出すとそこから1枚のカードを抜き取る。
「収納」
次の瞬間ワイバーン(仮)が現れた魔法陣とともに一瞬で跡形もなく消え、魔法陣の残光はカードに吸い込まれていた。
「さて...本格的に人里でも探すかな...えーと...あっちの方角は1週間飛んだけど森しかなかったから...今度はこっち行ってみようかな」
そう一人ごちると想佑の体がふわりと浮かぶ。
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飛びながら移動すること3日。
滝の近くの川岸に腰を下ろす想佑の姿があった。
財布からカードを抜き取り先日ワイバーン(仮)の前に仕留めたトリケラトプス(仮)を収納から出す。足元に落ちている小枝を手に取り余計な枝をもぎとると、小枝に硬化、斬鉄、解毒、吸血を付与してトリケラトプス(仮)の肉を切り出した。その肉をバーベキューのようにそのまま小枝に突き刺す。小石に火を付与し、肉を焼いていく。さらにペットボトルくらいの石に清潔、状態異常無効、構造変化、水、冷却を付与する。石は形を変えてコップになり、コップの中は透き通った冷たい水で満たされる。さらに小石を拾い、清潔、状態異常無効、構造変化、味塩こしょう精製を付与する。石の小瓶の中には味塩コショウが満たされる。
「あとどれくらい飛べば人里つくのかな...」
肉を焼きながら今後のことを考える。
ふと川に目をやると何かが流れてくる。なんだろう...人?あぁ...なんだ人か...人!!!
すぐさま川に助けに入り無我夢中で河岸まで引っ張ってくる。
「おい!生きてるか!」
「う...」
「どこか痛むか?待ってろ今助けるからな!...エルフ?」
金髪、意匠の凝らした金属の胸当てやガントレット、ボロボロのマント、それらの中で1も番特異なのは長い耳だった。
想佑はそのエルフ(仮)の服や装備に清潔、温度調節、体力回復、痛み止め、再生、一応状態異常無効を付与して火の近くまで運び、横に寝かせる。
「やっぱりエルフ...だよな。しかし綺麗な人だな...あ!肉が焦げるっ」
「う...ここは...」
「気がついた?」
「はっ...あなたは...ここはどこですか!」
勢いよく体を起こして詰め寄るエルフ。
「どこ...かはわかりません。あなたが川から流れてきたので助けました」
「そ、そうだったのですか...ごめんなさい...取り乱しました...」
「おれは神八想佑。あなたは?」
「これは失礼を...私はイリアです。助けてくれてありがとうございました」
「いえ...それでイリアさんは何故川に?」
「それは...すみません言えません」
申し訳なさそうに下を向くイリアさん。
「あ、よければ一緒にご飯食べません?と言っても肉しかないんですが」
「あ...いただいても...よろしいですか」
「ええ、いいですよ」
恥ずかしいのか顔を上げずに答えるイリアさん。
「焼けたので先にこれをどうぞ」
「いいんですか?すみません...ではいただきます。...!!!?これはもしかして王犀の肉ではありませんか!?しかもこの味付け...塩とコショウだけじゃなく複雑でおいしいです!」
「王犀...?あのトリケラトプスみたいなやつかな?その味付けは...まぁ秘密ってことで」
「トリケラトプス?」
「えと...実物見せた方が早いですよね?肉も足りなさそうだし」
「どういうことですか?」
財布からカードを抜いてトリケラトプス(仮)を出現させる。イリアさんのアゴが外れそうなほど開いている。小枝を手頃なサイズに折り、先ほどと同じく付与魔法をかけて肉を切り出してトリケラトプス(仮)を収納にいれた。
「あ、あ、あ、あなたたは」
「落ち着いてください」
イリアさんは物凄くテンパっているようだ。
「王犀ってのはやっぱこの肉のやつでした?」
「は、はいっ!このお肉のやつです!」
「あの...イリアさん落ち着いてください」
「はい...すぅー...はぁー...すぅー...はぁー...大丈夫です落ち着きました。さっきあなたが...カミヤソウスケさんが出したのが王犀です。でもどうやって...しかも小枝で切るとかどういうことですか?」
「えと...とりあえずソウスケって呼んでください。さんとかも要らないんで」
「ならソウスケと呼びますね。私のこともイリアと呼び捨てで構いません。それで...ソウスケは何者なんですか?収納の魔法なんてアレンシア王国にも使えるものはいないんですよ?それに小枝やその石から火が出ていることを考えると...もしかしてあなたは付与魔導が使えるんですね?」
「付与魔道?付与魔法ではなくて?すみません山奥の小さな集落から来たので無知で...」
「失礼しました...えとそうですね...魔法とは精霊が司る火、水、土、風、光、闇の属性が魔法と言います。元々は精霊が定めたそれぞれの属性に法を決めたことが始まりとされています」
「えーっと...」
「わかりやすく言うと...私は水と風の属性を扱えます。祝福を受けたりすれば別ですが、その属性を持っていると言うことはその属性の精霊の眷属の証であるということです」
「なるほど」
「そして眷属である私には精霊の定めた法に則ることで魔法を使えるのです。例えば対価となる魔力、発動させる魔法の詠唱や儀式などがこれにあたります」
「え?...あ、いや続きを」
「大丈夫ですか?では...先ほどの6大精霊以外の魔法...それが魔導と呼ばれているものです。本来なら国に10人くらいしかいないほどレアなのですが...魔導とは魔を導くもののことを指します」
「つまり法の外の力が使える人ってことか」
「ええ、人だけとは限りませんが魔導は精霊の法に縛られないので崇められたり畏怖の象徴だったりもしますね...それで先ほどの付与魔導ですが、これは魔法の法の中には存在しません」
「それで付与魔道と」
なるほど...地球では中二病でしか通じない話でしたね。
「はい。あの...それで...ですね...。助けていただいた上に不躾なお願いを申し上げることをお許しください。私を助けてもらえませんか?」
「いいですよ」
「そうですよねこんな話急に無理ですよね...え?」
「だからいいですよ」
「え?あの...本当にいいんですか?まだ何も話してないですよ?」
「なら聞かせてもらえますか?」
「は、はい!実は...今エルフの国と獣人の国で戦争が起こりそうなのです」
「戦争か」
「はい...そして私は...そのエルフの国で第三王女として戦争の意思の無いことを伝える為にガルフローラン...獣王国に書状を届けに行くところだったのです」
「お姫...様?」
「ひ、姫と言っても私は第三王女なので何も気にしないでくださいね?エルフの国...アレンシア王国からガルフローラン獣王国までは馬で一月半かかります。私が城を出てから今日で丁度一月。そして三日前に奴らがあらわれて...部隊は私を守るためにほぼ全滅...私は交戦中に崖から落ちて...」
ギリッと唇を噛むイリア。
「やつらって言うのは?」
「恐らくでしかないのですが...ゼルシアード法国の者達ではないかと。彼らは人間至上主義を掲げ、亜人である私たちを潰し合わせたいのです。あと半月で私がガルフローランに間に合わなければ恐らく戦争になってしまいます。なのでソウスケには...私をガルフローランまで送ってもらいたいのです。もちろん謝礼はします」
「わかりました。その代わりと言ってはなんですが、道中色々と教えてもらえませんか?色んな国や人や物などを...おれが今必要としているのはそんな情報なんです」
「なるほど...わかりました。私にわかることであればなんでも。では契約成立でいいですか?」
「ああ」
「ありがとう」
そう言って差し出された華奢な右手をおれは掴んだ。
微笑ましく読んでやってください